東京商工リサーチが10月8日に発表した老人福祉・介護事業の倒産状況によると、今年1-9月の倒産件数は前年同期比10.5%増の94件で、介護保険法が施行された2000年以降、1-9月で最多だった昨年同期の85件を上回り、最多を更新した。
持続化給付金や雇用調整助成金などに加え、在宅介護サービス事業者への助成金などの追加支援もあり、新型コロナ関連の破綻は3件にとどまった。ただ、無計画や未熟な経営を主因とする「放漫経営」による倒産が前年同期比112.5%増の17件と倍増。新型コロナ感染拡大前から深刻な経営不振に陥っていた事業者に、コロナ禍が重くのしかかる格好となった。
業種別では、「三密」になりやすいデイサービスなどの通所・短期入所介護事業が同25.0%増の30件、訪問介護事業は同6.9%増の46件。いずれも小・零細事業者が大半を占め、人手不足による人件費上昇が負担となる、構造的な問題を抱えた事業者の淘汰も目立つ。
地区別では、関東が26件(前年同期24件)で最も多く、次いで、近畿が24件(前年同期と同数)、中部が15件(同11件)。以下、九州が10件(同7件)、北海道(同7件)・東北(同4件)・中国(前年同期同数)が各5件、四国3件(前年同期ゼロ)、北陸1件(同3件)の順となっている。
なお、1-8月の老人福祉・介護事業の休廃業・解散は、同19.0%増の313件に達した。昨年同期の263件を上回り、このペースで推移すると、倒産と休廃業・解散による市場撤退が、初めて年間600件台になりそうだ。
国や金融機関などの新型コロナ支援で何とか踏みとどまり、介護事業を続ける小・零細事業者は多い。だが、これらの支援策は一時的な緩和に過ぎず、足元では倒産に至らないまでも、事業をやめる休廃業・解散が急増している。新型コロナで先行きが見通せず、事業継続を断念したケースが多いという。
レポートでは、今後支援策で延命しながら、過剰債務から抜け出せない事業者の倒産増加が懸念されるとしている。