厚生労働省は2月15日に開催した「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムに係る検討会」に=写真、基本的な考え方や支援体制のあり方などを盛り込んだ報告書の素案を提示した。
構成員からは、素案の内容は「パラダイムシフトになる」と評価する見方が示される一方、「全体的に評論家的」「非自発的入院や家族同意など従前からの課題の記載が明確でない」などの指摘もなされた。
素案は「はじめに」「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムについて」「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムを構成する要素」の3つで構成されている。
「はじめに」では、まず2017年2月の「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」報告書で、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの理念が示され、それ以降、都道府県などで障害福祉計画・医療計画に基づき、同システムの構築の推進を図ってきたとの経緯を記した。
その一方で、同システムを構築する上での実施主体や機関の役割の明確化などの課題が明らかとなったことから、検討会を設置して、今後の方向性や取り組みを報告書としてとりまとめたと、検討会と報告書の位置付けを説明した。
そして、厚労省は今後この報告書に基づき、諸制度の見直しや2024年度からの時期医療計画・障害福祉計画への反映、財政的方策なども含め具体的取り組みを検討し、実現を図るべきと結んだ。
「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムについて」では、精神障害の有無や程度にかかわらず、誰もが安心して自分らしく暮らすことができるよう、重層的な連携による支援体制を構築することが適当であること、同システムは「地域共生社会」を実現するための「システム」「仕組み」であり、システムの考え方や実践は地域共生社会の実現に向かっていく上で欠かせないものである、との基本的な考え方を示した。
また、このシステムは精神障害のある人たちや、地域住民の「地域生活」を基本とするもので、日常生活圏域を基本として、市町村などの基礎自治体を基盤として進める必要があること、システムの基本方針が地域住民、地域の専門職、関係者に共有されることが重要であるとした。
支援体制の考え方と構築に関しては、市町村が主体となり、保健所や精神保健福祉センターとの連携を図りつつ、精神科医療機関、その他の医療機関、地域援助事業者、居住支援法人など居住支援関係者、ピアサポーター、意思決定を支援する者などとの重層的な連携による支援体制を構築することを求めた。
3つめの「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムを構成する要素」では「地域精神保健及び障害福祉」「地域精神医療」「住まいの確保と居住支援の充実、居住支援関係者との連携」「社会参加の推進」「当事者・ピアサポーター」「家族の関わり」「人材育成」「普及啓発の推進」の8つの要素について詳述した。
このうち、例えば「地域精神保健及び障害福祉」では、市町村での地域精神保健の充実が重要で、特に地域精神保健に関する業務の制度上の位置付けについて検討をする必要があることや、精神障害を持つ人たちが「本人の困りごと」に対して、必要な時に適切な支援を受けることができるよう、精神保健医療福祉に関わる人の連携強化を図る必要性などを指摘している。
素案に対しては座長を除く21人の構成員から多様な意見が述べられた。厚労省ではそれらの意見を反映した案を3月4日の次期会合で提示し、承認を得る方針だ。