ヤングケアラー支援へPT発足 厚労省・文科省

2021年 3月 18日

ヤングケアラーPT

 厚生労働省と文部科学省は3月17日、18歳未満で、病気や障害、精神的問題などを抱える家族の世話をしている「ヤングケアラー」の支援に向けたプロジェクトチーム(PT)を立ち上げた=写真

 支援を必要としているヤングケアラーを早期に発見し、必要な支援につなげることを目指し、各地方公共団体の福祉部局・介護部局・医療部局・教育部局が連携した取り組みを推進するための方策を検討する。

 今回を含め4回会合を開催し、5月に報告書をまとめる予定。第1回会合では成蹊大学の澁谷智子教授と日本ケアラー連盟の田中悠美子理事からヒアリングを行った。

 澁谷教授は、埼玉県が県内のすべての高校2年生5万5000人を対象に、2020年夏に実施した実施したヤングケアラー実態調査で、25人に1人がヤングケアラーとして分析されたことを紹介した。

 1日あたりのケア時間と学校生活への影響(平日)を調べたところ、最も学校生活への影響が大きい4時間以上6時間未満の生徒は、「勉強の時間が十分に取れない」「成績が落ちた」自分の時間が取れない」と感じ、睡眠不足を抱えていた。「友人と遊ぶことができない」「アルバイトができない」「部活ができない」と感じ、ストレスも高かった。

 澁谷教授は「この層の生徒は、何とか学校生活との両立を図ろうと努力し、同世代の子たちと同じような生活をしようともがいていると言える」と分析した。これが6時間以上になると、「他の子と同じような生活をすることをあきらめて、がんばれなくなったり、意欲を持てなくなったりする」と警鐘を鳴らした。

 なお、ヤングケアラーと分析された生徒の4割強を占める、1時間未満の生徒でも「ケアについて話せる人がいなくて孤独を感じている」「ストレスを感じている」との回答が1割以上あった。澁谷教授は「まずはていねいに話を聞く仕組みをつくることが必要」と指摘した。

 田中理事はヤングケアラー支援のための具体的な施策として、「認定・アセスメントを行い支援する」「学びの機会とその結果を改善する」「支援ニーズに対応するサービスの開発とそれへのアクセスを保障する」「自立して社会生活を送れるよう支援する」の4つの柱を提言した。

 認定・アセスメントでは、ヤングケアラーを発見する可能性の高い場所として学校を挙げ、教員や養護教諭、スクールソーシャルワーカー(SSW)などがヤングケアラーについて学ぶ機会を設けることや、相談の窓口となる担当教員を設けること、自治体はヤングケアラーについて通告する窓口を設置することを必要とした。

 学びの機会については、ヤングケアラー担当教員を配置し、彼らが中心となって学校でのヤングケアラー支援を計画・実行することや、SSWをすべての学校へ常勤配置することなどを求めた。

 支援ニーズに対応するサービスでは、各都道府県に市区町村の相談窓口と連携したり支援したりする相談支援の窓口を設けることや、ヤングケアラーのケア負担を軽減するため、ホームヘルプサービスの利用限度額の緩和などが必要とした。

 自立に関しては、子供・若者育成支援推進大綱にヤングケアラーを位置づけるとともに、進学を支援する給付型奨学金など資金面での支援を要望した。

このカテゴリーの最新の記事

このカテゴリはメンバーだけが閲覧できます。このカテゴリを表示するには、年会費(年間購読料) もしくは 月会費(月間購読料)を購入してサインアップしてください。

障害者雇用数が110万人に 23年度実態調査

 厚生労働省が昨年6月に実施した「令和5年度障害者雇用実態調査」によると、従業員規模5人以上の事業所に雇用されている障害者数は110 万7000 人で、前回調査に比べて25万6000人増加(2018年度は85万1000 人)し、全体的に障害者雇用は着実に進展していることが分かった。  内訳は身体障害者が52万6,000 人(同42万3000 人)、 知的障害者が27万5000人 (同18万9000人)、精神障害者が21万5000人(同20万人)、発達障害者が9万1000人(同3万9000 人)で、いずれも前回調査を上回った。...

新型コロナ治療薬「ゾコーバ錠」の薬価を継続

 中央社会保険医療協議会(厚生労働相の諮問機関)は3月22日、新型コロナ治療薬「ゾコーバ錠」について、緊急承認時の薬価を継続することを承認した。  塩野義製薬が製造・販売するゾコーバ錠は2022年11月に緊急承認され、23年3月に1錠7407.40円で薬価収載された。今月5日に通常承認されたことから、改めて薬価算定組織で検討していた。...

24年度診療報酬改定案を了承し答申 中医協

 中央社会保険医療協議会(厚生労働相の諮問機関)は2月14日、2024年度診療報酬改定案を了承し、武見敬三厚労相に答申した。  今回の改定では、医療従事者の賃上げに向け、初診料や再診料、入院基本料などを引き上げた。  初診料については、現行の288点から291点へ3点、再診料は現行の73点から75点へ2点引き上げる。  また、看護師や薬剤師など医師以外の医療従事者の賃金の改善を行う場合は初診料で6点、再診料では2点を評価する「外来・在宅ベースアップ評価料」が新設された。...

急性期入院料見直しで公益委員が裁定 中医協

 中央社会保険医療協議会(厚生労働相の諮問機関)は1月31日、来年度の診療報酬改定に向けた個別項目の議論を行い、急性期一般入院料1における平均在院日数の基準と重症度、医療・看護必要度の評価項目の見直しに関して、支払側委員と診療側委員の間で意見が真っ向から対立したため、公益委員が仲裁案を示し了承された。...

基本報酬、訪問介護は引き下げ 給付費分科会

 1月22日、第239回社会保障審議会介護給付費分科会が開催され、令和6年度介護報酬改定に向けて(介護報酬改定案について)議論し、改定案を了承した。  全体の改定率は+1.59%で、うち0.98%は介護職員の処遇改善に充てられる。施行時期は訪問介護・訪問リハビリテーション・居宅療養管理指導・通所リハビリテーションの4項目は診療報酬改定に合わせて6月1日。これら以外は4月1日となる。...

1週間無料でお試し購読ができます  詳しくはここをクリック

新着記事は1カ月無料で公開

有料記事は990円(税込)で1カ月読み放題

*1年間は1万1000円(同)

〈新着情報〉〈政策・審議会・統計〉〈業界の動き〉は無料

【アーカイブ】テーマ特集/対談・インタビュー

コラム一覧

【アーカイブ】現場ルポ/医療介護ビジネス新時代

アクセスランキング(4月15-21日)

  • 1位
  • 2位
  • 3位 90% 90%
メディカ出版 医療と介護Next バックナンバーのご案内

公式SNS