認知症・フレイル・介護予防トレーニング提供 多彩な内容でプログラムを構成〔MCIリング〕

2021年 5月 13日

 認知症治療の第一人者である朝田隆・東京医科歯科大学客員教授(筑波大学名誉教授)が代表理事を務め、13企業が参加するMCIリングは、認知症やフレイル、介護を予防するトレーニングの普及を進めている。そのプログラムは運動や脳トレ、音楽など多彩なコンテンツを組み合わせることで、利用者が楽しく、しかも継続できるようになっている。

朝田先生

        朝田隆代表理事

役立つと評価されるビジネスモデルを
 MCIリング設立のきっかけは、朝田代表理事が認知症治療や研究、予防、啓発活動などを通じて関係のあった企業に呼びかけたことだ。

 高齢者を対象とした認知症やフレイル、介護に備えるためのビジネスがいろいろある中で、役立つと評価されるビジネスモデルを提示することを目的に、2018年2月に設立した。

 その後、2~3カ月に1度参加企業が集まり、朝田代表理事が考える「脳と筋力を鍛えることで認知症の予防が期待できる」プログラムを練り上げてきた。

 19年1月には厚生労働省の研究費により、茨城県牛久市で調査研究事業を実施。参加企業である知の啓発社やニッセイ情報テクノロジー、ネスレ日本など6社と朝田代表理事が、プログラムの利用しやすさや参加状況などを検証した。

 20年1月に一般社団法人に移行し、本格的な普及・啓発活動を進めようとした矢先、新型コロナウイルスの感染拡大により、自治体や病院・施設向けの集合トレーニング・特別(イベント)トレーニングの開催がほぼ不可能となった。

 同年9月には成田市で介護予防教室が始まったものの、今年1月の2回目の緊急事態宣言により、集合トレーニングは休止を余儀なくされた。今はオンライン配信により参加者がバーチャルで集まる形とし、個々の自宅でトレーニングする方式に変えている。

コンテンツをデジタル化
 このように集合トレーニングから個別トレーニングへと即座に対応できたのは、設立当初からコンテンツをデジタル化していたためだ。

 プログラムは認知症の基礎講座から音楽・ボーカルトレーニング、臨床美術、脳トレ、筋力増強運動など、豊富なコンテンツをそろえ、複合プログラムで提供する形となっている。

 それを1人のインストラクターが指導するのは無理なので、当初からデジタル化して動画を作成していたのである。動画の本数は100本を超えており、今後さらに増やしていく方針だ。

 サービスの提供の仕方としては、自治体が集めて実施する場合、各教室にタブレット端末を1台配布する。そこにクラウドからプログラムを配信し、プロジェクターなどにつなげ、参加者はその動画を見つつ、インストラクターの指導を受けながらトレーニングを行う。

 個々の自宅でトレーニングする場合は、自治体が募集して登録した参加者の家庭にスタジオから配信する。ライブと復習動画配信の2つがあり、ライブは日時が設定され、その時間に接続してもらう。復習動画はライブ配信の終了後、例えば1カ月間観られるといった形に設定する。

プログラムの特徴
 MCIリングのプログラムの特徴について朝田代表理事は「多彩性、インストラクター、エビデンス」の3つを挙げる。

 多彩性は上述のようにさまざまなメニューをそろえているということ。高齢者向けのプログラムというと、脳トレだけを90分、筋トレだけを90分行うというように、単一のコンテンツを提供するのが普通だ。

 これに対しMCIリングの集合トレーニングでは、例えば最初に受け付け(10分)を済ませた後、10分ずつ3種類のエクササイズを行い、10分の休憩をはさんで10分の認知症・フレイル予防講座を実施し、その後20分の脳トレを行い、10分のクールダウンで終わる。

 つまり、同じ90分でも、多彩なコンテンツのプログラムを提供するのが他のプログラムと異なる点だ。

 しかも、コンテンツには上述のように音楽や美術などもあるうえ、エクササイズや脳トレ、講座についてもいろいろなバリエーションがあることから、それらを組み合わせることで、非常にバラエティに富んだプログラムが組めるのである。

 インストラクターについては、現場で指導する人は運動・音楽・脳トレなどの専門家ではなく、一般のボランティアである。そうした人たちが適切に指導できるよう、育成するプログラムを提供している。

 ちなみに、インストラクターが特に身につけるべき技能は「ほめるテクニック」と朝田代表は言う。それが参加者のモチベーション、インセンティブの基になるからだ。

 エビデンスについては、参加企業が提供する個々のメニューは、それなりのエビデンスを持っているということ。成田市の介護事業では、プログラム全体のエビデンスを示すことも目的となっている。

30年前から着手
 こうしたプログラムを提供しようと朝田代表理事が考え始めたのは、30年ほど前にさかのぼる。日本で初めての「もの忘れ外来」が国立精神・神経医療研究センターにできた際、担当部長だった朝田代表理事は、何をすべきか模索する中で、運動や脳トレなどに着目した。その後、そうした素材を少しずつ集め、それがMCIリングにつながっている。

 また、朝田代表理事は東京・お茶の水と茨城県取手市に認知症の専門クリニックを開設し、集団トレーニングを実施しているが、レパートリーが少ないと参加者のモチベーションが継続できないことを悟ったことから、コンテンツを画像化して動画を配信したり、スタジオと教室を結んで双方向でやり取りしたり、といった実験を繰り返してきたことが下地となっている。

朝田代表理事の集大成
 コロナ禍の現在、普及活動を進めているものの、なかなか難しい状況が続いている。ただ、以前は個人への配信プログラムに興味を持たなかった自治体も、集合トレーニングが困難な中で、配信を検討するところが増えているそうだ。

 また、デイケアを提供している医療機関は、どういうアクティビティを提供し、どうスタッフが役割を分担し、いかに参加者を喜ばせるか、ということに絶えず頭を悩ませているという。しかも医療系のデイケアは、コロナ禍でも休むわけにいかない。

 そうしたところがMCIリングのプログラムを使うようになれば、スタッフの負担が軽減されることから、普及に向けての有力分野と見込んでいる。

 現在、個人向けは自治体からの提供に限られている。しかし、自治体の事業は公平性の観点から1度しか参加できないため、終了後に有料でも配信を希望する人が出てくる可能性がある。そこで、将来的には個人を対象としたサービスも検討していく考えだ。

 MCIリングの活動は、朝田代表理事が長年にわたって実践してきた認知症予防への取り組みの集大成と言える。提供するプログラムでエビデンスが証明されれば申し分ないが、それが難しいとしても、利用者に「楽しく、継続してもらえればいい」と朝田代表理事は考えている。

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