〈医療と介護2040 管理者01〉の記事一覧
重症心身障害児と地域で歩む 「訪問の家」の50年②

重症心身障害児と地域で歩む 「訪問の家」の50年②

■「散歩に出ますか」への答え
髙橋 日浦さんは「文化としての社会福祉施設」ということを、しばしばおっしゃっています。とても印象深く、重要なキーワードでもあります。
 
名里 この言葉を説明するには、通所施設「朋」をつくった時のことからお話ししないといけません。
 
 先ほどお話ししたように、「朋」はもともと障害者のための作業所でした。当時の福祉制度には重度の障害児者の通所施設はなく、日浦は、重い障害がある人も、昼間通所して幅広い活動ができる場所が必要と考え、横浜市とも折衝していました。
 
 そうしたら横浜市から、そういう場所、すなわち知的障害者のための通所施設をつくったらどうですか、と打診されたのです。
 
 しかもその立地として、戦後、もとは山だった所を高級住宅地として開発した地域を提案されました。その一角が市の所有地だから、そこに通所施設を開設したらどうですかと。
 
 こちらとしてはありがたい話で、ではそうします、となります。ところが、地域住民の反対に遭うんですよ。地域全体が反対していると聞かされます。でも実は、後で聞いたら全然そうではなく、当時の自治会の役員が強硬に反対しておられました。
 
 役員は「福祉施設を建てるというが、文化施設ならいざ知らず、福祉施設はこの高級住宅地には馴染まない」という…

第5回 判定ソフトの問題点を指摘し改修を求めた

第5回 判定ソフトの問題点を指摘し改修を求めた

 介護保険制度スタートに先立ち、要介護認定のリハーサル「高齢者介護サービス体制整備支援事業」(要介護認定のモデル事業)が1996年度、97年度、98年度(平成8~10年度)と3回実施された。武蔵野市は98年度の事業で一次判定の欠陥に気づく。
 
■「中間評価項目」に指摘が反映される
 98年度(平成10年度)モデル事業終了後、武蔵野市介護保険準備室は「平成10年度高齢者介護サービス体制整備支援事業 事業報告」をA4の冊子にまとめました。
 
 このなかに「平成10年度介護保険モデル事業の問題点・改善提案」という項目を設け、問題点とその改善提案を5ページ強にわたって記載しています。
 
 これを国や都に提出しました。さらに厚生省の山崎史郎さんや三浦公嗣さんを訪ね、「調査票データと一次判定の因果関係がわからず、市町村は市民からの疑問や苦情に答えられない。コンピュータ一次判定ソフトを99年10月からの準備要介護認定までに改修すべき」などと訴えました。
 
 国民誰もが納得しうる合理性のある要介護認定システムに変更しないと、このままでは介護保険制度そのものの信頼性が損なわれる、という危機感がありました。
 
 樹形モデルによって生じるブレをなんとかしないとダメだと考え、山崎さんたちと何度か協議しました。その結果、ブレを大きくしないために、コンピュータによる一次判定ソフトに…

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重症心身障害児と地域で歩む 「訪問の家」の50年①

重症心身障害児と地域で歩む 「訪問の家」の50年①

髙橋 今回のゲストは、横浜市の社会福祉法人「訪問の家」の名里晴美理事長です。「訪問の家」は障害者向けの通所施設やグループホーム、地域活動ホーム、多機能型拠点などの事業と、高齢者向け事業、それに診療所も運営し、先駆的な実践を次々に展開してきたことで知られています。
 
 「訪問の家」は、前身から数えると誕生から50年を過ぎました。創設者である日浦美智江前理事長は、重症心身障害児者の地域生活を先駆的に支援され、名里さんはその後継者です。本日は「訪問の家」の歩みを中心に、障害ある人とともに生きることについてお話しいただきたいと思います。
 
■スタートは「訪問学級」「母親学級」
名里 社会福祉法人「訪問の家」の発端は、1972年(昭和47年)にさかのぼります。この年、横浜市立中村小学校に訪問学級が開かれ、前理事長の日浦美智江がその母親グループの担当となりました。
 
 これは重症心身障害児の学級で、当時の言葉でいう養護学校の学級版とでもいいましょうか。特殊学級というのは、障害が比較的軽い子どもが対象なので。
 
髙橋 障害が重い子どもへの教育は、かつては盲学校・聾学校・養護学校に分かれていて、養護学校には知的障害・肢体不自由・病弱の子が通っていました。障害の軽い子は小中学校では特殊学級に通っていました。
 
 養護学校への就学が義務化されたのは1979年(昭和54年)ですから、中村小の訪問学級は義務化より7年も早かったわけですね。2007年度(平成19年度)より、盲学校・聾学校・養護学校は特別支援学校に、特殊学級は特別支援学級となって現在に至ります。
 
名里 市立小学校に訪問学級を設置し、重い障害のある子どもたちが通う、っていうことを、義務化に先んじて始めました。小学校の一室なので…

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眼内内視鏡・眼内照明保持ロボットを製品化

眼内内視鏡・眼内照明保持ロボットを製品化

 九州大学・東京工業大学・順天堂大学・山口大学とリバーフィールドが共同開発した、眼内内視鏡・眼内照明保持ロボット「OQrimo(オクリモ)」が製品化に成功した。  また、リバーフィールドによる医薬品医療機器総合機構(PMDA)への一般医療機器販売の届け出が4月13日に受理された。...

