地域に生きる――内外から医療と福祉を見つめて③

2020年 9月 11日

■「予防」より「備え」の認知症希望条例
【髙橋】 認知症に関わる日本の動向では、現在、どんなことに注目していますか。
【大熊】 認知症に関する条例制定が自治体のちょっとしたブームみたいになっていて、2020年6月時点で8つの自治体が定めています。これは、鉄道事故で亡くなった認知症の人の遺族が監督不行き届きだとJR東海に訴えられた裁判がきっかけです。
【髙橋】 1審・2審と原告のJR東海が勝訴しましたが、最高裁で遺族が逆転勝訴し、話題になりました。
【大熊】 「そういう事故はこれからも起こるだろう。それは気の毒だ。鉄道会社に遺族が請求されたら自治体が肩代わりしよう」と定めた条例が各地で制定されました。自治体が保険会社と契約して保険料を払うやり方も広まりました。
 8つの自治体が認知症に関する条例を定めていると言いましたけど、その1つである和歌山県御坊市の条例は異彩を放っています。御坊市では、条例を作るときに認知症のご本人が大勢関わりました。不思議なことに……
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「在宅とは集合住宅」と突きつける2024介護報酬改定ー川名佐貴子さんに聞く🆕

 訪問系介護保険サービスの基本報酬が引き下げられた今年度の介護報酬改定によって、介護はこれからどうなっていくのか。福祉ライターの川名佐貴子さん(元シルバー新報編集長)に聞いた。
 
■医療側に多死時代への危機感
――基本報酬の減額がクローズアップされていますが、それ以外に今回の改定で印象的なことは。
 
 今回のダブル改定から、2040年は死亡数がピークになることを改めて痛感させられた。施設に協力医療機関との連携を義務付け、入院させる前に相談せよとか、できるだけ病院では死なせないという、これまでに以上に強いメッセージを感じている。
 
 それだけ医療の方は、この先の社会の変化に危機感を持っているっていうこと。医療の側には、寿命を迎えている高齢者など助かる見込みのない人が大挙して病院に押し寄せてきたらどうするのか、みたいな問題意識がすごくある。
 
 介護報酬改定でもターミナルケアは拡充されたが、私が3年前に記者として取材していた当時と変わりがない。現場もまだ最期は病院に送ればいいと…

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地域包括ケアの今とフレイル予防への期待(下 )

■フレイル予防というミッション
髙橋 介護保険ができた2000年当時と比べて長寿化が進み、介護予防に加えてフレイル予防という概念が定着しています。辻󠄀さんはフレイル予防推進にかかわっていますね。
 
辻󠄀 フレイルとは加齢に伴う虚弱のことですが、これは老いに伴う現象であって病気ではない。もちろん病原性のフレイルもあります。例えば脳卒中を起こして、まひが残るなど心身の状態が落ちるのも、フレイルです。糖尿病も、フレイルを進行させる要素です。
 
 でも、フレイルの根本は、老いたら弱るという自然現象なんですね。この領域には生活習慣病のように特効薬はありません。ただし、フレイルの段階だと、高齢者自身の一定の行動変容だけで進行を遅らせたり、軽減させたりできるという可逆性があります。
 
髙橋 高齢者が亡くなるまでの経過は、辻先生の同僚であられた秋山弘子東大名誉教授の論文で指摘されているとおり、その要因によって大きく3パターンに分かれますね。日本人の死因1位であるがんは…

地域包括ケアの今とフレイル予防への期待(上)

■地域包括ケアの各システムのモデルがない
髙橋 2022年3月、「地域包括ケア」の生みの親かつ名付け親である山口昇医師が逝去されました。90歳でした。
 
 山口先生は今から50年近く前、御調国保病院(現・公立総合みつぎ病院=広島県尾道市。当時は御調郡御調町)で「寝たきり老人ゼロ作戦」を始め、その一環として「医療の出前」を実施したことでも知られています。
 
 そして2023年は、介護保険の創設に尽力された池田省三氏の没後10年です。池田氏は介護保険について、創設後も発言し続けましたが、その主張は常にデータに裏打ちされていました。
 
 高齢者ケアに大きな足跡を残したお2人を思い出し、時の流れを感じます。今の地域包括ケアシステムについて、辻󠄀先生はどう見ておられますか。
 
辻󠄀 地域包括ケアシステムの概念が国の政策の舞台に現れたのは、2003年の厚労省の高齢者介護研究会の報告書です。
 
 そして法律上、その考え方が介護保険法の条文に加えられたのは、2011(平成23)年改正で、2014年の医療介護総合確保推進法で地域包括ケアシステムの定義が法律上なされ…

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重症心身障害児と地域で歩む 「訪問の家」の50年③

■ターミナルに向き合う
髙橋 1993年に「朋診療所」を開設されました。そのいきさつや、医療との関わりを教えてください。
 
名里 神奈川県では、障害をもつ子どものほとんどが県立こども医療センターに通います。「朋」のメンバーたちも同様なんですが、ところが18歳なると容赦なく、もうこども医療センターでは診られない、次のところに行ってくださいと言われてしまいます。
 
 次のところとは、一般の総合病院です。だけど、総合病院は障害のある人を診たことがなく、なかなか受け入れてくれません。こども医療センターの後に診てくれる主治医を探すのが大変で、自前のクリニックをもとう、となったんです。
 
 もう1つは、進行する病気で、何回も入退院を繰り返し、どんどん状態が厳しくなってしまうメンバーがいました。その方のお母さんが日浦に「朋はどこまで付き合ってくれる?」と聞いたそうです。診療所を開く前で、「朋」には週に何回か、嘱託医が来るだけでした。
 
 そう聞かれて、日浦は「ずっと付き合いたい。最後まで付き合いたい」と答えました。でも、本当にそうするためには医療機関が必要です。それで、施設内診療所をつくる認可を得て、嘱託医だった宍倉啓子医師に診療所長になってもらいました。所長は、今も宍倉先生です。
 
 今、「朋」のメンバーの主治医はほとんどが病院医師で…

重症心身障害児と地域で歩む 「訪問の家」の50年②

■「散歩に出ますか」への答え
髙橋 日浦さんは「文化としての社会福祉施設」ということを、しばしばおっしゃっています。とても印象深く、重要なキーワードでもあります。
 
名里 この言葉を説明するには、通所施設「朋」をつくった時のことからお話ししないといけません。
 
 先ほどお話ししたように、「朋」はもともと障害者のための作業所でした。当時の福祉制度には重度の障害児者の通所施設はなく、日浦は、重い障害がある人も、昼間通所して幅広い活動ができる場所が必要と考え、横浜市とも折衝していました。
 
 そうしたら横浜市から、そういう場所、すなわち知的障害者のための通所施設をつくったらどうですか、と打診されたのです。
 
 しかもその立地として、戦後、もとは山だった所を高級住宅地として開発した地域を提案されました。その一角が市の所有地だから、そこに通所施設を開設したらどうですかと。
 
 こちらとしてはありがたい話で、ではそうします、となります。ところが、地域住民の反対に遭うんですよ。地域全体が反対していると聞かされます。でも実は、後で聞いたら全然そうではなく、当時の自治会の役員が強硬に反対しておられました。
 
 役員は「福祉施設を建てるというが、文化施設ならいざ知らず、福祉施設はこの高級住宅地には馴染まない」という…

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