中央社会保険医療協議会(厚生労働相の諮問機関)は12月8日、来年度の診療報酬改定に関して支払側委員と診療側委員双方が基本的な見解を述べた。
支払側委員は医療保険制度の持続可能性への懸念や国民負担の状況などから、診療報酬の引き上げに反対した。
これに対し、診療側委員は政府の重要政策とされる医療従事者の賃上げ、物価高騰に対応するため、従来以上の大幅なプラス改定を求めた。
医療機関の経営状況に関して、診療側委員は、2022年度の一般病院はコロナ関連補助金を含め1.4%の黒字、一般診療所は黒字が拡大し、医療法人では9.7%の黒字、歯科診療所と保険薬局は黒字基調で安定的に推移したと指摘した。
また、医療法人における看護職員や看護補助職員の平均給料年額は、一般病院で1%台半ば、一般診療所で2%程度の伸びとなったと述べた。
資産・負債の状況では、一般病院・一般診療所・歯科診療所・保険薬局のいずれも、長期借入金をはじめとする固定負債が減少して資本が増加し、一般診療所を中心に医療機関・薬局の経営は堅調と言えるとした。
そして、薬価改定については市場実勢価格の低下に伴う引下げ分を国民に還元すべきとの見解を示した。
これに対し、診療側委員はコロナに関する診療報酬上の特例や補助金などの影響を排除すると、コロナ後3年間の病院・診療所の損益率の平均は、コロナ前の平均を下回っているとした。
その上で、診療報酬上の特例やコロナ補助金は一過性の収益で、しかも感染対策経費の増加や追加的人員の確保などの診療体制の整備に活用されており、すべての医療機関の収益となっていないことから、診療報酬改定の議論は、これらの影響を除いた上で行うべきであることを強調した。
さらに、薬価改定に関しては、物価高騰・賃金上昇への対応に加え、医療DX対応に向けた環境整備の必要性もあることから、改定により生じる財源を診療報酬に当てることを求めた。
今後はこれらの見解や薬価調査の結果などを踏まえ、公益委員が厚労相に対する意見書の素案を作成。その上で、中医協で議論して意見書を取りまとめ、中医協から厚労相への意見書として提出することになる。