〈【新田國夫】治し、支える〉の記事一覧
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第12回 ブータンやキューバに後れをとる日本

第12回 ブータンやキューバに後れをとる日本

 少し前から、新型コロナワクチンの接種が日本でも始まって、高齢者への接種をめぐる混乱が報道されている。そんなときに、外国で注目すべき出来事が2つあった。
■国民の6割が接種を終える
 1つは、ヒマラヤのふもとに位置する山岳国ブータンで、国民の約6割が1回目の接種を終えているという。ブータンの人口はおよそ77万2000人(2020年)だから……
【筆者紹介】新田國夫(にった・くにお) 新田クリニック院長、日本在宅ケアアライアンス理事長
1990年に東京・国立に新田クリニックを開業以来、在宅医療と在宅看取りに携わる。

第12回 ブータンやキューバに後れをとる日本

第11回 在宅医療は科学的である

■外来で検査し在宅で治療
 今回も新田クリニックの研修医のレポートから、在宅医療を考察したい。前回のK医師同様、総合医療センターに在籍するA医師は、新田クリニックで初めて訪問診療を体験した。
 A医師が担当したのは70代後半のOさん(男性)である。Oさんは直腸がんの手術後に人工肛門を造設し……
【筆者紹介】新田國夫(にった・くにお) 新田クリニック院長、日本在宅ケアアライアンス理事長
1990年に東京・国立に新田クリニックを開業以来、在宅医療と在宅看取りに携わる。

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第12回 ブータンやキューバに後れをとる日本

第10回 訪問診療を初めて経験した研修医は「すごい」と思った

■独居の認知症女性への訪問
 新田クリニックは研修医を受け入れている。同じ2次医療圏に属する総合医療センターに在籍するK医師がおよそ1カ月、研修医として地域の訪問診療を経験した。急性期医療に携わるK医師にとって、訪問診療は初めての体験であった。
 K医師は、訪問した在宅患者のなかでとりわけ印象的だったのは、90代女性のTさんだという。Tさんは独居で、軽度認知症がある。転倒して外来受診ができなくなったため……
【筆者紹介】新田國夫(にった・くにお) 新田クリニック院長、日本在宅ケアアライアンス理事長
1990年に東京・国立に新田クリニックを開業以来、在宅医療と在宅看取りに携わる。

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第12回 ブータンやキューバに後れをとる日本

第9回 コロナ患者はかかりつけ医が診るべきだ

■無症状・軽症高齢者は入院の必要なし
 日本在宅ケアアライアンスは昨年、新型コロナウイルス感染症の拡大に際し、「行動方針」を4月に、「対処方針」を6月に発表した。当時、陽性者は入院することとされていたので、陽性者を在宅で実際に診ることは想定していなかった。
 夏が過ぎて秋になり、11月以降、新規感染者の増加傾向が強まり始めた。厚労省は11月22日の「事務連絡」で、「病床確保や都道府県全体の入院調整に最大限努力したうえで、なお、病床がひっ迫する場合」と条件をつけ、以下のように通知した。
 「入院勧告等ができるとしている者のうち、医師が入院の必要がないと判断し、かつ、宿泊療養施設(適切な場合は自宅療養)において丁寧な健康観察を行うことができる場合には……

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第12回 ブータンやキューバに後れをとる日本

第8回 かかりつけ診療所機能の多機能化

■“川下の医療”から水平統合へ
 在宅医療が普及した理由はいくつもあるが、第1には高齢患者が増えたことである。第2の理由――本質的な理由ともいえる――は、臓器の治療を中心とする医療からQOLを重視する医療へと、医療のあり方が大きく変化したことである。
 すなわち医療モデルから生活モデルへの変化であり、こうした変化に伴って、ごく自然に在宅医療が普及した。
 一方、介護保険制度が始まったばかりの20年ほど前、在宅医療は川下の医療と称された。川上は急性期病院で……

