厚生労働省の「障害者雇用・福祉施策の連携強化に関する検討会」は6月4日、報告書案を承認した。障害者の就労支援をめぐり、雇用施策と福祉施策の2つの制度が縦割りになっていることから生じる課題や、「制度の谷間」から十分に対応できていない状況に対し、具体的な検討の方向性をまとめた。
検討会ではリモート開催により報告書案を議論し承認した
報告書では①障害者のニーズの把握と就労能力や適性の評価のあり方②障害者就労を支える人材の育成・確保③障害者の就労支援体系のあり方――の3つの課題に関して方向性を示した。
障害者のニーズの把握と就労能力や適性の評価のあり方では、将来的には福祉・雇用それぞれのサービスなどを選択・決定する前の段階で、「共通の枠組み」によるアセスメント(障害者のニーズの把握と就労能力や適性の評価)を実施することが望ましいとした。
アセスメントの実施にあたっては、障害者本人との面接や関係機関などからの情報収集に加え、標準的なツールを活用すること、アセスメントの実施主体が自ら提供するサービスなどに障害者を誘導することがないよう、第三者的な立場の者がアセスメントを実施し、アセスメントの質を担保するため、人材の育成、確保についても併せて検討する。
障害者就労を支える人材の育成・確保については、雇用と福祉の基本的な知識などを分野横断的に付与する基礎的な研修を確立すること、専門人材の高度化に向けた階層的な研修制度を創設すること、専門人材の社会的認知度の向上や、社会的・経済的地位の向上などにより専門人材の確保を図るとした。
基礎的研修に関しては、障害者就業・生活支援センターの就業支援担当者、就労系障害福祉サービスのうち、就労移行支援事業の就労支援員・就労定着支援事業の就労定着支援員は受講を必須とし、就労継続支援A型・B型事業所の支援員を含むそれ以外のすべての支援員については、将来的に受講必須を検討すべきなどの方針が示された。
障害者の就労支援体系のあり方では、短時間雇用から段階的に働く時間を増やしていく場合や、就労中の一時的な不調の受け皿として、企業などで就労しつつ就労継続支援事業を利用することを進めていく。
障害者就業・生活支援センターと地域の関係機関との連携については、同センターは基幹型の機能として、地域の支援ネットワークの強化・充実を図ることや、同センターが持つ連携拠点としての機能と地域障害者職業センターが持つ高い専門性とを相互補完的に持ち寄るなどの連携を進めていくことを求めている。