厚生労働省と文部科学省は3月17日、18歳未満で、病気や障害、精神的問題などを抱える家族の世話をしている「ヤングケアラー」の支援に向けたプロジェクトチーム(PT)を立ち上げた=写真。
支援を必要としているヤングケアラーを早期に発見し、必要な支援につなげることを目指し、各地方公共団体の福祉部局・介護部局・医療部局・教育部局が連携した取り組みを推進するための方策を検討する。
今回を含め4回会合を開催し、5月に報告書をまとめる予定。第1回会合では成蹊大学の澁谷智子教授と日本ケアラー連盟の田中悠美子理事からヒアリングを行った。
澁谷教授は、埼玉県が県内のすべての高校2年生5万5000人を対象に、2020年夏に実施した実施したヤングケアラー実態調査で、25人に1人がヤングケアラーとして分析されたことを紹介した。
1日あたりのケア時間と学校生活への影響(平日)を調べたところ、最も学校生活への影響が大きい4時間以上6時間未満の生徒は、「勉強の時間が十分に取れない」「成績が落ちた」自分の時間が取れない」と感じ、睡眠不足を抱えていた。「友人と遊ぶことができない」「アルバイトができない」「部活ができない」と感じ、ストレスも高かった。
澁谷教授は「この層の生徒は、何とか学校生活との両立を図ろうと努力し、同世代の子たちと同じような生活をしようともがいていると言える」と分析した。これが6時間以上になると、「他の子と同じような生活をすることをあきらめて、がんばれなくなったり、意欲を持てなくなったりする」と警鐘を鳴らした。
なお、ヤングケアラーと分析された生徒の4割強を占める、1時間未満の生徒でも「ケアについて話せる人がいなくて孤独を感じている」「ストレスを感じている」との回答が1割以上あった。澁谷教授は「まずはていねいに話を聞く仕組みをつくることが必要」と指摘した。
田中理事はヤングケアラー支援のための具体的な施策として、「認定・アセスメントを行い支援する」「学びの機会とその結果を改善する」「支援ニーズに対応するサービスの開発とそれへのアクセスを保障する」「自立して社会生活を送れるよう支援する」の4つの柱を提言した。
認定・アセスメントでは、ヤングケアラーを発見する可能性の高い場所として学校を挙げ、教員や養護教諭、スクールソーシャルワーカー(SSW)などがヤングケアラーについて学ぶ機会を設けることや、相談の窓口となる担当教員を設けること、自治体はヤングケアラーについて通告する窓口を設置することを必要とした。
学びの機会については、ヤングケアラー担当教員を配置し、彼らが中心となって学校でのヤングケアラー支援を計画・実行することや、SSWをすべての学校へ常勤配置することなどを求めた。
支援ニーズに対応するサービスでは、各都道府県に市区町村の相談窓口と連携したり支援したりする相談支援の窓口を設けることや、ヤングケアラーのケア負担を軽減するため、ホームヘルプサービスの利用限度額の緩和などが必要とした。
自立に関しては、子供・若者育成支援推進大綱にヤングケアラーを位置づけるとともに、進学を支援する給付型奨学金など資金面での支援を要望した。