厚生労働省は2月26日、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)障害者部会=写真=に、省内の検討チームが取りまとめた2021年度の障害福祉サービス等報酬改定を提示した。
最初に、10年任期の終了により1月末で退任した駒村康平部会長(慶応大学教授)に替わり、菊池馨実・早稲田大学教授を新たに部会長に選任した。
今回改定は、昨年末に大臣折衝で決定したプラス0.56%の改定率に応じて各項目を決定した。主な内容としては、グループホームにおける重度化・高齢化への対応、自立生活援助の整備の促進、質の高い相談支援を提供するための報酬体系や就労継続支援A・B型の基本報酬などの見直し、医療的ケア児者に対する支援の充実、障害福祉現場の業務効率化のためのICT活用などに重点を置いている。
例えば、グループホームにおける重度化・高齢化への対応では、重度障害者の受け入れ体制を整備するため、障害支援区分4以上の強度行動障害を持つ人を算定対象に加えたほか、看護職員を配置するグループホームに対する加算、強度行動障害を持つ人が地域移行のためにグループホームで体験利用を行う場合の加算などを新設した。
また、重度障害者の受け入れのインセンティブが働くよう、メリハリのある報酬体系に見直し、日中サービス支援型共同生活援助サービス費(I)について、区分4以上の基本報酬を引き上げる一方、区分3については大幅に引き下げた。
ただ、この見直しに関しては、櫻木章司・日本精神科病院協会常務理事が「精神障害の場合は区分1~3が77.7%なので、精神科病院を退院しグループホームを利用すると減額になる。精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に、水を差すことにならないか」と懸念を示し、改定による影響の調査を求めた。
障害福祉現場の業務効率化のためのICT活用では、必ずしも対面で提供する必要のない支援について、テレビ電話装置などを使った対応を可能にするとして、対象と成り得る委員会や会議、加算などが例示された。
この点については、菊本圭一・日本相談支援専門員協会代表理事と石野富志三郎・全日本ろうあ連盟理事長が「質の低いサービスを提供しているところが、全部リモートやICTでいいとならないか」「音声中心の考え方」などと疑問を呈し、一定程度の目安を示すことや、聴覚障害者がオンライン会議を行う場合の、コミュニケーション支援に関する加算の必要性を指摘した。
なお、江澤和彦・日本医師会常任理事から「今回の議論は報酬改定前に行うべきだったのではないか」との疑問が出されたが、菊池部会長は「診療報酬改定と介護報酬改定は、それぞれ中医協と介護給付費分科会で議論するが、これらは社会保険の仕組みであるのに対して、総合支援法のサービスは公費のサービスであり、制度の建て付けの違いがあるので難しい」と述べ、理解を求めた。