社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)年金部会は10月25日、専門委員会の設置や今後の論点となる年金制度の意義・役割について議論した。
前シーズン(令和2[=2020]年改正法検討時)の同部会は2018年4月に始まり、19年12月に「議論の整理」を公表した。今回の部会は次の財政検証を24年に控え、3年ぶりに始まった。
会議ではまず部会長・部会長代理を選出し、「年金財政における経済前提に関する専門委員会」の設置を了承した。そして、今後の論点となっていく年金制度の役割や制度改正について、事務局が説明した。
令和2年年金制度改正法は19年12月「議論の整理」をふまえて成立し、段階的に思考が進んでいる。その主な内容は①被用者保険の適用拡大、②在職中の年金受給の在り方の見直し、③受給開始時期の選択肢の拡大、などである。
①はパートなど短時間労働者を被用者保険の適用対象とするもので、その事業所規模を段階的に引き下げていく。また、適用となる「5人以上の個人事業所」に、いわゆる「士業」(弁護士や税理士など)の事務所を含めた。
②は就労意欲の低下を抑えるため、低在老(60~64歳の在職老齢年金制度)の支給停止基準額を引き上げた。③は受給開始時期の上限を75歳に引き上げた。
こうした直近の改正を経て、今後の検討課題は、前シーズンの「議論の整理」に掲げられた以下の論点が中心となる。
(1)被用者保険の更なる適用拡大
・企業規模要件を撤廃し、50人以下の企業に対しても被用者には被用者保険を適用
・複数の事業所で適用基準を満たさず就労する人や、フリーランスやギグワークなどであっても雇用に近い働き方の人への補償の在り方
・第3号被保険者制度については、被用者性が高い人には被用者保険を適用していき、この制度の縮小・見直しに向けたステップを踏んでいく
(2)高齢期の就労と年金受給の在り方
・高在老(65歳以上の在職老齢年金制度)を含めて年金と就労の在り方を検討。
・就労の長期化を制度に反映することで長期化する老後生活の経済基盤の充実が図られるように
・高齢者の就労と年金の組み合わせの多様化・柔軟化
(3)年金制度の所得再分配機能の維持
・基礎年金の所得再分配機能を維持するためにも被用者保険の適用拡大
・マクロ経済スライドの効果の検証
・保険料拠出期間の延長も検討
(4)その他
・障害年金・遺族年金についても、社会状況の変化に合わせて見直す必要を検証
・制度についての広報や情報提供の充実、年金教育の取り組みも必要
・公的年金、私的年金を通じた「見える化」を進め、老後の生活設計をイメージできる仕組みの検討
・モデル年金以外の所得保障の状況についても周知
委員からは、「被用者保険はすべての被用者への適用が原則」「厚生年金はこれまでフルタイムの中間層の制度であったが、これからは多くの人を包摂する制度にすべき」「将来の年金や社会について、若い人が納得できる仕組みを」、など、さまざまな意見が出された。