「モノが人に合わせる」新シリーズ 体型にベッドが対応

2020年 10月 5日

フランスベッド
 福祉用具レンタル最大手のフランスベッドは昨年、新たに「マルチフィットシリーズ」を立ち上げた。「人がモノに合わせるのではなくモノが人に合わせる」をコンセプトとする同シリーズと、今月(10月)から本格展開する「離床支援マルチポジションベッド」により、利用者への一層の快適性の提供と自立支援を行うとともに、介助者の負担軽減を図っていく。

福祉用具レンタルの草分け
 同社がレンタルサービスを開始したのは1983年。池田茂現社長の発案により、他社に先駆けて在宅介護向けにベッドの販売を開始したが、介護ベッド(当時は医療ベッド)を購入した家族から、わずか3カ月で不要になったため、下取りを求められたことがきっかけとなった。「それなら、医療ベッドを必要な期間だけレンタルすればいいのではないか」と池田社長は考え、国内で初めて福祉用具のレンタルサービスを開始した。

 しかし、業績は思うように伸びず、赤字が続き、レンタルサービスを開始して12年目にようやく黒字化した。赤字が続いてもやめなかったのは、池田社長が「将来的には人口が減少し、一般ベッドの需要は減少する。一方、高齢者が増えることで、福祉用具のレンタル市場は拡大する」と確信していたからだ。レンタルをした利用者がとても喜んだことを知り、社会的に意義のある事業だと感じたことも大きかった。

 黒字化以降は順調に業績が伸び、2000年に介護保険制度が導入されると収益が拡大。フランスベッドと言えば家庭用ベッドのイメージが強いが、現在は売り上げの半分以上を福祉用具のレンタルサービスが占めるまでになっている。

荒木部長(右)と大山課長

メディカル事業本部メディカル営業推進部の荒木部長(右)と大山課長

独自性のある製品を開発
 当初は外国製品を輸入してレンタルしていたが、事業が拡大していくと、昨日の面で物足りなさを感じるようになった。そこで自社開発を始め、協力工場も含め多様な製品を製造して提供することにした。車いすなどは専門メーカーから仕入れているものもあるが、特徴的なものはオリジナルな製品だ。

 例えば、車いすでは自動ブレーキが付き、利用者が体重をかけるとフットプレートが接地するものがある。これらの機能は、ブレーキをかけ忘れて立ち上がろうとしたり、フットプレートを下ろし忘れたりして転倒するケースがあることが分かったことから、その防止のために独自の発想で開発した。

 あるいは、キャスターを付けて横移動を可能にした車いすがある。これにより移乗の際の介助者の負担が減るだけでなく、利用者が1人でエレベーターに乗った時などに、他の人にスペースを空けるための横移動ができるので「利用者の心のバリアーのようなものを取り除くことができる」(メディカル事業本部の荒木弘史メディカル営業推進部長)。

 こうしたアイデアは、現場の声が反映されている。それが可能なのは同社が自社でレンタルサービスを行っているからで、現在、全国に81の拠点を設けて、サービスを提供している。製品は絶えず見直しを行っているが、それは「日本の介護用品の歴史がそれほど長くないため、介護する側も介護を受ける側もどんなものが必要か、本当には分かっていない」(フランスベッドホールディングスの原田正裕経営企画室長)からだ。いわば試行錯誤をする中で、フランスベッドはさまざまな製品を世に送りだしてきたわけだが、そうした流れの中で新たに立ち上がったのが「マルチフィットシリーズ」である。

マルチフィットシリーズ
 同シリーズには現在、ベッドと車いすがある。ベッドについては、使う人の体型や症状が異なることから、レンタル品はどうしても「万人に合うが、万人にフィットしない」(荒木部長)ところがある。「マルチフィットベッド」は、同社の技術をすべて搭載することで利用者にフィットする製品とした。

 身長に合わせてボトム(マットレスを平面で支える部分)全体の長さを調節できる「マルチフィットボトム」と、大腿長に合わせてボトムのひざ位置を調節できる「ひざ位置フィット機能」の2つで、ベッドを体型にフィットさせる。

