障害者雇用・福祉の連携へ報告書 厚労省検討会

2021年 6月 7日

 厚生労働省の「障害者雇用・福祉施策の連携強化に関する検討会」は6月4日、報告書案を承認した。障害者の就労支援をめぐり、雇用施策と福祉施策の2つの制度が縦割りになっていることから生じる課題や、「制度の谷間」から十分に対応できていない状況に対し、具体的な検討の方向性をまとめた。

障害者雇用・福祉連携

検討会ではリモート開催により報告書案を議論し承認した

 報告書では①障害者のニーズの把握と就労能力や適性の評価のあり方②障害者就労を支える人材の育成・確保③障害者の就労支援体系のあり方――の3つの課題に関して方向性を示した。

 障害者のニーズの把握と就労能力や適性の評価のあり方では、将来的には福祉・雇用それぞれのサービスなどを選択・決定する前の段階で、「共通の枠組み」によるアセスメント(障害者のニーズの把握と就労能力や適性の評価)を実施することが望ましいとした。

 アセスメントの実施にあたっては、障害者本人との面接や関係機関などからの情報収集に加え、標準的なツールを活用すること、アセスメントの実施主体が自ら提供するサービスなどに障害者を誘導することがないよう、第三者的な立場の者がアセスメントを実施し、アセスメントの質を担保するため、人材の育成、確保についても併せて検討する。

 障害者就労を支える人材の育成・確保については、雇用と福祉の基本的な知識などを分野横断的に付与する基礎的な研修を確立すること、専門人材の高度化に向けた階層的な研修制度を創設すること、専門人材の社会的認知度の向上や、社会的・経済的地位の向上などにより専門人材の確保を図るとした。

 基礎的研修に関しては、障害者就業・生活支援センターの就業支援担当者、就労系障害福祉サービスのうち、就労移行支援事業の就労支援員・就労定着支援事業の就労定着支援員は受講を必須とし、就労継続支援A型・B型事業所の支援員を含むそれ以外のすべての支援員については、将来的に受講必須を検討すべきなどの方針が示された。

 障害者の就労支援体系のあり方では、短時間雇用から段階的に働く時間を増やしていく場合や、就労中の一時的な不調の受け皿として、企業などで就労しつつ就労継続支援事業を利用することを進めていく。

 障害者就業・生活支援センターと地域の関係機関との連携については、同センターは基幹型の機能として、地域の支援ネットワークの強化・充実を図ることや、同センターが持つ連携拠点としての機能と地域障害者職業センターが持つ高い専門性とを相互補完的に持ち寄るなどの連携を進めていくことを求めている。

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特例介護の新類型を提案 介護保険部会🆕

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 「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築等」は、10月に開催された第126回部会で提案された、「特例介護サービス」の新たな類型案について、具体的に提案された。
 
 現行の特例介護サービスは、全国を対象地域とする「基準該当サービス」と厚労大臣が定める地域を対象とする「離島等相当サービス」である。事業者は指定でなく登録、人員配置基準は指定サービスより緩和されている(離島等相当サービスでは人員配置基準の規定はない)。報酬も、介護報酬を基準に市町村が設定する。これらは居宅サービスに適用される。

有料は届出から登録へ 望ましいあり方検討会🆕

 第7回有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会が10月31日に開催され、とりまとめ案について議論した。
 
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 ●中重度の要介護者(要介護3以上)や医療ケアを必要とする要介護者、認知症の人などを入居対象とする有料については、行政の関与により入居者保護を強化するため、登録制を導入。
 
 ●登録制は、公平性の観点から、要件に該当する既存の有料にも適用される。既存の有料が新制度に移行する際は一定の経過措置を設ける。
 
 ●参入後も事業運営の質の維持が求められるため、更新制や更新拒否の仕組みもつくる。行政処分を受けた運営事業者は一定期間、有料の開設が制限される。
 
 ●こうした有料については、高齢者の尊厳の保障やサービスの質の確保の観点から、職員体制や運営体制に関する一定の基準を法令で儲ける。

ケアマネ資格要件など議論 介護保険部会🆕

 第127回社会保障審議会介護保険部会が10月27日に開かれ、「介護人材確保と職場環境改善・生産性向上、経営改善支援等」「地域包括ケアシステムの深化(相談支援の在り方)」「持続可能性の確保」などが議論された。
 
 「地域包括ケアシステムの深化(相談支援の在り方)」では、ケアマネジャーの資格取得要件や業務の在り方について事務局から提案された。
 
 資格要件については、参入促進のため「受験対象である国家資格の範囲拡充」を提案。具体的には診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、救急救命士、公認心理師が挙げられる。これら5資格の業務などは以下の通り。

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 10月9日、第126回社会保障審議会介護保険部会が開かれ、「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築等」「地域包括ケアシステムの深化(相談支援の在り方)」などが議論された。
 
 「人口減少…に応じたサービス提供体制の構築等」の論点は①地域の類型の考え方、②地域の実情に応じたサービス提供体制の維持のための仕組み、③地域の実情に応じた包括的な評価の仕組み、④介護サービスを事業として実施する仕組み、⑤介護事業者の連携強化、⑥地域の実情に応じた既存施設の有効活用、⑦調整交付金の在り方、と多岐にわたる。
 
 以下、①~⑤について事務局からの提案をまとめる。
 
 ①については、サービス需要が減少する「中山間・人口減少地域」ではサービス提供の維持・確保を前提に新たな柔軟化のための枠組みを設ける必要がある。その対象は「特別地域加算」の対象地域が基本となるが、拡充も考えられる。また、市町村の中でもエリアによって人口減少の進み方は異なるため、市町村内の一部エリアも対象とできないか。
 
 「中山間・人口減少地域」は、介護保険(支援)計画の策定時に、都道府県が市町村の意向を確認して決定する。「大都市部」「一般市等」では、現行制度の枠組みを活用したサービス基盤の維持・確保が求められる。
 
 委員からは、地域類型を定める根拠となる高齢者人口について、「その場合の高齢者とは何歳以上か、定義を定める必要がある」との指摘が相次いだ。
 
 ②は「中山間・人口減少地域」のサービス提供体制の維持・確保のために、特例介護サービスの枠組みを拡張する。新たな類型は下図の赤い部分だ。

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 事務局は①について、地域の状況に応じたサービス提供体制や支援体制の構築が重要、との前提で、地域の性格によって課題を以下のように位置づけた。
 
 中山間・人口減少地域…サービス基盤の維持・確保
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 そのうえで中山間・人口減少地域では、前回の部会で議論されたサービス提供体制の確保のための方策について、介護保険事業計画に反映することが重要、との方向性を提示する。
 
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