新生会グループが提供する高齢期の暮らし ⑤サンビレッジ岐阜🆕

2024年 8月 14日

JR駅前の高層ビル3階は医療・介護・福祉フロア

タワー2

サンビレッジ岐阜が入る岐阜シティ・タワー43

 JR岐阜駅前にひときわ目を引く高層ビルがそびえる。再開発事業により2007年に開業した「岐阜シティ・タワー43」だ。

 このビルは地上43階、地下1階で、2階の歩行者用デッキで岐阜駅と直結する。1、2階がショッピングゾーン、4階にテレビ局が入り、6階から14階は岐阜県住宅供給公社が運営する108戸のサ高住「ラシュールメゾン岐阜」、15階から42階が分譲マンションである。

 サ高住とマンションの居住者が使うエレベーターはそれぞれ異なり、サ高住に行くには3階の専用エントランスにあるエレベーターを使う。

ラシュールメゾン岐阜のエントランス

ラシュールメゾン岐阜のエントランス

高齢者と子どもの自然な触れ合い
 3階はフロア全体が医療・介護・福祉ゾーンだ。「サンサンタウン」と称し、新生会と新生メディカルの事業所のほか、一般の診療所などが入る。テナントを以下にまとめた。

 【社会福祉法人新生会】
 ・住宅型有料老人ホーム「シティタワー・アンキーノ」
 ・デイサービス「シティタワー・リハビリサロン」
 ・総合事業対象者向け「シティタワー・リハビリサロンA」
 ・「シティタワー・訪問看護ステーション」
 ・多世代交流支援センター「新生元気塾」(同ビル1階)
 ⇒以上を総称して「サンビレッジ岐阜」

 【株式会社新生メディカル】
 ・本社、岐阜営業所
 ・訪問介護のヘルパーステーション
 ・保育所「みっけのおうち」

 【その他】
 ・診療所、歯科、薬局、多世代交流スペース「サンサンひろば」、研修スペース、サ高住のエントランス…など

 「赤ちゃんから高齢者までが最期まで安心して暮らせる街づくり」というスローガンの下、新生会と新生メディカルは連携して事業を行っている。

リハビリサロン入口2

リハビリサロンの入口

 新生会が運営するデイ「リハビリサロン」と新生メディカルの保育所「みっけのおうち」は隣接していて、デイの利用者と保育所の子どもは自由に行き来できる。高齢者が子どもと遊んだり、子どもに囲まれて体操したり、自然に触れ合えるのだ。

多世代交流写真1
子供とおやつ作り1

高齢者と子どもが一緒に体操(写真上)やおやつ作り

シティタワー・アンキーノ
 住宅型有料老人ホーム「シティタワー・アンキーノ」は1泊2日からホテル感覚で利用できる。サ高住の入居者のターミナルケアや退院後に在宅復帰を目指すアセスメントケアなど、短期滞在を想定して造られた。

アンキーノの入口

シティタワー・アンキーノの入口

 瀟洒な造りの8室があり、アメニティや福祉用具を備え、洗濯も外注でき、食事は全て個別対応だ。介護保険外のサービスやケアを提供し、暮らしの安心やその人らしい生き方を支える。

アンキーノのラウンジ

アンキーノのラウンジ

 スタッフは付くものの、住宅型有料という位置づけなので、外部サービスを受けることもできる。希望すればデイサービスや訪問介護サービスも使えるし、医師の診察は外来受診や訪問診療という形になる。

アンキーノの居室

アンキーノの居室

 料金は1泊2日で3万8000円。社会福祉法人が提供するサービスとしては高額なことから、石原美智子理事長(当時)がこの計画を打ち出したときは、法人内には反対の声もあったという。

 しかし、新生会に来るまでは看護師として病院勤務をしていた川瀬由起子施設長は「病院の個室料と比べて、すべてのケアが付いての料金であれば高くないと思い、抵抗はなかった」と話す。

川瀬施設長

川瀬由起子施設長

 ターミナルケアでの利用が多いが、普段は特養に暮らして正月だけここに滞在したり、何年も住んでいたり、利用の仕方はさまざまだ。「人生の最期をどう過ごすかの選択肢の1つとして、こうした施設もある」というのが川瀬さんの見方だ。

 そして、「公園みたいな場所がないと、人は集えない」(川瀬施設長)との考えから、テナントスペース1区画分は、自由な空間である「サンサンひろば」として開放している。

サンサン広場

サンサンひろばにはピアノが置かれる。右奥は喫茶コーナー

 広い通路にはソファやベンチが置かれ、訪れた人が自由にくつろげる。保育所の子どもたちがここで運動会をすることもある。ガラス張りで誰もが利用できるオープンな喫茶コーナーも設けられている。

 ひろばではお祭りやコンサートといった多彩なイベントが企画される。子どもから高齢者、地域住民が参加して楽しむ、多世代交流の場となっているのだ。川瀬施設長は「街をつくるうえで重要なのは人の交流。サンサンひろばはその仕掛けの舞台」と笑う。

 中央にはピアノが置かれ、希望者が弾ける。世界的なピアニストの亀井聖矢氏が小学生のころ、ここで弾いていたというエピソードもある。

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利用者のために走り続けて50年 岐阜・新生会グループの軌跡 下🆕

