社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)医療保険部会は8月19日、感染症法の改正などについて議論した。
新型コロナウイルス感染症では、医療提供にさまざまな問題が生じた。これまで指摘された課題は、
〇指定医療機関だけでは入院患者を受け入れきれず、一般病院が通常医療を制限してでも病床を確保する必要が生じた。ところがこうした事態は想定されておらず、体制の立ち上げに時間がかかった
〇ウイルスの特性が明らかになった後でも、医療機関の役割調整が困難だったり、医療体制が十分に確保されなかったりした
〇感染の疑いのある患者が普段かかっている医療機関で診療を受けられず、総合病院を受診したり、地方自治体に相談するケースがあった
〇発熱患者を診療する医療機関が一部しか公表されず、公表している医療機関に患者が殺到して外来がひっ迫した
である(第63回厚生科学審議会感染症部会)。これに対して、以下の方向性が示された(同部会)。
〇新興感染症に対応する病床提供について、平時において都道府県と医療機関の間で協定を結ぶ「全体像」の仕組みを法定化し、危機発生時にはこの協定に従って医療を提供する。医療機関に対しては協定に沿って病床確保を促す措置を設けるなど、都道府県・国が医療資源確保についてより強い権限を持つことができるよう、法律上の手当を行う
具体的には、以下の策が提案された(同部会)。
〇都道府県は感染症まん延時における医療提供体制の確保に関し、計画的な取り組みを推進する。たとえば病床や発熱外来、後方支援、人材派遣などについて数値目標を盛り込んだ計画を平時から策定するなど
〇都道府県が医療機関と協定を締結する仕組みを創設する
〇これらの協定に沿った措置の公表、流行初期における減収補償の仕組みの創設など
減収補償の仕組みについては事務局からイメージ案が示された。
〇初動対応を含む特別な協定を締結した医療機関について、一般医療の提供を制限して大きな経営上のリスクのある流行初期の感染症医療を提供することに対し、減収補償を行う
〇感染症医療を実施した月の診療報酬収入が、流行前の同月の診療報酬収入を下回った場合、差額を支払う
〇事業実施主体は都道府県、費用負担者は国、都道府県、保険者(被用者保険、国保、後期高齢広域連合)
これに対し委員から、費用負担者に保険者は入れず、全額公費負担とすべき、などの意見が示された。