財政検証控え制度改正の議論を開始 年金部会

2022年 10月 26日

 社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)年金部会は10月25日、専門委員会の設置や今後の論点となる年金制度の意義・役割について議論した。

 前シーズン(令和2[=2020]年改正法検討時)の同部会は2018年4月に始まり、19年12月に「議論の整理」を公表した。今回の部会は次の財政検証を24年に控え、3年ぶりに始まった。

 会議ではまず部会長・部会長代理を選出し、「年金財政における経済前提に関する専門委員会」の設置を了承した。そして、今後の論点となっていく年金制度の役割や制度改正について、事務局が説明した。

 令和2年年金制度改正法は19年12月「議論の整理」をふまえて成立し、段階的に思考が進んでいる。その主な内容は①被用者保険の適用拡大、②在職中の年金受給の在り方の見直し、③受給開始時期の選択肢の拡大、などである。

 ①はパートなど短時間労働者を被用者保険の適用対象とするもので、その事業所規模を段階的に引き下げていく。また、適用となる「5人以上の個人事業所」に、いわゆる「士業」(弁護士や税理士など)の事務所を含めた。

 ②は就労意欲の低下を抑えるため、低在老(60~64歳の在職老齢年金制度)の支給停止基準額を引き上げた。③は受給開始時期の上限を75歳に引き上げた。

 こうした直近の改正を経て、今後の検討課題は、前シーズンの「議論の整理」に掲げられた以下の論点が中心となる。

 (1)被用者保険の更なる適用拡大
   ・企業規模要件を撤廃し、50人以下の企業に対しても被用者には被用者保険を適用
   ・複数の事業所で適用基準を満たさず就労する人や、フリーランスやギグワークなどであっても雇用に近い働き方の人への補償の在り方
   ・第3号被保険者制度については、被用者性が高い人には被用者保険を適用していき、この制度の縮小・見直しに向けたステップを踏んでいく
 (2)高齢期の就労と年金受給の在り方
   ・高在老(65歳以上の在職老齢年金制度)を含めて年金と就労の在り方を検討。
   ・就労の長期化を制度に反映することで長期化する老後生活の経済基盤の充実が図られるように
   ・高齢者の就労と年金の組み合わせの多様化・柔軟化
 (3)年金制度の所得再分配機能の維持
   ・基礎年金の所得再分配機能を維持するためにも被用者保険の適用拡大
   ・マクロ経済スライドの効果の検証
   ・保険料拠出期間の延長も検討
 (4)その他
   ・障害年金・遺族年金についても、社会状況の変化に合わせて見直す必要を検証
   ・制度についての広報や情報提供の充実、年金教育の取り組みも必要
   ・公的年金、私的年金を通じた「見える化」を進め、老後の生活設計をイメージできる仕組みの検討
   ・モデル年金以外の所得保障の状況についても周知

 委員からは、「被用者保険はすべての被用者への適用が原則」「厚生年金はこれまでフルタイムの中間層の制度であったが、これからは多くの人を包摂する制度にすべき」「将来の年金や社会について、若い人が納得できる仕組みを」、など、さまざまな意見が出された。

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特例介護の新類型を提案 介護保険部会🆕

 第128回社会保障審議会介護保険部会が11月10日に開かれ、「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築等」「地域包括ケアシステムの深化(介護予防・日常生活支援総合事業等)」「地域包括ケアシステムの深化(高齢者向け住まい)」などが議論された。
 
 「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築等」は、10月に開催された第126回部会で提案された、「特例介護サービス」の新たな類型案について、具体的に提案された。
 
 現行の特例介護サービスは、全国を対象地域とする「基準該当サービス」と厚労大臣が定める地域を対象とする「離島等相当サービス」である。事業者は指定でなく登録、人員配置基準は指定サービスより緩和されている(離島等相当サービスでは人員配置基準の規定はない)。報酬も、介護報酬を基準に市町村が設定する。これらは居宅サービスに適用される。

