「がんゲノム医療」を推進 岡山大

2021年 3月 1日

 岡山大学は患者のゲノム情報に基づいたがん医療である「がんゲノム医療」を推進している。同大学病院は中国四国地域で唯一の「がんゲノム医療中核拠点病院」として、34の医療施設とがんゲノム医療ネットワークを構築し、治療や研究開発、人材育成などに取り組んでいる。

岡山大学病院

          岡山大学病院

 がんは遺伝的、あるいはウイルス感染などの後天的な細胞のゲノム変異を原因として、そこで発生した細胞が無秩序に増殖し、他の細胞や臓器に転移する性質を獲得することで発症する。その発生パターンは患者一人一人で異なり、細胞ごとに多様であることから、同じがんの患者でも、原因となっている遺伝子が異なり、治療も異なる。

 ゲノム医療はがん発生の原因となる「遺伝子を特定=ゲノム情報の取得」により、効果的な治療法や薬剤などを選ぶことを可能にし、一人一人に適した個別化医療を提供するものだ。

 

 

ゲノム医療総合推進センター

 ゲノム医療は多職種チームによって行われているため、医療従事者向けの高度な教育などの人材育成が必要である。岡山大では日本医療研究開発機構(AMED)が実施する「ゲノム創薬基盤推進研究事業」のゲノム医療従事者の育成プログラム開発を主導し、人材育成を行っている。

 ゲノム医療チームには、担当医や病理医、臨床腫瘍医(腫瘍部位別)、看護師、臨床検査技師、薬剤師、バイオインフォマティシャン、認定遺伝カウンセラー、リサーチコーディネータなど、通常の臨床医療に関わる医療従事者に加え、遺伝子分析・解析を専門とする専門家などが参加する。

 このプログラムでは、職種によって経験や知識が異なることから、職種ごとのテキストや講習を開催し、ゲノム医療を支える高度な専門人材を育成している。

 

遠西大輔臨床応用部長

 遠西大輔臨床応用部長

 さらに岡山大では、これら人材育成に加え、積極的に研究開発活動を行っている。昨年12月から同大学病院ゲノム医療総合推進センター臨床応用部の遠西大輔部長が研究代表を務める、「国内完結型個別化医療に向けたマルチプレックス遺伝子パネル検査研究」を開始。国内外のバイオテクノロジー企業と、新たながん遺伝子パネル検査の開発を進めている。

 また各種研究プロジェクトを運用し、ハイスループット・マルチオミクス解析ラボの整備を進めており、1000症例規模の解析を実施している。これらのプロジェクトと関連した企業との共同研究も行っており、今後も企業などとの連携を進めるため、スタートアップ・ベンチャー企業や非医療産業界を含め、多種多様な企業などと連携していく方針だ。

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 座席のシートベルトを着用した状態で、上半身を座席に固定する。特に、身体が不自由な人や病気・ケガなどの理由により座位を保つことが困難で、補助が必要な人を対象としている。
 
 「ベストタイプ」と「ベルトタイプ」の2種類あり、体の状態に合わせて利用する。ベストタイプはベストのように着用し、前面(胸側)にあるバックルを締める。ベルトを座席の後ろで交差させた後、前面で面ファスナーを留める。腕を通すことが難しい場合には、左右別々にして、片方ずつ着用することもできる。

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