厚生労働省の調査によると、2023年度の介護施設の職員らによる高齢者への虐待は1123件(前年度比31.2%増)で3年連続増加し、過去最多となった。同省は12月7日、高齢者施設などの関係団体に対し、虐待防止策を徹底するよう要請した。
虐待の種別(複数回答、以下同)では「身体的虐待」(51.3%)が最も多く、「心理的虐待」(24.3%)、「介護等放棄」(22.3%)、「経済的虐待」(18.2%)と続き、性的虐待も2.7%あった。
施設の種別では特別養護老人ホーム(31.3%)が最多、次いで有料老人ホーム(28.0%)、グループホーム(13.9%)、介護老人保健施設(10.2%)の順だった。
虐待の発生要因としては「職員の虐待や権利擁護、身体拘束に関する知識・意識の不足」(77.2%)、「職員のストレス・感情コントロール」(67.9%)、「職員の倫理観・理念の欠如」(66.8%)、「職員の性格や資質の問題」(66.7%)、「職員の高齢者介護や認知症ケア等に関する知識・技術不足」(63.6%)となっている。
虐待の事実が認められた施設・事業所のうち、26.4%が過去に何らかの指導などを受けており、過去にも虐待事例が発生していたケースが19.1%あった。
厚労省は自治体向けのマニュアルの改定などにより再発防止に取り組む方針だが、職員のストレス・感情コントロール、性格や資質の問題といった虐待の発生要因、虐待が再発している施設が2割近くあることなどを見ると、抜本的な対策を講じない限り再発防止は難しそうだ。