JR駅前の高層ビル3階は医療・介護・福祉フロア
サンビレッジ岐阜が入る岐阜シティ・タワー43
JR岐阜駅前にひときわ目を引く高層ビルがそびえる。再開発事業により2007年に開業した「岐阜シティ・タワー43」だ。
このビルは地上43階、地下1階で、2階の歩行者用デッキで岐阜駅と直結する。1、2階がショッピングゾーン、4階にテレビ局が入り、6階から14階は岐阜県住宅供給公社が運営する108戸のサ高住「ラシュールメゾン岐阜」、15階から42階が分譲マンションである。
サ高住とマンションの居住者が使うエレベーターはそれぞれ異なり、サ高住に行くには3階の専用エントランスにあるエレベーターを使う。
ラシュールメゾン岐阜のエントランス
高齢者と子どもの自然な触れ合い
3階はフロア全体が医療・介護・福祉ゾーンだ。「サンサンタウン」と称し、新生会と新生メディカルの事業所のほか、一般の診療所などが入る。テナントを以下にまとめた。
【社会福祉法人新生会】
・住宅型有料老人ホーム「シティタワー・アンキーノ」
・デイサービス「シティタワー・リハビリサロン」
・総合事業対象者向け「シティタワー・リハビリサロンA」
・「シティタワー・訪問看護ステーション」
・多世代交流支援センター「新生元気塾」(同ビル1階)
⇒以上を総称して「サンビレッジ岐阜」
【株式会社新生メディカル】
・本社、岐阜営業所
・訪問介護のヘルパーステーション
・保育所「みっけのおうち」
【その他】
・診療所、歯科、薬局、多世代交流スペース「サンサンひろば」、研修スペース、サ高住のエントランス…など
「赤ちゃんから高齢者までが最期まで安心して暮らせる街づくり」というスローガンの下、新生会と新生メディカルは連携して事業を行っている。
リハビリサロンの入口
新生会が運営するデイ「リハビリサロン」と新生メディカルの保育所「みっけのおうち」は隣接していて、デイの利用者と保育所の子どもは自由に行き来できる。高齢者が子どもと遊んだり、子どもに囲まれて体操したり、自然に触れ合えるのだ。
高齢者と子どもが一緒に体操(写真上)やおやつ作り
シティタワー・アンキーノ
住宅型有料老人ホーム「シティタワー・アンキーノ」は1泊2日からホテル感覚で利用できる。サ高住の入居者のターミナルケアや退院後に在宅復帰を目指すアセスメントケアなど、短期滞在を想定して造られた。
シティタワー・アンキーノの入口
瀟洒な造りの8室があり、アメニティや福祉用具を備え、洗濯も外注でき、食事は全て個別対応だ。介護保険外のサービスやケアを提供し、暮らしの安心やその人らしい生き方を支える。
アンキーノのラウンジ
スタッフは付くものの、住宅型有料という位置づけなので、外部サービスを受けることもできる。希望すればデイサービスや訪問介護サービスも使えるし、医師の診察は外来受診や訪問診療という形になる。
アンキーノの居室
料金は1泊2日で3万8000円。社会福祉法人が提供するサービスとしては高額なことから、石原美智子理事長(当時)がこの計画を打ち出したときは、法人内には反対の声もあったという。
しかし、新生会に来るまでは看護師として病院勤務をしていた川瀬由起子施設長は「病院の個室料と比べて、すべてのケアが付いての料金であれば高くないと思い、抵抗はなかった」と話す。
川瀬由起子施設長
ターミナルケアでの利用が多いが、普段は特養に暮らして正月だけここに滞在したり、何年も住んでいたり、利用の仕方はさまざまだ。「人生の最期をどう過ごすかの選択肢の1つとして、こうした施設もある」というのが川瀬さんの見方だ。
そして、「公園みたいな場所がないと、人は集えない」(川瀬施設長)との考えから、テナントスペース1区画分は、自由な空間である「サンサンひろば」として開放している。
サンサンひろばにはピアノが置かれる。右奥は喫茶コーナー
広い通路にはソファやベンチが置かれ、訪れた人が自由にくつろげる。保育所の子どもたちがここで運動会をすることもある。ガラス張りで誰もが利用できるオープンな喫茶コーナーも設けられている。
ひろばではお祭りやコンサートといった多彩なイベントが企画される。子どもから高齢者、地域住民が参加して楽しむ、多世代交流の場となっているのだ。川瀬施設長は「街をつくるうえで重要なのは人の交流。サンサンひろばはその仕掛けの舞台」と笑う。
中央にはピアノが置かれ、希望者が弾ける。世界的なピアニストの亀井聖矢氏が小学生のころ、ここで弾いていたというエピソードもある。