髙橋 繰り返しになりますが、新生会も新生メディカルも、スタッフの皆さんはとても優秀です。それぞれの施設をお訪ねするたびに、責任者の方々が仕事に誇りと責任をもっていると伝わってきます。新生メディカルのヘルパー(訪問介護「身体0」)さんたちのレベルも高いことが、この対談に先立つ記事で紹介されています。
 
 介護の職場では、人材不足や、人材が定着しにくい問題が指摘されています。人材育成についてはどう取り組んでおられますか。
 
石原 かつて新生メディカルで旧ヘルパー2級の研修をするとき、最初の何時間かは私がものの考え方をレクチャーしていました。それが研修のスタートで、テクニックは後回しです。考え方が大事。
 
■人を育てる組織
 
石原 現場に入れば、利用者を一対一で担当するのではなく、複数のヘルパーがチームを作って担当するシステムです。チームでケアすれば、だれか体調が悪くなったりしても交替できますから。
 
 そういうチームを利用者ごとに形成して、その1人をリーダーにします。別の利用者のチームでは別の人がリーダーになります。だから、あるチームでリーダーを務める人は…

利用者のために走り続けて50年 岐阜・新生会グループの軌跡 中🆕

■岐阜県内で多彩な事業を展開
 
髙橋 1986年に社会福祉法人サンビレッジ新生苑は「社会福祉法人新生会」と法人名を変更します。新生メディカルが在宅介護事業を始めたのが88年。まさに高齢化の進行に合わせて、新しい事業展開が始まったのですね。
 
 78年の厚生白書は老親と同居する家族を「福祉の含み資産」と形容しました。80年代に入るとそういった日本型福祉社会論も色あせていき、石原さんが前回おっしゃった、あるべき高齢者ケアへの模索が政策レベルでも始まります。89年に策定されたゴールドプラン(高齢者保健福祉推進十か年戦略)はその象徴です。
 
 新生会も新生メディカルも、この時代の動きと軌を一にして多彩な事業を展開していきますね。夢中になって創っていかれた感があります。
 
石原 そうでしたね、今思えば。毎年じっとしていませんでした。
 
髙橋 新生会の面白いところは、介護だけにとどまらない点です。介護サービスがコアではあるけれど、地域全体を大切に、絶えず働きかけてこられました。事業の幅は広く従業員数も多い。全国展開の法人にも引けを取らない規模といっても過言ではないのに、決して岐阜県外には出られません。
 
石原 繰り返しになりますが、日本とオーストラリアの高齢者ケアがかけ離れていて、そこをなんとかしたい一心でした。だから全国区になりたいなんて全然考えなくて。ただ、こういう事業は小さすぎると潰れちゃうから…

利用者のために走り続けて50年 岐阜・新生会グループの軌跡 上🆕

■新生会と新生メディカルの始まり
 
髙橋 岐阜県の西濃地域を拠点とする社会福祉法人新生会(本部・岐阜県池田町)は、2021年に創立45周年を迎え、50周年も目前です。1976年(昭和51年)、前身である社会福祉法人サンビレッジ新生苑を設立し、特別養護老人ホーム「サンビレッジ新生苑」を創設したのが始まりです。
 
 新生会はおよそ50年にわたって福祉・介護事業を幅広く展開してこられました。始まりの事業であるサンビレッジ新生苑は、石原さんの父上である今村勲医師が手がけられたのですね。
 
石原 父は外科医で、戦前は名古屋市の病院に務めていました。戦火の拡大で池田町に疎開し、終戦後も名古屋に戻らず池田町に診療所を開いたのです。求められて往診によく出かけていました。初めのうちは結核患者が多かったそうです。
 
 診療所は規模を拡大し、1973年に新生病院となります。そのころ父は、誰もいない家に一人、おむつを当てられ寝かされている高齢者が増えていることに気づきます。
 
髙橋 その背景には、家族形態の変化や家族員の兼業化が進んだことがあります。家族による世話が難しくなり…

新生会グループが提供する高齢期の暮らし ④サンビレッジ新生苑/今村勲記念館(バラ棟)🆕

◆創業の理念は今も健在/措置時代に開設した自由契約特養
 
■サンビレッジ新生苑
 新生会の創設の地であり、本部のある池田町の「サンビレッジ新生苑」には、特別養護老人ホームやショートステイ、デイサービスなどがある。
 
 敷地のはずれを用水路が流れ、特養に面して四季折々の花が咲く広い庭が広がる。その一角には施設で亡くなった人の葬儀を行える「紫陽花ホール」がある。中庭の池では、アヒルが歩き回ったり泳いだりする姿を見ることができる。
 

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新生会グループが提供する高齢期の暮らし ③もやいの家瑞穂🆕

◆ユニット間の壁をなくしたグループホーム
 
 瑞穂市には新生会の複合型施設が3カ所ある。その1つ「もやいの家瑞穂」は2階建てで、1階に認知症対応型デイサービスセンターと介護予防拠点(地域交流スペース)、2階グループホームが入る。
 
 「もやいの家瑞穂」のグループホームでは、通常は設けられているユニット間の壁がない。代わりに天井から鴨居の高さまで「垂れ壁」がつけられている。
 
 事実上、2ユニットを一体的に運用し、夜間の1人勤務の職員の負担を軽減する。若手職員が夜勤のときは、ベテランの仕事ぶりを間近でみることになって、職員教育につながる。

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