(下)新型コロナを超えて、次のステージへ

(下)新型コロナを超えて、次のステージへ

■リモートが普及して思わぬメリットも
 2018同時改定で、いい方向に歯車が動き出したと思っていました。しかし2020年春…。新型コロナが流行すると感染症法の「2類相当」となり、最初のころはすべて入院隔離だったから、病院は完全な鎖国状態になってしまいました。
 
【ケース3】ある病院では、プライバシー保護のため、看護師は患者を名前でなく番号で呼ぶことになっていた。2020年、コロナが流行して面会禁止に。あるナースは夜勤のとき、高齢の患者に対して「私の声がこの人の、人生の最後の声になるかもしれない」と思った。そう思ったら番号でなんか呼べなくなって、本人の耳元で、ほんとは近づいてはいけないのだろうけど、「Cさん」と呼びかけたという。「辛くないですか、そばにいるから、大丈夫だからね」と。長い時間ではないけど、そう声をかけて、部屋を後にした。
 
 この3年間、とりわけ病院ではコロナの感染対策が至上命題になって、いろいろなことが制限されました。病棟ナースたちは大事なことは何か、気づいたのではと思います。入院という環境がもたらす弊害とか、人として生きることを奪ってしまうとか。
 
 2021年になると、リハビリスタッフがリハの様子を撮影し、その動画を在宅スタッフに送って見てもらう、といったリモートでの連携が整ってきました。カンファレンスも…

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電子診察券に再来受付機で使える機能を追加

電子診察券に再来受付機で使える機能を追加

 東京都済生会中央病院は今月からスマホアプリ「MyHospital」の電子診察券機能に再来受付機で使用できる機能を追加した。  これにより、再来受付から会計・院外薬局への処方箋データ送信までをMyHospitalで完結ができるようになった。...

Wi-Fiと見守りセンサーの動作確認を実施

Wi-Fiと見守りセンサーの動作確認を実施

 バッファローは積水化学工業の協力により、法人向けWi-Fiアクセスポイント「AirStation Proシリーズ」と、積水化学の起上検知・在床管理が可能な見守りセンサー「ANSIEL(アンシエル)」との動作確認を行った。  ANSIELのデータ通信に必要なWi-Fi環境をAirStation...

第32回 認知症でもひとり暮らしができる条件

第32回 認知症でもひとり暮らしができる条件

 この連載で2年前、新田クリニックが訪問診療している在宅患者のTさん(90代女性、独居)を紹介した。
 
 Tさんはもともと新田クリニックの外来に来ていた患者ではない。4年前、家の中で転倒して動けなくなり、大声で助けを呼んだ。近所の人が気づいて地域包括支援センターに連絡し、その依頼で訪問診療を始めた。
 
 当時は近所の植え込みを勝手に刈り取ってしまい、近隣住民とトラブルになったこともある。当時から認知症があり、ADLは落ちていたが、とりたてて治療を必要とする持病はなかった。
 
■ケアはほとんど介護だけ
 現在98歳のTさんは、認知症が進みADLも低下してきたものの健在である。ヘルパーが朝昼夕と3回入り、食事や排泄を介助している。
 
 室内を伝い歩きしてポータブルトイレを使い、買い物や調理はできないが、ヘルパーが作った食事を1人で食べる。
 
 訪問看護も入って健康管理しているが、Tさんは医療をきらって血圧を測るのも一苦労だ。採血は、これまで1回もできていない。それでもコロナ流行期に発熱することもなく、暮らしを維持している。
 
 近隣住民は次第にTさんを理解し、受け入れるようになった。外に出てきても危なくないよう、スロープを要請したのも近所の人だ。Tさんがだれかを探すように歩き回れば…

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(中)その人らしさを知る極意を教えましょう

(中)その人らしさを知る極意を教えましょう

■入院時情報提供書は有益情報の宝庫
 2018改定の前も、ケアマネジャーから病院への情報提供はされていました。当時、病院側では連携室のMSWがケアマネからの情報を受け取り、保管するわけです。スキャンして電子カルテに落とし込むとか。
 
 MSWがそうやって保存しても、医師や看護師がそれをわざわざ開いて見るのは、退院が近づいてから。入院治療中にこの情報が見られることはほとんどなかったんです。
 
 2018改定後は病院も入退院支援となったので、ケアマネからの情報を早くから重視するようになっているはずです。
 
 ケアマネが作成する入院時情報提供書の書式も、2018年度に改訂されました。これはよくできてて、「3.本人/家族の意向について」には本人の趣味とか生活歴などを入力します。
 
 “教師をしていて定年時は校長だった、やがて認知症が出て、家の中に閉じこもり、自分が自分でなくなる怒りや焦りを奥さんにぶつけることもある。地域の人たちは立派な校長先生という意識で見守っている。デイサービスも初めは拒否傾向があったが、デイのケアスタッフから先生と呼ばれ、最近は穏やかに過ごされている”という具合です。
 
 そんなことが書かれていると、誤嚥性肺炎で救急搬送されてきて、病室では大声出して暴れ、点滴も抜いてしまうような目の前の患者が、実はこういう人生を生きてきた人だとわかります。
 
 ケアマネはこういう思いに寄り添っている、ということも読み取れるわけですね。そしてこれは、やがてACPに繋がっていくと思います。
 
 ただ、ケアマネジャーも記入することを躊躇する部分があります。とりわけ、何を願っているか…

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