有料は届出から登録へ 望ましいあり方検討会🆕

 第7回有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会が10月31日に開催され、とりまとめ案について議論した。
 
 とりまとめ案は有料老人ホーム(以下、有料)における安全性やサービスの質の確保、入居契約の透明性確保、紹介事業の透明性や質の確保、指導監督や「囲い込み」対策の在り方など多岐にわたる。主な内容を以下に挙げる。
 
 ●中重度の要介護者(要介護3以上)や医療ケアを必要とする要介護者、認知症の人などを入居対象とする有料については、行政の関与により入居者保護を強化するため、登録制を導入。
 
 ●登録制は、公平性の観点から、要件に該当する既存の有料にも適用される。既存の有料が新制度に移行する際は一定の経過措置を設ける。
 
 ●参入後も事業運営の質の維持が求められるため、更新制や更新拒否の仕組みもつくる。行政処分を受けた運営事業者は一定期間、有料の開設が制限される。
 
 ●こうした有料については、高齢者の尊厳の保障やサービスの質の確保の観点から、職員体制や運営体制に関する一定の基準を法令で儲ける。

ケアマネ資格要件など議論 介護保険部会🆕

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 「地域包括ケアシステムの深化(相談支援の在り方)」では、ケアマネジャーの資格取得要件や業務の在り方について事務局から提案された。
 
 資格要件については、参入促進のため「受験対象である国家資格の範囲拡充」を提案。具体的には診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、救急救命士、公認心理師が挙げられる。これら5資格の業務などは以下の通り。

中山間地域の訪問介護への定額導入など提案

 10月9日、第126回社会保障審議会介護保険部会が開かれ、「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築等」「地域包括ケアシステムの深化(相談支援の在り方)」などが議論された。
 
 「人口減少…に応じたサービス提供体制の構築等」の論点は①地域の類型の考え方、②地域の実情に応じたサービス提供体制の維持のための仕組み、③地域の実情に応じた包括的な評価の仕組み、④介護サービスを事業として実施する仕組み、⑤介護事業者の連携強化、⑥地域の実情に応じた既存施設の有効活用、⑦調整交付金の在り方、と多岐にわたる。
 
 以下、①~⑤について事務局からの提案をまとめる。
 
 ①については、サービス需要が減少する「中山間・人口減少地域」ではサービス提供の維持・確保を前提に新たな柔軟化のための枠組みを設ける必要がある。その対象は「特別地域加算」の対象地域が基本となるが、拡充も考えられる。また、市町村の中でもエリアによって人口減少の進み方は異なるため、市町村内の一部エリアも対象とできないか。
 
 「中山間・人口減少地域」は、介護保険(支援)計画の策定時に、都道府県が市町村の意向を確認して決定する。「大都市部」「一般市等」では、現行制度の枠組みを活用したサービス基盤の維持・確保が求められる。
 
 委員からは、地域類型を定める根拠となる高齢者人口について、「その場合の高齢者とは何歳以上か、定義を定める必要がある」との指摘が相次いだ。
 
 ②は「中山間・人口減少地域」のサービス提供体制の維持・確保のために、特例介護サービスの枠組みを拡張する。新たな類型は下図の赤い部分だ。

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 具体的な論点は①地域包括ケアシステムの実現・深化に向けた支援体制の整備、②医療介護連携の推進、③持続可能性の確保、の3点。
 
 事務局は①について、地域の状況に応じたサービス提供体制や支援体制の構築が重要、との前提で、地域の性格によって課題を以下のように位置づけた。
 
 中山間・人口減少地域…サービス基盤の維持・確保
 都市部…新たな事業者や人材の持続的な確保
 一般市等…前2者それぞれへの対応
 
 そのうえで中山間・人口減少地域では、前回の部会で議論されたサービス提供体制の確保のための方策について、介護保険事業計画に反映することが重要、との方向性を提示する。
 
 さらに、者向け住まいについては、「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会」の議論もふまえ、介護保険部会で議論して整理する。介護予防や人材確保、生産性向上に関する事項も含めて…

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