 これまで背上げをすると前滑りするのが当たり前だったが、ひざ位置フィット機能により膝の位置を合わせることで、利用者にとっては快適な背上げが可能になる。また、前滑りしにくくなるということは、介助者が利用者の体を引き上げる労力を減らすことにつながる。

 加えて「ヘッドアップ機構」には視界を広げる効果と誤嚥リスクを軽減する効果があり、「サイドアップ機構」で体幹を保持する。背ボトムと脚ボトムの角度を自動的に一定角度以上に保つ内角保持機能を備えた「背脚連動ギャッチ機能」は、腹部の圧迫リスクを軽減。通常の介護ベッドは弧を描くように昇降するが、マルチフィットベッドは垂直に昇降するため、設置スペースが少なくて済む。

 そのほか、急な停電でもリクライニング状態をフラットの状態に戻せる「緊急対応スイッチ」や、高通気でむれを解消する「エアーブリーズ仕様」など、現時点で実現可能なすべての機能を搭載している。

 マルチフィットベッドはまた、レンタル業者にとってもメリットがある。通常、ベッドのレンタルでは、利用者の身長に合わせて大中小の3サイズを用意しておく必要があるが、マルチフィットベッドなら、1つ用意しておけばあらゆる身長の人に対応できるため、在庫を減らすことができるからだ。

 同ベッドについては、今後「介護ベッドのスタンダードにしていく」とメディカル事業本部メディカル営業推進部メディカル商品企画課の大山啓課長は述べている。

 一方、「マルチフィット車いす」は、ショルダーサポート(肩)とランバーサポート(腰)の2つのバックサポートが、利用者の背中の形に合わせて回転することで、あらゆる体型・姿勢にフィットする製品となっており、座位の崩れ防止によって、介護負担も軽減する。

マルチポジションベッド

ベッドが起き上がっていす状になることで立ち上がりをサポートする「離床支援マルチポジションベッド」

離床支援マルチポジションベッド

 マルチフィットシリーズとは別に、今秋から同社が新たに本格的に提供を開始するのが、離床支援マルチポジションベッドである。ベッドが起き上がっていす状になることで、立ち上がりをサポートするのが最大の特徴だが、それだけではなく、寝た状態から立ち上がった状態まで、4つのポジションに変形することで、利用者の快適性と自立、介助者の負担軽減を支援する。

 まず、「ベッドポジション」では、無段階背上げ・脚上げ調整でリラックスした寝姿勢を確保する。そこからワンタッチ操作で起き上がり、リラックスした姿勢の「リクライニングポジション」に移行。そこでは「サイドアップ機能」が座位を安定させる。次の足裏を床につけて座った姿勢の「シーティングポジション」では、付属の手すりで座位姿勢を安定させ、リハビリ訓練を行うことができる。さらに、ワンボタン操作により尻を持ち上げた「スタンディングポジション」で、利用者は立ち上がった状態になる。

 特筆すべきは、利用者がこの一連のポジションチェンジを、ボタン1つで自ら操作できること。これにより、ほぼ1人で立ち上がれるので、介助されることへの心理的な負担が軽減される。

 5年前に開発を始めた際のコンセプトは、入院患者のリハビリを促すことと、セラピストや介助者の労力を軽減することだった。セラピストはベッド上の患者に端坐位を取らせて立位訓練などを行うが、端坐位の姿勢までもっていくのは早期だと難しい、という声が多く寄せられたことで開発に着手した。

 それが、今年に入り、製品の部分的な提供開始と軌を一にして新型コロナウイルスの感染が拡大したことから、当初のコンセプトに加え、現在、求められている「接触しない介護」というコンセプトにも合致することが分かった。同ベッドを使うことにより、セラピストや介助者の最低限の接触で、リハビリや移乗動作・立ち上がり動作が行えるからである。

 同社ではマルチフィットシリーズにベッドと車いす以外の製品をラインアップしていくなど、新製品開発に余念がないが、荒木部長は今後の製品開発について「介護人材の不足が加速していく中で、労力を軽減すること」を重要なポイントとして挙げている。

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