前回に続いて、患者の意思決定についてもう少し考えたい。今回紹介するのは65歳の男性で、今年6月下旬、病院に紹介されて新田クリニックを初診された。病名は胃がん、ステージ4であった。
2月初めに病院を受診し、この月の中旬から外来で抗がん剤による治療が開始された。3月、担当医が交替して…
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■標榜し広告できる診療科の原則
医療機関が標榜する診療科名として広告可能な範囲は、医療法や厚生労働省令に定められる。
2008(平成20)年に見直しが行われ、原則は①内科、②外科、③〈内科または外科〉+〈臓器・疾病・性別や年齢・医学的処置〉、④単独名称か、単独名称に臓器・疾病・性別や年齢・医学的処置の組み合わせ――の4種とされた。
③は消化器内科、糖尿病内科、女性内科、老年内科、形成外科などがある。④の単独で標榜できる名称は、精神科、アレルギー科、リウマチ科、小児科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科など18科である。
これら18科に臓器・疾病・性別や年齢・医学的処置を組み合わせた診療科としては…
前回はドイツの家庭医制度とフランスの主治医制度を考察した。イギリスでこれらに相当するのはGP、ジェネラル・プラクティショナーである。イギリスでは、GPはコミュニティヘルス、病院医師は入院や救急医療、と役割が明確に分かれているのはもちろん、両者の養成課程も異なるという。
■ゲートキーパー不在で医療が逼迫
そのイギリスでは、新型コロナ死者が欧州でも突出して多かった。理由の1つとして指摘されるのが、GPの多くが対面診療を休止したことである。市民の側にもGP診療所への受診控えが生じた。その結果…
6月、ベルリンとパリを訪れ、ドイツの家庭医制度とフランスの主治医(かかりつけ医)制度の現場を見せてもらった。どちらも、2000年代に特定の医師を家庭医/主治医とする制度を導入している。
税財源で運営されるNHSのもとでGPが定着するイギリスと異なり、独仏の公的医療制度は保険方式であることから、わが国のかかりつけ医のあり方にも示唆を得られると考えられる。以下は、私が現地で聞いた話と、それに基づく考察である。
家庭医が配置されるドイツ
ドイツの制度では、家庭医は自由開業できず、おおむね人口1600人に1人の割合で配置される。家庭医は幼児から高齢者まで診るので…
■「病人自主権利法」がACPを規定
ACPの研修に招かれて、5月、台湾に行ってきた。台北のロータリークラブが主催した研修で、日本からは私と稲葉一人弁護士が現地で参加したほか、ビデオ発表やオンラインで数人の医師が参加した。
コロナパンデミック直前の2020年1月、台湾の医師たちが来日し、東京でACPの研修を行った。今度はその逆である。台北の会議場に大勢の医師や看護師が集まった。台北近郊の市の保健局長も参加していた。
研修では台湾のACPの現状がさまざまな角度から報告され、とても有意義であった。興味深かったのは、台湾ではACPが法制化されていることである。「病人自主権利法」という法律が2015年に成立し、2019年1月に施行された。
この法律の主眼は、希望する者はACPを通じて事前指示書を作成し、もしもの時(後述)に…
■重度障害者の自立とは
『異端の福祉』(高浜敏之、幻冬舎メディアコンサルティング)という本に、重い障害をもつ人の自立について考察する一節がある。興味深い考察であり、自立とはどういうことか、改めて考えてみたい。
著者の高浜氏は重度障害者の在宅サービス「重度訪問介護」の事業所を経営する。この事業所は全国展開し、重度障害者の脱施設化に寄与している。当事者は施設を出て地域で、在宅で暮らせるようになってきた。
本書のなかで、自立生活運動の父と呼ばれる米国のエド・ロバーツ氏(1939-1995)が紹介されている。障害者のための組織「自立生活センター(CIL)」を創設したロバーツ氏はポリオの後遺症で四肢不自由となり、人工呼吸器も使用していた。
本書によれば、彼は「できるだけ普通の人間になろうとしてリハビリテーションを受けた」という。その結果、装置を使えば自分ひとりで食事できるようになったが…
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