日本認知症学会が8月14日に公表した、新型コロナウイルスの感染拡大が認知症の医療や介護に与えた影響に関する調査の結果、認知症の人が受診や介護サービスの利用を控える中で、少なからぬ人で症状の悪化が認められたことが分かった。
調査は5月25日から約2週間、同学会の専門医1586人を対象に実施し、46都道府県から357件の回答を得た。
その結果、認知症の人の症状悪化について「少数認める」が32%で、「多く認める」の8%と合わせ、40%の専門医が症状の悪化を認めていた。悪化した症状は、認知機能の悪化が47%、BPSD(行動・心理症状)の悪化が46%、合併症の悪化が34%だった。
受診については、「やや減少している」が 60%で、「著しく減少している」の22%と合わせると、受診の回数が減少したとの回答は82%にのぼった。また、介護サービス利用全般については、「やや減少している」が48%、「著しく減少している」が16%で、減少したとの回答は合計64%となり、受診と同様に、介護サービス利用の減少が認められた。ちなみに、訪問系サービスの「減少あり」が50%だったのに対して、通所系サービスの「減少あり」は69%となっている。
各種サービスの利用低下と、認知症の人の症状が悪化したことの関係については「このアンケートから結論付けることはできない」としつつも、新型コロナ感染症の拡がりで、さまざまな制約が生じ始めて約2カ月しか経過していなかったにもかかわらず、症状の悪化を認めた専門医がかなりの数にのぼったことが明らかになった。
具体的には、うつ症状や施設での家族面会が中止になったことによる不安定、デイなどの活動がなくなったことでの中核症状の進行、外出制限による活動量やADLの低下などが見られたという。