日本在宅ケア・サミット2022を開催

2022年 7月 20日

新田理事長02

あいさつする新田理事長

 7月17日、一般社団法人日本在宅ケアアライアンス(新田國夫理事長)が「日本在宅ケア・サミット2022 いのち・くらし・生きがいを支える」を開催した(東京大学・伊藤謝恩ホールとオンラインによるハイブリッド形式)。

 主催者によると会場とオンラインで500人以上が参加した。

 同アライアンスは医療・介護に関連する団体が結集して2015年に設立、20年に法人化した。現在、19団体が加盟している。「サミット2022」は21年度の活動成果がまとまったことから企画された。

 理事長のあいさつと祝辞、構成団体の紹介などに続き、ゲストの樋口恵子さん(評論家・「高齢社会をよくする会」理事長)が「ヨタヘロ期の生きがい」と題して特別講演。90歳となった自らの現在の生活ぶりに触れながら、社会全体の問題を軽妙な語り口で提起した。

樋口恵子03

特別講演を行う樋口さん

 樋口さんは、平均寿命と健康寿命の差が男女で異なる(男性8.7年、女性12.7年=いずれも19年)ことに着目する。

 平均寿命と健康寿命の差とは要介護や虚弱となる期間であり、樋口さんの表現を借りれば「ヨタヘロ期」である。男女差の背景に高齢独居女性の貧困があると指摘した。 

 また、同世代の知人が在宅で亡くなった際の体験から、「子どもに迷惑のかからない死に方をしたい」と強調した。

 この知人は特に持病もなく、かかりつけ医をもたなかった。そのため亡くなった際に警察が介入し検視となり、遺族は大変な思いを強いられたという。樋口さんは、かかりつけ医のあり方を改めて問いかけた。

 21年度の成果報告として在宅ケアを取り巻く4つの課題への取り組みを発表した後、シンポジウム「生きがいを支える在宅ケア~多職種で考える~」が行われた。

 シンポジストとして看護師・歯科医師・薬剤師・管理栄養士・介護支援専門員・介護福祉士・医療ソーシャルワーカーが登壇、医師2人が指定発言を行った。

 シンポジストはそれぞれの専門性に基づく支援のポイントを説明した。

 「ADLやIADLの改善だけでは幸せになれない」(訪問看護師)、「未介護や予介護という造語を発案して食事と運動に助言」(訪問薬剤師)、「顔だけでなく足や心も見える関係」(介護支援専門員)など、地域での実践を発表した。

パネル01

在宅支援に携わる看護師、歯科医師、薬剤師、管理栄養士、介護支援専門員、介護福祉士、医療ソーシャルワーカーと、指定発言者の医師が壇上に揃ったシンポジウム

 これらの発表の後、指定発言者からは「在宅ケアの現場には医者の居場所がないといつも感じている」との声が聞かれた。 

 アライアンスの活動を振り返るだけでなく、在宅ケアに携わる専門職が一堂に会して互いの仕事への理解を深める機会となっていた。来年7月に第2回の開催が決定しているという。

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 近年、入院期間短縮が促進され、医療機関以外の場所への訪問看護サービス需要が増大している。訪問看護の報酬は介護保険か医療保険から給付され(下図)、要介護・要支援認定者は介護保険が優先する。
 
 要介護・要支援認定者が医療保険で訪問看護サービスを受けるには、特定の病気・状態(末期がんや人工呼吸器使用など)に該当し主治医の指示が必要だ。

機内で座位姿勢を支えるベルトを共同開発

 ダイヤ工業(岡山市)と日本航空は、座位保持が困難な人や補助を必要とする人の座位姿勢をサポートするサポートベルトを共同開発し、運用を開始した。体幹を保つことができない人でも、この製品を装着することで座位姿勢を固定でき、空の旅を快適に過ごすことができる。
 
 座席のシートベルトを着用した状態で、上半身を座席に固定する。特に、身体が不自由な人や病気・ケガなどの理由により座位を保つことが困難で、補助が必要な人を対象としている。
 
 「ベストタイプ」と「ベルトタイプ」の2種類あり、体の状態に合わせて利用する。ベストタイプはベストのように着用し、前面(胸側)にあるバックルを締める。ベルトを座席の後ろで交差させた後、前面で面ファスナーを留める。腕を通すことが難しい場合には、左右別々にして、片方ずつ着用することもできる。

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