認知症の人の預金を家族や社会福祉協議会の職員などの代理人が引き出しやすくするため、金融庁は金融業界に対し指針の策定を求める。7月15日に開催された金融審議会に報告書案を示した。
認知判断能力の低下などにより、高齢者の家族や公的機関が本人の代理人として金融機関の窓口に預金の引き出しに行く場合、本人意思が確認できないなどを理由に、手続きが認められない事例が数多く報告されている。また、本人意思が明確に確認できないという理由から、本人であっても預金の引き出しが認められないこともある。
一方で、日本では金融資産の約3分の2を60歳以上の世帯が保有していることから、金融機関には、特に認知判断能力の低下した高齢顧客に対する対応を強化・改善していくことが求められている。
報告書案では、医療や介護など明らかに本人のための支出で、病院に医療費を金融機関が直接振り込むなどの場合は、「代理人であっても手続きを認めるなどの柔軟な対応を行っていくことが顧客の利便性の観点からは望ましい」と指摘した。
また、認知判断能力の低下した顧客の権利擁護や適切な資産形成・管理に努めていくため、行政や福祉関係機関などとの具体的な連携内容を指針に盛り込むことも要求。預金通帳やキャッシュカードを頻繁に紛失する、ATM 操作や窓口での手続きなができなくなるというように、顧客のどのような兆候・行動を認識した場合に連携を行っていくべきかについて例示することも求めている。