多摩立川保健所が主催した摂食嚥下機能支援のシンポジウムが1月に開催され、そこでの在宅訪問管理栄養士の発表が興味深い内容であった。
要介護4・5の100%
通所や居宅サービスを利用する高齢者(343人)を対象に、在宅要支援・要介護者の栄養状態を調査した(2022年度の老健事業)。その結果、要介護4・5の人は、「低栄養」と「低栄養のおそれあり」が100%だったのである。
要支援1の人では53.5%、要支援2の人は50.0%と、要介護の以前からすでに半数の人が栄養の不十分な状態であった。
高齢者は栄養が足りていないということではないか。そんな状況で、身体を動かしましょう、歩きましょう、と働きかけたところで、身体状態を維持できるはずはない。
栄養が不十分になる背景には何があるのか。管理栄養士は考察する。「低栄養」「低栄養のおそれあり」の40%以上は、食事が「まったく楽しみでない」か「あまり楽しみでない」であった(2012年度の老健事業)。
一方、高齢者の生きがいは、「孫など家族との団らんの時」「おいしいものを食べている時」「友人や知人と食事、雑談している時」「夫婦団らんの時」が上位に挙げられる(2021年度高齢社会白書)。
家族・夫婦団らんは、一緒に食事することで得られるものだろうから、高齢者の生きがいは食にまつわるものが多いことになる。それなのに、食事が楽しみでないのが実態なのである。
その背景に、独居や貧困といった社会的要因や、臓器不全や嚥下障害などの疾病要因、認知機能障害などの精神・心理的要因、加齢による味覚・嗅覚障害や食欲低下が指摘される。高齢者ケアに携わる専門職は、これらを取り除くか軽減する努力を惜しんではならない。
セカンドステージで求められるもの
2026年は地域包括ケアのセカンドステージと言われる。確かにそうだろう。2025年、団塊世代は後期高齢者になり、住み慣れた地域でケアを受ける仕組みづくりが進められた。具体的には、医療と介護の連携推進である。
セカンドステージでは、食支援を中心にこの連携を強固にしたい。日本在宅ケアアライアンスは、食支援の目的として、「食事・栄養」と「食べる力」によって「笑顔」になることを提示している。
専門職は、「食事・栄養」には管理栄養士と介護職が栄養評価と食形態・食介助で関わる。「食べる力」のために歯科医師や歯科衛生士、介護職が口腔機能評価や口腔ケアを実施する。1人の患者・利用者の笑顔のために、それぞれが力を発揮する。
では医師は食支援とどう関わるべきか。訪問栄養食事指導料の算定率は低く、医師が栄養に無関心であることが推測できる。どうしても「まず薬」となるのだろう。
私が高齢者の摂食嚥下改善に取り組み始めたのは、2005年ごろだ。当時は脳卒中の後遺症による摂食嚥下障害から経管栄養となる人が多く、それを改善しようと仲間で奮闘した。20年以上過ぎて、脳卒中の治療は進んだ。
85歳以上の人が激増し、高齢者の状態像は大きく変わった。医師には、「まず薬」という考え方から脱して「食べる力」に目を向ける意識変革が求められる。
新田國夫(にった・くにお) 新田クリニック院長、日本在宅ケアアライアンス理事長
1990年に東京・国立に新田クリニックを開業以来、在宅医療と在宅看取りに携わる。