「カイポケ」で介護事業者の経営支援 創業からM&Aまでサポート

2021年 3月 12日

エス・エム・エス

岡田氏本文用

      岡田亮一本部長

 エス・エム・エスの介護事業者向け経営支援サービス「カイポケ」を導入した事業所数が、今年1月1日時点で3万件を突破した。

 介護分野の人材不足が恒常化している中で、ICTを活用したカイポケにより、同社は介護事業者の経営・業務の効率化や働き方改革をサポートしていく。岡田亮一・介護経営支援事業本部本部長に開発の経緯や特徴、導入の効果などを聞いた。

介護事業者向け経営支援サービスの提供
 エス・エム・エスは2003年創業、「高齢社会に適した情報インフラを構築することで人々の生活の質を向上し、社会に貢献し続ける」ことをミッションに掲げ、「高齢社会×情報」を切り口にした40以上のサービスを開発・運営している。

 設立当初は、介護の人手不足解消を目指し、ケアマネジャー向け人材紹介や介護職向け求人情報などをウェブサイトで行う事業を展開していた。

 それと並行して、同社では新たな事業を模索していたところ、既存の介護保険請求ソフトがパッケージソフトのみで、費用面やサービス内容に不足点を感じている介護事業者がいたことから、06年7月、クラウド型サービスにより、訪問系・通所系介護事業者の介護保険請求をサポートするサービス「カイポケ」を開始した。

 その後、ビジネスコンセプトとサービスコンセプトを見直し、14年に経営支援サービスへと大幅なリニューアルを行い、業務効率化や人事・労務、財務・会計などの機能を付け加えている。

 例えば、業務効率化ではスケジュールの作成や職員の割り当て、タイムカード機能による労働時間の計測、給与計算といった機能や、求人情報サービスに無料で広告を出稿できるサービス、外部の施設を安く利用できる福利厚生サービスなどが用意されている。

 加えて、金融サービスも始めた。介護事業者はサービスを提供した翌月の初めに保険者に請求を行う。しかし、入金されるタイミングは2カ月後なので、サービス提供と入金の間にタイムラグが生じる。

 一方で、介護事業者のコストに占める人件費の割合は6~7割であるため、これでは資金繰りがうまくいかない。そこで、国に対して請求している介護保険の債権を同社が買い取り、すぐに現金化することで、介護事業者のキャッシュフローを大幅に改善できるようにした。

低価格のモバイル端末レンタルも
 リニューアル後も介護業界向けM&Aの仲介サービスなど、少しずつ新たな機能を付加しており、現在は40以上の機能・サービスを設けている。

カイポケのサービス図

 ちなみに、M&Aの仲介サービスに関しては、事業承継を依頼する事業者が増えている。「経営者が高齢化する一方で後継者がいないことや、介護事業の報酬水準が変わり経営に行き詰っている事業者が出てきているため」(岡田本部長)だ。

 また、その他のサービスとして「カイポケモバイル」を2018年2月から開始した。介護事業のICT化に不可欠と言える、モバイル端末の導入が進んでいないことに対応した、低価格のスマートフォンのレンタルサービスである。

 24時間365日通話かけ放題で、利用期間の縛りがなく、高速データ通信量7GB、故障・紛失時保証などをパッケージで提供している。「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」が定める、介護現場でのBYOD(私物端末の業務利用)原則禁止に対応するものでもある。

 タブレットレンタルも行っており、訪問看護や通所介護ではタブレット、訪問介護はスマホの利用を勧めている。訪問看護や通所介護などは、文字入力や写真の保存などを行うためタブレット使用が向いており、訪問介護は、作業内容の報告などで用いるため、スマートフォンが使いやすいからである。

機能・サービスの組み合わせでメリット
 利用者は多様な機能・サービスの中から選択して利用するが、岡田本部長は「組み合わせて使うことで価値が発揮できる」と指摘する。

 例えば、訪問介護では従来、職員は事務所に出社し、ホワイトボードなどに記されたスケジュールを確認し、そこから訪問して介護を行い、記録を複写紙に記入して、訪問先の家族のサインをもらって事務所に戻り、事務所では管理者がその記録を転記していた。

 これに対し、カイポケの機能・サービスを組み合わせれば、スマホでスケジュールを確認することで、利用者や他の職員の都合などで頻繁に生じるスケジュール変更にも容易に対応でき、介護記録はスマホの画面でチェックを入れるだけ、さらにそのデータは管理者に転送されるので、管理者はすぐに請求作業を行うことが可能になる。

 さらに、スマホやタブレットのレンタル料が安価であることから、トータルで利用することで、より大きなメリットを享受できるのである。

 カイポケの導入効果は、実際に導入している事業所により確認されている。

 訪問介護サービスを提供するA社では、エクセルを使用していたシフト表管理をカイポケで作成するように変更し、シフト表の情報をスマホで共有できるようにしたことで、シフト表の受け取りの手間が大幅に軽減した。

 また訪問件数が40件/月以上純増する中、介護記録を国保連の請求データに連動させることで、1日当たりの提供票などのチェック・修正・転記にかかる手間を3分の2に圧縮することができた。

 複数の通所介護事業所を運営するB社でも、複数の事業所に一斉にカイポケの導入を行った結果、1日・1 事業所当たりの記録時間が平均で0.4時間(単純合計で1事業所当たり15時間/月)減少。残業時間も1日・1事業所あたり0.2時間(同6.8時間/月)削減できた。一番効果が出た事業所では、利用者が20%増えたにもかかわらず、記録時間を従来の3分の1まで圧縮し、1日の残業時間を約2時間削減する結果となった。

 このように、カイポケの導入効果は検証済みであるが、同社が強調するのは「単なる介護ソフトではない」ということ。創業融資や指定申請、法人設立といった開業支援から、事業所経営におけるさまざまなサポート、上述のようにM&Aのサポートまでを行うからである。

タブレットのカイポケ画面

        タブレットのカイポケ画面

 また、サポートは徹底しており、介護業界の現場ではITが得意でない職員も多いので、スマホやタブレットの使い方を説明することから始めることもある。

介護サービスの品質向上と介護事業者の経営安定化への貢献へ
 サポートにはいくつかの形がある。電話での対応や動画での説明、ウェブでの会合のほか、現在はコロナ禍で実施できないが、社員による訪問、地方都市も含めた年100回以上のセミナー開催などがある。

 中でも大きなのが、年に数回、主要都市で開催していた「介護フェスタ(旧カイポケフェスタ)」である。コロナ前は、介護事業所の経営者や管理者、介護スタッフ、事務スタッフ、ケアマネジャーなど500人以上を集め、介護業界や法制度、経営に関する最新情報を紹介していた。

 現在、人が集まるセミナーは開催できないが、代わりにウェブセミナーなどを実施している。また、カイポケを利用することによるメリットの声も多数寄せられている。例えば、訪問介護ではカイポケを使うことで、事務所に寄らずに直行直帰で勤務でき、職員が集まる必要がなくなるからだ。

 現時点では、カイポケは施設系には対応していないものの、要望が寄せられているので、今後は施設系向けの機能を追加して対応していく方針である。さらに、1法人でいろいろな業態を運営するようになっているため、その他の事業形態への対応も考えている。

 岡田本部長はカイポケを進化させていくことで「ノンコア業務や残業時間の削減などにより、介護の品質向上と介護事業者の経営安定化に一層貢献していきたい」と述べている。

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