情報二次利用など議論 第115回介護保険部会

2024年 12月 11日

 12月10日、第115回社会保障審議会介護保険部会が開かれ、「医療等情報の二次利用に係る現状と今後の対応方針について」「要介護認定の認定審査期間について」「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会の中間整理について」などが議論された。

 現在、医療DXが推進され、「全国医療情報プラットフォーム」の構築や電子カルテ導入、電子カルテ情報の標準化などが掲げられている。

 得られた情報については「医療介護の公的データベースの利活用を促進するとともに、研究者、企業等が質の高いデータを安全かつ効率的に利活用できる基盤を構築する」(骨太の方針2024)など、実用化に向けた議論が各所で行われている。

 医療・介護関係のデータベースは、現行ではNDB・介護DB・DPCDB・障害福祉DB・予防接種DB…ジャンル別にと独立している。これらをクラウド上の「情報連携基盤」に集約し、①匿名化および仮名化でデータ提供、②データ利用手続きの一元化、③利活用可能なデータの可視化、の実現を目指している。

 研究者や企業などがこれにアクセスし、データを安全かつ効率的に利用・解析できる基盤となる。

 現在の仕組みでは、医療情報と介護情報は独立していて、高血圧や糖尿病といった疾病と介護度の関係は明確でないが、情報連携されればこれらが解析されて介護の質向上にもつながると期待される。

 データベース化される情報は現行法では「匿名化」であるのに対し、新たに構築されるデータベースでは「仮名化」となる。その違いは下図の通りだが、委員からは「生年月日を日付まで掲載するのは個人の特定につながりやすい」と指摘された。

115回介護保険部会01

 この点について、事務局(厚生労働省医政局)は「必要に応じて日を入れる場合もある」と説明した。

 別の委員は「診療報酬・介護報酬は、家族・所得・資源の情報が欠けた限られた情報。LIFEはこれらを含んでおり、情報連携によってケアのあり方も変わるだろう。仮名化情報を活用し、医療・介護・障害者の生活につながるアウトリーチを期待する」と述べた。

 セキュリティへの配慮や国民への詳細でわかりやすい説明、成果のフォローアップを対応することを前提に、部会では方向性を了承した。

 要介護認定の認定審査期間は、申請から認定まで原則30日と介護保険法で定められている。ところが今年3月に公表された資料では、2018年度以降、平均値はすべて30日を上回っている(下図)。

115回介護保険部会02

 委員からは「主治医意見書のやりとりが郵送のため時間がかかる」「意見書の内容を見直すべき」などが指摘され、介護情報基盤の活用などが確認された。介護情報基盤が整備されれば、これまで紙を使ってやりとりされていた情報が電子化され、業務効率化や職員の負担軽減につながる。

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2割負担は先送り 介護保険部会が「意見」🆕

 第133回社会保障審議会介護保険部会が12月25日に開かれ、「介護保険制度の見直しに関する意見」が確定した。
 
 議論が続いた「一定以上所得」の判断基準については、第10期介護保険事業計画(2027~29年度)の開始前までに結論を得ることとなった。
 
 これは利用者負担が2割となる基準で、現行制度では年金収入+その他の合計所得が年280万円以上340万円未満である(単身世帯の場合)。340万円以上は「現役並み所得」とされ、3割負担だ。
 
 介護保険制度の持続可能性確保のためにその基準を拡大し、2割・3割負担となる層を広げるかどうか。
 
 具体的には、「一定以上所得(2割負担)」の下限を260万円~230万円の範囲で引き下げる案が示され、長く議論されてきたが、決着には至らなかった。「現役並み所得」の判断基準は「引き続き検討を行う」と、期限も示されなかった。
 
 そのほか、軽度者への生活援助サービスを給付から切り離して総合事業に移行する案も結論は出ず、「引き続き包括的に検討する」となった。

制度見直しの議論続く 介護保険部会🆕

 第132回社会保障審議会介護保険部会が12月22日に開かれ、前回に続き「介護保険制度の見直しに関する意見(案)」などが議論された。
 
 今回提示された案では、「一定以上所得の判断基準」について、これまで同様、年金収入+その他の合計所得を「年260万円~230万円の範囲」とした。まだ具体的な方向は見えない。委員の中には「2割負担の対象を拡大すべきでない」との意見も根強い。
 
 「拡大すべきでない」論者の意見は、
 
 ・医療ではOTC類似薬への新たな負担など、高齢者の負担増が確実。介護でも負担増は避けるべき
 
 ・負担増から利用控えが起こると、子世代にしわ寄せがくる。介護離職が増えるのでは
 
 ・現役世代の負担軽減は重要だが、サービスを使えなくなった親を子が援助すれば結局子の負担は増える
 
 などがある。持続可能性を高めるには被保険者の範囲や公費負担も見直すべき、との意見もあった。

2割負担、ケアマネジメントの在り方は 部会

 第131回社会保障審議会介護保険部会が12月15日に開かれ、「介護保険制度の見直しに関する意見(案)」などが議論された。
 
 「介護保険制度の見直しに関する意見」は2022年12月に“第1弾”が公表されている。このとき結論が出されなかった、〈「一定以上所得」「現役並み所得」の判断基準〉〈補足給付の在り方〉〈ケアマネジメントに関する給付の在り方〉〈軽度者への生活援助サービスに関する給付の在り方〉などについて、これまで部会で議論が続けられた。
 
 これらは「次期計画に向けて得ることが適当」「第10期計画の開始までに出すのが適当」「引き続き検討」とされた。次期計画とは現在の第9期(2024-26年度)、第10期は27-29年度である。
 
 「一定以上所得の判断基準」は「次期計画に向けて」だったが、まだ決着していない。2割負担の拡大、すなわち適用される所得の引き下げにつながることから、反対意見が根強かった。現行制度では、2割負担となる所得基準は年280万円以上だ。これをどこまで引き下げるか。年260万円~230万円の範囲が提案されている。
 
 引き下げ幅が大きいほど、2割負担となる人は増える。ただ引き下げと同時に「配慮措置」も提案されている。①新たに負担増となる場合、増加の上限を月額7000円とする、②預貯金等が一定額以下の人は申請により1割負担に戻す、の2つだ。

訪問介護の倒産止まらず 報酬引き下げなど響く

 東京商工リサーチの調査によると、訪問介護事業者の2025年の倒産(負債1000万円以上)が11月末までに85件に達し、これまで最多だった23年67件、24年81件をすでに超え、3年連続で最多を更新した。  人手不足や24年度の介護報酬改定で訪問介護の基本報酬が引き下げられたことに加え、人件費やガソリン代、運営コストの上昇が要因と見込まれる。  25年の訪問介護事業者の倒産は11月末までに85件(前年81件)で、3年連続で年間最多を更新した。...

2割負担対象も預貯金に応じ1割の案 部会

 第130回社会保障審議会介護保険部会が12月1日に開かれ、「持続可能性の確保」「論点ごとの議論の状況」などが議論された。
 
 今回、「持続可能性の確保」は
 
 ●「一定以上所得」「現役並み所得」の判断基準
 ●補足給付に関する給付の在り方
 ●ケアマネジメントに関する給付の在り方
 
 の3つの論点に絞って議論された。
 
 「一定以上所得」「現役並み所得」の「一定以上」とは、介護保険サービス利用時の自己負担を2割とする所得層で、「現役並み」とは自己負担3割の所得層だ。簡単にいえば所得の多い人は自己負担も多く、という応能負担の考え方に基づく施策である。現行の「一定以上所得」「現役並み所得」の基準は以下の通り。

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