「にも包括」報告書取りまとめ 厚労省検討会

2021年 3月 5日

にも包括

 厚生労働省の「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムに係る検討会」は3月4日に開催した会合で=写真、報告書案を議論し取りまとめた。この日の会合で構成員から出された意見を反映させた上で、19日に開催される予定の障害者部会に報告する。

 報告書案は「はじめに」「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係る基本的な事項」「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムを構成する要素」の3つで構成されている。

 「はじめに」では、2017年2月の「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」報告書で、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの理念が示され、それ以降、都道府県などで障害福祉計画・医療計画に基づき、同システムの構築の推進を図ってきたとの経緯を記した。

 その一方で、同システムを構築する上での実施主体や機関の役割の明確化などの課題が明らかとなったことから、検討会を設置して、今後の方向性や取り組みを報告書として取りまとめたと、検討会と報告書の位置付けを説明した。

 前回会合の素案では、厚労省は今後この報告書に基づき、諸制度の見直しや2024年度からの時期医療計画・障害福祉計画への反映、財政的方策なども含め具体的取り組みを検討し、実現を図るべきと結んでいた。

 報告書案では、前回会合での構成員からの意見を反映し、関係省庁や省内関係部局と連携を図ることや、入院に関わる制度のあり方、患者の意思決定支援、退院後支援のあり方などについて、別途検討が行われるべきとの文言を追記した。

「普及啓発の推進」を「基本的な事項」に移動
 「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係る基本的な事項」では、素案は「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの基本的な考え方」「重層的な連携による支援体制の考え方と構築」の2部構成だったが、報告書案は「普及啓発の推進」を加えた3部構成とした。

 これは、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築において普及啓発は最も重要な要素の一つ」と記述しているにも関わらず、素案では「普及啓発の推進」の項目が、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムを構成する要素」の最後に置かれていることに対し、複数の構成員から異議が出ていたためだ。

 「基本的な考え方」では、精神障害の有無や程度にかかわらず、誰もが安心して自分らしく暮らすことができるよう、重層的な連携による支援体制を構築すること、同システムは「地域共生社会」を実現するための「システム」「仕組み」であり、システムの考え方や実践は地域共生社会の実現に向かっていく上で欠かせないものである、との認識を示した。

 また、このシステムは精神障害のある人たちや、地域住民の「地域生活」を基本とするもので、日常生活圏域を基本として、市町村などの基礎自治体を基盤として進める必要があること、システムの基本方針が地域住民、地域の専門職、関係者に共有されることが重要であるとした。

 「支援体制の考え方と構築」に関しては、市町村が主体となり、保健所や精神保健福祉センターとの連携を図りつつ、精神科医療機関、その他の医療機関、地域援助事業者、居住支援法人など居住支援関係者、ピアサポーター、意思決定を支援する者などとの重層的な連携による支援体制を構築することを求めた。

 一方、システムの構築に当たっては、保健・医療・福祉関係者などによる「協議の場」で協議をしていくことが重要であるが、素案では「協議の場」に関する記述の物足りなさを指摘する意見が構成員から述べられたことから、報告書案ではあり方や具体的な活動などについて詳述した。

 「実現すれば世界に誇れるものに」
 「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムを構成する要素」では「地域精神保健及び障害福祉」「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムにおける地域精神医療」「住まいの確保と居住支援の充実、居住支援関係者との連携」「つながりのある地域づくりと社会参加の推進」「当事者・ピアサポーター」「精神障害を有する方等の家族」「人材育成」の7つの要素について記している。

 このうち、「地域精神保健及び障害福祉」では、市町村での地域精神保健の充実が重要で、特に地域精神保健に関する業務の制度上の位置付けについて検討をする必要があることや、精神障害を持つ人たちが「本人の困りごと」に対して、必要な時に適切な支援を受けることができるよう、精神保健医療福祉に関わる人の連携強化を図る必要性などを指摘している。

 会合では、最後に座長の神庭重信・九州大学名誉教授が、報告書の内容について「実現すれば世界に誇れるものになる」と評した。

このカテゴリーの最新の記事

このカテゴリはメンバーだけが閲覧できます。このカテゴリを表示するには、年会費(年間購読料) もしくは 月会費(月間購読料)を購入してサインアップしてください。

24年度の生活保護申請件数 5年連続で増加

 厚生労働省の調査によると、2024年度の生活保護申請件数は25万9353件(速報値)で前年度に比べ3.2%増加したことが分かった。前年度を上回るのは5年連続で、高齢者世帯の増加が主な要因。...

24年の出生数70万人割れ 出生率は過去最低に

 厚生労働省の人口動態調査によると、2024年の出生数は68万6061人で、前年の72万7288人から4万1227人減少した。統計を取り始めてから70万人を下回ったのは初めて。すべての都道府県で減少した。  女性が一生のうちに子どもを産む数の指標となる合計特殊出生率は1.15で前年の1.20からさらに低下した。出生数を母の年齢(5歳階級)別にみると、すべての階級で減少している。  都道府県別に最も合計特殊出生率が少ないのは東京都の0.96で、人口の東京への一極集中がその一因と考えられる。...

整備補助金の減額でサ高住の増加ペースが鈍化

住宅型有料の居室数が老健を上回る 高齢者住宅のデータベースとコンサルティングを提供するタムラプランニングアンドオペレーティングは、「高齢者住宅データ〔全国版〕」2025 年度上半期号を発行した。  それによると、4月時点で集計した全国の高齢者住宅・施設の13 種類のうち、ホーム数ではグループホームが1万4354カ所で最多となり、次いで住宅型有料老人ホーム(住宅方有料)の1万2900カ所、地域密着型を含む特別養護老人ホーム(特養)の1万474カ所の順となっている。  サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の登録数は...

ケアプランデータ連携普及率で都城市が1位に

 善光総合研究所(東京都港区)が採択された宮崎県の「ケアプランデータ連携システム活用促進モデル地域づくり支援事業」で、都城市の124事業所へのシステム導入が完了し、人口10万人以上の市町村におけるケアプランデータ連携システムの普及率が36.2%を達成した。  厚生労働省の介護現場の生産性向上とケアプランデータ連携システムに掲載されている地域事業者数と、WAMNETに掲載のシステム導入数を基に算出した普及率によれば、同市が全国1位だという。...

東温市が遠隔医療など活用した健康増進事業実施

 愛媛県東温市は2024年10月から中山間地域の住民や市内企業で働く従業員の健康増進、医療機関などの人手不足解消に向け、市内公共施設や公民館、事業所などで最新のデジタル機器・技術を活用した「とうおんスマートヘルスケア創出事業」を行っている。  愛媛大学や市内企業、医師会・歯科医師会などと連携し、市民の健康寿命の延伸や最新のデジタル機器の活用を促進する。...

1週間無料でお試し購読ができます  詳しくはここをクリック

新着記事は1カ月無料で公開

有料記事は990円(税込)で1カ月読み放題

*1年間は1万1000円(同)

〈新着情報〉〈政策・審議会・統計〉〈業界の動き〉は無料

【アーカイブ】テーマ特集/対談・インタビュー

コラム一覧

【アーカイブ】現場ルポ/医療介護ビジネス新時代

アクセスランキング(6月23-29日)

  • 1位
  • 2位
  • 3位 90% 90%
メディカ出版 医療と介護Next バックナンバーのご案内

公式SNS