見ていたのは年齢別の要介護(要支援)認定者数である。その「90歳以上」の数が…
第56回 医療現場の「倫理上の問題」🆕
■「倫理上の問題で治療できない」?
前回に続き、『透析を止めた日』(講談社、2024年11月刊)の話を続けたい。ノンフィクションライターの堀川惠子さんが、腎臓病で亡くなった夫・林新さんの闘病を綴った話題の本だ。
肝臓にも病変が見つかり、肝腎同時移植が検討されたが、結局、主治医は移植見送りの判断をした、というくだりで、「倫理」という言葉が登場する。林さんは肝腎同時移植に一縷の望みを賭け、「最後の希望」と口にしていた。
その直後に、主治医から移植断念を告げられてしまう。「移植しないなら、このまま輸血を続けることはもう……」と告げられ、林さんは〈目を見据えはっきりとした声で質した。「先生、それは、生きたいという僕の意志(原文ママ)に反して、治療をやめるということですか」〉。主治医は答える。〈「いえ、少しずつで……。ただ、このまま点滴を続けるのは倫理上の問題が……」〉。
堀川さんが解説する。〈倫理上の問題――。つまり回復の見込みのなくなった患者を、これ以上、医療の力で生かし続けるわけにはいかないということだ〉。
主治医は、このまま点滴を続けることには倫理上の問題がある、と言い、そのあとの言葉を濁しているが、つまり「倫理上の問題があるからもうこれ以上点滴もできない」という意味であろう。
ちょっと待ってほしい。回復の見込みがなくなった患者を医療の力で生かし続けることが倫理に反するなら、在宅医療はできないということにならないか。在宅医療の対象は…