■認定で「非該当」となる人への新たなサービス
テンミリオンハウスが誕生したきっかけは、介護保険制度導入に際して実施した、要介護認定モデル事業(連載第4~6回を参照)です。
要介護認定のモデル事業は、当時のデイサービスやホームヘルプサービスを利用している方を対象に実施したわけです。当時、これらは措置制度に基づく行政サービスで、武蔵野市では予防的な方…
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■外国人の受け入れ課題は
私は「日本語を母国語としない介護人材」という言い方をしていますが、いわゆる外国人介護人材の活用もこれからの大きな課題だと思っています。
ひと口に「外国人介護人材」と言っても、活動に基づき「EPA」「技能実習」「特定技能(介護は1号のみ)」「在留資格・介護」という4つのカテゴリーがあり、それぞれ日本語力や就労可能なサービス種別などが異なります。
訪問系サービスは従来、4種類のうちEPA介護福祉士と在留資格・介護(=介護福祉士の資格をもつ)のみが従事できたのが、2025年4月から、「特定技能」「技能実習」について、〈介護職員初任者研修を修了+1年以上の現場経験あり〉の人には可能となりました。なので、訪問介護や訪問入浴の新たな戦力として期待する声も上がっています。
ただし事業所が外国人を受け入れる際は、「在留資格・介護」の人を除き、受け入れ・サポート機関への支払いが必要です。文化、宗教、風習の違いなど、「多様性への理解」も求められます。
■求められる「人材への投資」
日本が誇る質の高い介護を持続させるには、介護保険の社会保険スキームとは別な形で、人材確保の仕組みを作るしかないと思います。単に介護報酬を上げたり加算をつけたりするだけじゃなく、保険財源以外から「人材確保金」を投入することを提案します。
特養や看多機など施設を整備する場合、建築にかかる費用には、サービス提供基盤の確保という名目で公的な補助が入ります。人材確保はサービス提供基盤の確保に繋がるわけですから、施設整備と同じように公的な補助金を投入しても問題ないのでは。もう介護報酬のみで…
■地域のニーズに対応して事業者とともにサービスを創る
介護保険創設から25年。笹井さんは、「地域のニーズに対応して、行政として事業者、すなわちサービスを提供する立場の皆さんと一緒につくってきた、という思いが強い」と振り返る。
介護保険制度がつくられた当時は、家族介護が限界を迎え、介護の社会化が求められていました。制度創設によって措置から保険に変わって25年、ドラスティックな変化もすっかり定着しました。国民にとっては医療・年金の国民皆保険制度とともに「あるのが当たり前の制度」となりました。
これまでもお話ししたように、武蔵野市は措置の時代から地域のニーズに合わせて独自のサービスを組み立ててきました。介護保険導入後も、その伝統を生かしながら豊富なメニューを取り揃えています。仕組みを構築するときは、それなりに苦労しました。
例えば「認知症高齢者見守り支援サービス」。これは武蔵野福祉公社のホームヘルプセンターが提供する武蔵野市独自の介護保険外サービスで、ヘルパーなど介助者が認知症の人と一緒に散歩したり、外食に出かけたり、自宅で趣味活動をしたり、というものです。
介護保険サービスでは、ヘルパーなどの同行支援は日常生活に不可欠な外出(通院や食料品の買い物など)に限定され、それ以外の、喫茶店にコーヒーを飲みに行くような場合は使えません。「認知症高齢者見守り支援サービス」はそういう場合に使え、家族のレスパイトにもなります。
このサービスをつくるときも、ホームヘルプセンターのサービス提供責任者(サ責)と細かく議論を重ねました。今もやりとりを覚えているんですけど、「認知症の方と一緒に外出して喫茶店に入ったとします。そのとき、同行ヘルパーのコーヒー代は誰が負担するんですか。ヘルパーの自腹なんですか」と質問されました。
「それはやっぱり、本人か家族に負担してもらいましょう」「じゃあ、バスに乗って美術館に行く場合の…
