厚生労働省は3月12日に開催したリモートで開催した労働政策審議会障害者雇用分科会=写真=で、障害者雇用率の算定に関する特例措置が雇用に与える影響調査の中間報告を行った。
会合では使用者代表・障害者代表の委員から、特例措置の継続を求める意見が出されていた。
特例措置は雇い入れから3年以内、あるいは精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内の精神障害者を、週20時間以上30時間未満の短時間で雇用する場合、雇用率算定を0.5ポイントから1ポイントにするもの。
20時間以上30時間未満は、他の労働時間区分で雇用されば場合に比べ、定着率が高くなる傾向があるとの調査研究を基に設定された。
今回の報告は、障害者雇用状況調査の二次分析と事業所と特例措置対象者へのアンケート調査の集計・分析を基に実施した。
障害者雇用状況調査では、特例措置対象者を雇用する企業は精神障害者を雇用する企業全体の2割を占め、特例措置対象者を雇用していない企業に比べ、1000人以上の規模の割合が高いことが分かった。
また、精神障害のある労働者を雇用する企業全体では、製造業、医療・福祉、卸売・小売業の順で雇用件数が多いのに対し、特例措置適用者を雇用する企業は、医療・福祉、卸売・小売業、製造業の順で多いことが分かった。製造業はフルタイム労働者のみを雇用する企業の割合が高いという背景から、こうした違いが生じると推測される。
アンケート調査では、特例措置対象者を雇用する事業所の4割程度が、雇い入れなどに当たり「特例措置制度を考慮した」と回答した。
特例措置制度活用のメリット・デメリットでは「雇用率達成のしやすさ」「定着の見通しの立てやすさ」「無理のない労働時間」でメリットを感じる事業所が半数を超え、「雇用率達成のしやすさ」では7割を超えた。
一方、雇用されている特例措置対象者は、職務と労働時間については「とても満足」「やや満足」の合計がどちらも7割を超えているが、賃金は「とても満足」「やや満足」の合計が6割弱で、「とても満足」は低かった。
就業継続については「今の職場で働き続けたい」が6割を超える一方、「今のところわからない」との回答が3割近くあり、将来に対する見通しのつけにくさがうかがえる。
また、フルタイムへの移行については、移行を望む人が2割強、移行は難しいと考える人が3割強、短時間勤務を続けることを望む人が4分の1ほどで、労働時間を伸ばすことの難しさがうかがえた。
特例措置は2018年4月から23年3月31日までの暫定措置として実施しており、暫定措置終了後の取り扱いの検討に資するため、短時間雇用の状況や職場の定着状況などを把握するための調査を19年から行っている。