新部会長に菊池・早大教授を選任 障害者部会

2021年 3月 1日

 厚生労働省は2月26日、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)障害者部会=写真=に、省内の検討チームが取りまとめた2021年度の障害福祉サービス等報酬改定を提示した。

 最初に、10年任期の終了により1月末で退任した駒村康平部会長(慶応大学教授)に替わり、菊池馨実・早稲田大学教授を新たに部会長に選任した。

障害者部会

 今回改定は、昨年末に大臣折衝で決定したプラス0.56%の改定率に応じて各項目を決定した。主な内容としては、グループホームにおける重度化・高齢化への対応、自立生活援助の整備の促進、質の高い相談支援を提供するための報酬体系や就労継続支援A・B型の基本報酬などの見直し、医療的ケア児者に対する支援の充実、障害福祉現場の業務効率化のためのICT活用などに重点を置いている。

 例えば、グループホームにおける重度化・高齢化への対応では、重度障害者の受け入れ体制を整備するため、障害支援区分4以上の強度行動障害を持つ人を算定対象に加えたほか、看護職員を配置するグループホームに対する加算、強度行動障害を持つ人が地域移行のためにグループホームで体験利用を行う場合の加算などを新設した。

 また、重度障害者の受け入れのインセンティブが働くよう、メリハリのある報酬体系に見直し、日中サービス支援型共同生活援助サービス費(I)について、区分4以上の基本報酬を引き上げる一方、区分3については大幅に引き下げた。

 ただ、この見直しに関しては、櫻木章司・日本精神科病院協会常務理事が「精神障害の場合は区分1~3が77.7%なので、精神科病院を退院しグループホームを利用すると減額になる。精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に、水を差すことにならないか」と懸念を示し、改定による影響の調査を求めた。

 障害福祉現場の業務効率化のためのICT活用では、必ずしも対面で提供する必要のない支援について、テレビ電話装置などを使った対応を可能にするとして、対象と成り得る委員会や会議、加算などが例示された。

 この点については、菊本圭一・日本相談支援専門員協会代表理事と石野富志三郎・全日本ろうあ連盟理事長が「質の低いサービスを提供しているところが、全部リモートやICTでいいとならないか」「音声中心の考え方」などと疑問を呈し、一定程度の目安を示すことや、聴覚障害者がオンライン会議を行う場合の、コミュニケーション支援に関する加算の必要性を指摘した。

 なお、江澤和彦・日本医師会常任理事から「今回の議論は報酬改定前に行うべきだったのではないか」との疑問が出されたが、菊池部会長は「診療報酬改定と介護報酬改定は、それぞれ中医協と介護給付費分科会で議論するが、これらは社会保険の仕組みであるのに対して、総合支援法のサービスは公費のサービスであり、制度の建て付けの違いがあるので難しい」と述べ、理解を求めた。

このカテゴリーの最新の記事

このカテゴリはメンバーだけが閲覧できます。このカテゴリを表示するには、年会費(年間購読料) もしくは 月会費(月間購読料)を購入してサインアップしてください。

今年上半期の介護事業者の倒産件数が過去最多に

 東京商工リサーチの調査によると、今年上半期(1-6月)の介護事業者の倒産件数は81件(前年同期比50.0%増)で、介護保険法が施行された2000年以降、最多件数を更新した。これまでの最多はコロナ禍の2020年の58件だった。
 
 業種別では、訪問介護が40件(同42.8%増)で最も多く、デイサービスなどの通所・短期入所が25件(同38.8%増)、有料老人ホームが9件(同125.0%増)で、主要3業種そろって上半期での最多を更新した。
 
 倒産の理由としては、売上不振が64件(構成比79.0%)と約8割を占めた。利用者の獲得が進まず…

ユニット型特養の建設費が過去最高 福祉医療機構

福祉・医療機関に融資を行っている福祉医療機構の調べによると、2023年度のユニット型特別養護老人ホームの建設費は平米単価34万2000円で、調査を開始した2008年度以降で最高額を記録した。 定員1人当たり建設費は1508万円となり前年度に比べ下がったが、高止まりの状態が続いている。 病院の平米単価は 41万1000円、定員1人当たり建設費は 2387万2000円で、いずれも前年度から上昇した。 保育所と認定こども園の平米単価は 42万8000円、定員1人当たり建設費は 367万9000...

2040年度に介護職員数が約57万人不足 厚労省推計

 厚生労働省の推計によると、65歳以上の高齢者数がピークを迎える2040年度に必要な職員数は約272万人で、現状のままでは約57万人不足することが分かった。26年度に必要な職員数は約240万人で同約25万人不足する。
 
22年度の介護職員数は約215万人。40年度に必要な職員数を確保するには…

訪問看護ステーション数が過去最多に 全訪看

 全国訪問看護事業協会がまとめた4月1日現在の全国の訪問看護ステーションの稼働数は1万7329カ所で、前年に比べ1632カ所(12.3%)増加して過去最高となった。
 
 2023年度中に新規に開設された事業所数は2437カ所で、同469カ所(23.8%)増えた。訪問看護ステーション数は10年度以降、右肩上がりで増加しており…

新たな介護予防サービスを3区で開始 横浜市

 横浜市はフレイルを予防・改善し、多くの高齢者が自立した生活を続けられることを目的に6月から新たな介護予防サービスを南・栄・泉の3区で開始した。
 
 健診データ・診療データ・要介護認定情報またはフレイルチェックシートを活用し、フレイルなどの高齢者を把握する。身体機能や栄養状態、口腔機能の低下が懸念される人に介護予防サービス利用の案内を送付。個人の状態に合わせて…

1週間無料でお試し購読ができます  詳しくはここをクリック

新着記事は1カ月無料で公開

有料記事は990円(税込)で1カ月読み放題

*1年間は1万1000円(同)

〈新着情報〉〈政策・審議会・統計〉〈業界の動き〉は無料

【アーカイブ】テーマ特集/対談・インタビュー

コラム一覧

【アーカイブ】現場ルポ/医療介護ビジネス新時代

アクセスランキング(8月26-9月1日)

  • 1位
  • 2位
  • 3位 90% 90%
メディカ出版 医療と介護Next バックナンバーのご案内

公式SNS