厚生労働省の「自然に健康になれる持続可能な食環境づくりの推進に向けた検討会」は2月5日、第1回会合をオンラインで開催した=写真。
「健康寿命延伸プラン」「骨太の方針209」「成長戦略フォローアップ2020」の三つの政府方針に基づき、産学官連携の下、優先的に取り組むべき栄養課題や目標の設定・評価のあり方などを検討する。
特に、国内で非感染症疾患の食事因子で最大の課題である食塩の過剰摂取を防ぐための減塩対策を中心に、議論が進められることになる。
この日の会合では、最初に武見ゆかり・女子栄養大学大学院研究科長を座長に選出した。次に、事務局から食環境を取り巻く環境や検討の方向性、主な論点が示された。
方向性としては、減塩の推進などの健康の保持増進につながる食品を事業者が提供することで、消費者がそうした食品を利用しやすくすること、持続可能な開発目標(SDGs)の達成にも資するものとして「東京栄養サミット 2021」などで、こうした取り組みを国内外に広く発信していくことが提案された。
主な論点としては、優先的に取り組むべき栄養課題、事業者の取り組み、消費者の健康への関心度の程度に関わらず、普段の食事で健康の保持増進などに配慮された食品を利用するための方策、取り組みの成果を評価するための方策が挙げられた。
検討会の構成員からの質問や意見では、減塩に関するものが大勢を占めた。特に関心を集めたのが、日本人の成人1日当たりの食塩摂取量の平均値と各国の食塩摂取量である。
日本人の食塩摂取量は1995年の13.9gから減少してきたが、ここ数年は10g程度で横ばいになっており、目標値である8gに達していない。
また、各国の食塩摂取量を見ると、米国・英国・カナダ・オーストラリアは6~9gでいずれも日本より少なく、食生活が似ていると考えられる韓国でも7.3gと、日本の目標値より少ないことが示された。
これらの点について、厚労省は「要因は不明」としたが、土橋卓也・日本高血圧学会減塩・栄養委員会副委員長は「昨年10月まで減塩の活動をしていたが、ある程度まで下がると、個人の努力では無理。食環境の整備が必要」との意見を述べた。
また、木下紀之・ファミリーマート商品マーケティング本部デリカ食品部部長は、2018年から減塩に取り組み、年間100t分の減塩ができているが、無関心の人はむしろ減塩商品を避ける傾向にあることから、ほとんどの商品で減塩表示せずに「こっそり減塩」を行っていることを紹介した。
一方で、土橋副委員長は、減塩すると高齢者は食べられなくなって低栄養になることを指摘し、全国消費者団体連絡会の廣田浩子氏は、減塩によりコストがかかって小規模事業者に負担になることや、賞味期限に影響して食品ロスになる可能性もあるとして、幅広い視点での提言や議論などを求めた。
なお、韓国の食塩摂取量が少ないことについては、菅原千遥・エブリー取締役執行役員が「日本に比べスパイスの摂取量が多い」ことを指摘し、日本でも教育の場でスパイスやハーブの使い方を教えていくことの必要性があるとした。
今後は3、4月にそれぞれ1回ずつ会合を開催し、5~6月ごろに開催する第4回会合で報告書案を議論する予定だ。