2015(平成27)年12月12日、「ケアリンピック武蔵野2015」(第1回)が開催された。武蔵野市内の介護保険サービス事業者をたたえるイベントで、笹井さんは健康福祉部長としてこれを企画した。介護・看護永年従事者表彰や事例発表・ポスターセッション、さらに有識者の講演、市民公開講座と多彩なプログラムだった。
■市長が公開の場で表彰
2015年は介護保険が始まってちょうど15年目という節目でした。市として介護保険制度施行後を振り返り、サービス提供の実態を把握すると、現場では制度スタート時の熱い思いとか、情熱、やり甲斐、といったものがだんだん薄まってきているのではないか…という感覚がありました。サービス提供がルーチン化しつつあるように思えたんです。
そこで、武蔵野市民のために介護サービスを提供し続けてくださっている方々に保険者として報いるようなイベントができないか、介護や看護に従事する方々が誇りとやりがいをもって働き続けられる“カンフル剤”のような、そして人材確保の発展に寄与することができるようなことができないか、と考えました。
イベントの柱は永年従事者表彰で、15年以上もの長きにわたって市民に介護保険サービスを提供されている介護職・看護職を、事業所や法人単位ではなく…
2015(平成27)年4月に始まった新しい総合事業は、遅くとも18年3月(17年度末)までに開始することが自治体に義務付けられた。武蔵野市は15年10月のスタートとなった。
■武蔵野市の新しい総合事業へのスタンスを明確にした
お話ししたように私は新しい総合事業に対して、保険制度としての介護保険との整合性とう点で大いなる疑問がありましたが、決まった以上は進めなければなりません。
そこで、武蔵野市は総合事業の希望者であっても、最初にサービスを受けるときは必ず要介護認定を受けてください、主治医の意見書も必要です、ということにしました。
そうすれば、窓口によるバラつきも生じません。そのかわり、総合事業対象者の更新時は基本チェックリストだけでもいい、と簡素化しました。
15年4月は第6期介護保険事業計画の開始時期です。武蔵野市は「武蔵野市高齢者福祉計画・第6期介護保険事業計画」で、この中に「平成27年度介護保険制度改正への武蔵野市の対応」という章を設け、介護予防給付の見直しについて説明しました。
そこでは「国の制度見直しに伴う課題・問題点を把握したうえで、武蔵野市として地域の実情に応じた円滑な対応とサービス水準の維持向上を目指す」と、私たちのスタンスを明らかにしています。
そして国のガイドラインを参考に15年3月、「新総合事業対応方針」を整理しました。主な内容は…
■国は医療系サービスまで移行させようとしていた
2015年4月、介護保険法が改正され、市町村事業である地域支援事業に「介護予防・日常生活支援総合事業」(新しい総合事業)が創設された。介護予防サービスのうち訪問介護と通所介護は廃止され、これらは新しい総合事業に移行することになった。
もともと厚労省は、予防の訪問と通所だけじゃなく、もっと多くのサービスを新しい総合事業に移行させる、という考えでした。介護予防訪問看護とか介護予防通所リハも移すと。法改正前の厚労省担当者と学識経験者、市町村代表との非公式な検討段階の議論で、私はそれに猛反対しました。
その理由は、訪問看護や通所リハは医療系サービスなので医師会の影響下にあり、基本的に市町村独自では単価の設定や需給調整などをコントロールできないからです。
そもそも総合事業の目的は何だったのか。厚生労働省が2015年6月に示したガイドラインでは、①住民主体の多様なサービスを充実することで要支援者の選択肢を広げる、②多様な担い手による多様な単価、住民主体による低廉な単価の設定、③高齢者の社会参加の促進や効果的な介護予防ケアマネジメントを通じて費用の効率化を図る、といった狙いが示されていました。
つまり、総合事業は市町村が住民主体の多様なサービスを創設し育成してコントロールするのが原則じゃないですか。でも、訪問看護や通所リハといった医療系のサービスが、果たして市町村のコントロールで受給調整できるのか。医師会など医療関係者と市町村には、連携しつつもどうしても緊張関係があって…
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