花王パーソナルヘルスケア研究所・生物科学研究所・解析科学研究所は、ヒトの手指が生来持つ感染症に対するバリア機能(手指バリア機能)には、手汗から分泌される乳酸のほか、手指のpHと温度が重要であることを明らかにした。
また、分子動力学法(MDシミュレーション)による解析を行ない、乳酸が効果的に菌に作用するメカニズムを解明した。今後、この知見を、手指バリア機能を簡便に予測できるシステムの開発のほか、手指バリア機能を向上・維持する製品の開発にも応用する予定。
手指の表面は菌やウイルスと直接接触する場所であるため、その性状は機能発現に大きく寄与することが予想される。そこで、20~60歳の男女106人の手指の性状を測定し、手指バリア機能との関係性を調べた。
手指の性状として乳酸量と指紋の深さ、pH、角層水分量、温度、発汗速度を測定し、手指に大腸菌を塗布し、1分後の菌の相対減少量を「抗菌活性」として手指バリア機能を測定した。
この結果、手指バリア機能は乳酸量と温度と正の相関をし、pHと負の相関をすることが分かり、ヒトが生来持つ手指バリア機能には、乳酸のほか、手指のpHと温度が重要であることが明らかとなった。
さらに、MDシミュレーションによる解析により、温度が高くなると、乳酸分子が菌の細胞膜を透過しやすくなることで効果的に作用することも分かった。