独居高齢者をセンサーで見守り コロナ禍で問い合わせが急増

2020年 11月 30日

アットシグナル
 アットシグナル(和歌山市)は独居高齢者の見守りサービス「絆-ONE」を全国で展開している。その特徴は、人感センサーと固定電話回線を使わないインターネットでのデータ転送、コールセンターを組み合わせたシステムであること。コロナ禍では、移動が制限されたことと感染を防ぐため、離れて暮らす高齢者のもとを訪れることができなくなった家族からの問い合わせが急増し、契約に結び付いているという。

シンプルなシステム
 絆-ONEは高齢者の行動を赤外線センサーで感知して、遠方の家族などにデータを送ることで安否を確認するもの。システムは至ってシンプルで、「人感センサー端末」「MIXターミナル機器」「押すだけボ

絆one

(左から)押すだけボタン端末、人感センサー端末、MIXターミナル機器

タン端末」で構成されている。高齢者宅にインターネット環境がない場合、これに「SIMルーター」が加わる。

 人感センサー端末で室内の生活反応を感知し、データはMIXターミナル機器を介してデータセンターのサーバーに蓄積される。見守りサービスを受けている高齢者の家族などは、絆-ONEのサイトにログインして、グラフにより高齢者の活動の様子を把握する。

 人感センサー端末の設置は工事が不要で、ただ置くだけだが、置く場所には少々検討を要する。基本的にはテレビの前のような、よくいる場所が適している。ただ、そうした場所で倒れた場合、倒れても左右に動いたりするので、日常動作と変わらないと判断してしまう可能性がある。

 このため、安否確認を目的とする場合は、トイレのように必ず1日に数回行く場所に、生活リズムを確認したいのなら居間に、というように、目的に応じて置く場所を決めることを勧めている。

 押すだけボタン端末には赤・緑・青の大きなボタンがあり、赤は緊急通報に、緑はあいさつ用、青は御用聞きボタンとして使われる。あいさつ用は基本的に朝起きて押すと、家族や利用者の近所の人など、登録している人に起床した旨のメールが届くようになっている。御用聞きは、マンションの管理業者や自治体が見守り以外の生活付帯サービスを行っている場合に使う。

 あいさつ用ボタンには、安否確認だけでなく、緊急用の赤ボタンを押す練習のためという意味もある。内山恒示取締役によると「普段使っていないものは、緊急時使えない」からだ。また、視力に問題があり、電話をかけるのが困難な高齢者も多いことに対応するという面もある。ボタンを押すだけで緊急事態であることが伝えられるためだ。

 SIMルーターは振動や熱に強く、エラーが発生しても自ら再起動して復活することができる高度な機能を備えている。

異常事態への対応
 利用者に異常事態が発生した場合、それを把握するのに2つの方法がある。1つは利用者自らが赤ボタンを押すケース、もう1つは24時間、あるいは利用者や家族などの要望により設定した時間帯にセンサーの反応がない時である。

 赤ボタンが押されると、24時間365日稼働しているコールセンターで異常を知らせるランプが点灯するとともに、家族にメールが届く。コールセンターではオペレーターが本人に電話をし、安否の確認をする。問題があれば119番通報する。問題がなければ、その旨を家族にメールする。

 センサー反応については、システムが毎朝8時に、長時間あるいは設定した時間帯に反応のない利用者をチェックし、そうした人がいた場合、コールセンター内でランプが点灯し、オペレーターが本人に電話をする。利用者が電話に出なければ、家族や近所の人などに、利用者宅へ行って確認してもらう。駆け付けサービスを行っていないので、同社の担当者が行くことはない。同社のスタンスとしては「道端に倒れている人を見つけたら電話をするという感覚」(内山取締役)だという。

内山取締役

内山取締役

 現在の契約件数は約1000件で、自治体が7割程度、個人やマンションの管理業者などの民間が約3割となっている。

 同社のような人感センサーを使う見守りサービス以外に、赤ボタンだけの緊急通報事業を採用している自治体も多い。ただ、赤ボタンは誤報が95%を占め、緊急通報事業では赤ボタンを押すとダイレクトに消防に通知が行くため、そのつど救急出動や確認などの対応をしなければならない。

 これに対し、同社のサービスは本人に確認するというステップが入っており、誤報の場合は消防に通知しないので、結果的に消防署の負担軽減に貢献することになっている。また、自治体の高齢者担当部署の職員にとっても、人員が限られている上に独居の高齢者が増えている中で、本当に必要な時だけ高齢者宅に行けばよくなるので、職員の疲弊を防ぐことにもつながっている。

コロナ禍で利用が拡大
 システムを導入した家族からは「コミュニケーションが増えた」との声が寄せられている。また、以前は不安だから、心配だからと毎週のように交通費をかけて実家に通っていたのが、隔週になり、負担が減ったと言う家族もいるそうだ。

 さらに、新型コロナウイルスの感染拡大により、移動が制限されたことと、感染を防ぐために家族が高齢者のもとを訪れることができなくなったことで、今夏は前年に比べ問い合わせ数が倍増し、契約に結び付いている。

 同社のサービスをメニューに加えている福利厚生サービス大手3社を利用している企業の社員は、わずかな自己負担で見守りサービスを利用できることから、コロナを機に選んだというケースもあるとのこと。福利厚生サービスに見守りサービスが採用されているのは同社だけで、その理由について、内山取締役は「『見守り』という言葉自体が浸透する前から事業を行っている老舗だから」と話している。

 今後の取り組みの1つとして、次世代機の開発がある。現状のシステムでも十分シンプルだが、設置の手間を今以上に簡略化することが狙いだ。

 タブレット端末を使い、人感センサーの代わりにタブレットのカメラ機能を使用する。ただし、カメラでの撮影は緊急時のみで、通常は撮影せず、人の動きを検知した、という結果のみをデータセンターのサーバーに送るようにする。

 撮影しないのはプライバシーへの配慮に加え、映像を送ると通信費がかさみ、料金に跳ね返るからだ。さらに、ボタンを画面に表示することで、これまで2つに分かれていたセンサーとボタン端末を1つに集約することも考えている。

 製品コンセプトはすでに固まっており、これからプロトタイプを作成し、1年半~2年後に提供を開始する計画だ。

 内山取締役によると、見守り事業で利益を出すのは難しいという。切羽詰まらなければ採用しないし、利用はそれほど長期に継続しないないからだ。さらに、自治体が重点的に採用している緊急通報事業のように1000円前後で利用できるのとは異なり、3000円前後の料金設定でないと採算が取れないため、料金が高くなることもある。

 こうしたこともあって、同社は自治体向けの新規受注をやめ、民間だけに特化することにした。業界の今後について、内山取締役は「おそらく1~2年で中途半端な会社はやめていくだろう。業界再編が始まるのではないか」と見ており、同社としてはより簡便な次世代機により事業を拡大していくことを目指している。

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