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第12回 ブータンやキューバに後れをとる日本

第7回 かかりつけ医機能の多機能化が必要になってきた

■訪問診療も訪問看護も断る患者
 84歳のAさんは83歳の妻と暮らしている。Aさんは足が不自由で車いすを使い、妻は軽度認知症だ。息子と娘はそれぞれに家庭があり、親とは同居していない。Aさんに訪問診療することになったが、2回訪問した後、家族から連絡が入った。もう訪問診療は必要ありません、何かあったら外来で診ていただきます、と言う。それで訪問は中止した。
 しばらくして、Aさんが娘に付き添われて外来を受診した。「お名前は」と尋ねてもAさんは答えず、一言も発しない。発熱したと娘が言うので検査すると、右肺の肺炎であった。さらに口腔内を見せてもらうと、かなり汚れている。唾液が詰まって、なるほど、これでは……

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第12回 ブータンやキューバに後れをとる日本

第6回 在宅医療診断を確立する必要がある

■クリニックの外来患者さんたち
 Aさんは91歳女性。息子と同居している。息子はAさんをよく介護しているけれど、一方で支配的に振る舞う。Aさんは足腰が弱り、立つのがやっとの状態で、歩けなくなってきた。息子はそんなAさんに対して、大声で「立ちなさい!」「だめ!」などと命令口調で指示する。でもAさんは息子を信頼し、息子の将来を案じている。
 Bさんは90歳女性で、認知症が始まっている。現役時代は大学教授で、学長も務めた。息子の妻が外来に付き添ってくるが、この人が気の強い人で、私がBさんと話していると、ほとんど必ず横から口をはさむ。本人が何か訴えても、それは違うでしょう、と否定してかかる。すると……

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第12回 ブータンやキューバに後れをとる日本

第5回 高齢者をめぐる制度の矛盾が見えてきた

 コロナ禍はいろいろな問題を浮き彫りにしている。これまでは気づいていなかった、制度の矛盾に気づくきっかけにもなったような印象がある。
■特養の嘱託医の役割は
 その1つが、特養入所者への医療提供である。特養の人員基準は、介護または看護職員については「入所者3に対して1以上」で、医師については「必要な数」となっている。したがって、常勤の医療職は看護師だけで、医師は非常勤の嘱託医、という特養が少なくない。とりわけ、社会福祉法人が運営する特養はこの傾向が強い。聞いた話だが、社福系のある特養でコロナの集団感染が起こった。所属する看護師が1人で何十人もの検体を採取し、やがてこの看護師も感染して隔離を余儀なくされ、医療職不在の事態となってしまったという。この話が事実なら、この特養の嘱託医は何をしていたのだろうか。
 かつて特養入所者への医療提供は……

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第12回 ブータンやキューバに後れをとる日本

第4回 本当の意味でのかかりつけ医を地域に増やせ

■なぜ診療所でなく保健所なのか
 新型コロナ感染が拡大し始めたとき、症状がある人は保健所に設置された帰国者・接触者相談センターに連絡する、と定められた(現在は、かかりつけ医に電話相談という選択肢も加えられている)。どうして保健所に連絡しなければならないのか、普通に診療所を受診できないのか、戸惑った人が多かったのではないかと思う。
 この連載の第1回で、ドイツの取り組みを紹介した。感染を疑う患者は、原則として緊急サービスコールセンターに電話して助言を受けることが推奨されている。コールセンターの職員が患者の状況を体系的に尋ね、必要と判断すれば検査センター、あるいは近くの対応可能な家庭医、場合によっては専門医を紹介する。多くは家庭医が患者の窓口となった、というものだ。
 日本の医療制度はフリーアクセスを旨としており……

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第12回 ブータンやキューバに後れをとる日本

第3回 コロナ禍で保健所と市町村の連携が問われている

■保健所はどんな機関か
 新型コロナウイルス感染症の流行で、保健所がにわかに注目を集めている。2月、保健所に帰国者・接触者相談センターが設置され、「37.5度以上の発熱が4日以上続く」などの場合はまずここに相談することとされた。後に、その電話がつながらないことが問題となる。そのほかPCR検査の検体採取、検体の検査機関への輸送、陽性者への疫学調査など、保健所には膨大な業務が突然降りかかった。
 保健所がどんな機関で何をするところか、あまりピンとこない人が少なくないと思う。臨床医の中にも、コロナ禍以前は保健所とあまり接点がなかったケースがあるのではないだろうか。
 現在の保健行政は、1994年の地域保健法に依拠している。このとき、都道府県と市町村の保健行政が線引きされ……

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