包括ケア型の高齢者住宅・施設などが76万戸不足

2024年 12月 13日

 タムラプランニングアンドオペレーティングは「自治体別高齢者住宅・施設等の需給予測データ2024年度版」を発行した。

 47都道府県と政令指定都市(20市)・中核市(62市)・首都圏(109市)関西圏(73市)の全市、東京23区がとりまとめた介護保険事業支援計画と介護保険事業計画から、要介護者向け高齢者住宅・施設など(包括ケア居室)を供給量として把握し、この地域に住む要介護3以上の認定者数を需要量として、供給と需要の差に着目して推計した。

 包括ケア居室とは、居住と介護を一体的に提供する特養や介護付有料老人ホーム、特定施設の指定を受けたサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、グループホームなどの「施設系・居住系サービス」に、在宅で看取りを行う際に必要と考えられる定期巡回、夜間対応型などの地域密着型の居宅サービスを追加したもの。

 24 年度版では第9期介護保険事業(支援)計画の施設・居住系サービスの整備計画値と第8期計画の整備実績・達成状況をまとめた。また、6年前(第7期~第8期)と比較し、高齢者住宅・施設などの不足量が増えた自治体ランキングを作成した。

 それによると、第3期から第8期のいずれも施設・居住系サービスの計画値が未達で、要介護者増加にもかかわらず計画値は毎期減少していた。

 建築費の上昇、介護業界の人手不足、地価の高騰など理由はさまざまだが、要介護者が必要とする施設・居住系サービスが計画通り提供されていない自治体では、行き場を失った要介護者が毎期発生していることが想定される。

 介護保険料の算定は、この整備量(計画量)を基に算出されるので、毎期の未整備量は保険料を徴収されたにもかかわらず必要とされた施設・居住系サービス量が確保されず、施設サービスを受けられない事態になっていることを表している。

 一方で、「特養の入所待機者数などが改善しているため、積極的な整備誘導は行わない」という自治体も地方部を中心に増えている。

 24年の包括ケア型の高齢者住宅・施設などの供給は76万戸不足するが、その穴埋めになるのが住宅型有料・サ高住である。

 ただ、76万戸からすべての住宅型有料・サ高住の供給量を差し引いても、依然として全国で17 万戸が不足している。また、包括ケア型の高齢者住宅・施設、住宅型有料・サ高住には空室が存在し、要介護2以下の入居者も含まれるため、実際の不足量は17万戸を超えていると考えられる。

 しかも、第9期計画や過去の実績値とその伸び率から将来推計すると、全国と首都圏の不足量はさらに拡大していくことが予測される。

 6年前と比較し、高齢者住宅・施設の不足量が増えた自治体ランキング1位は大阪府で、不足量が2万5000戸増加した。大阪府では給付費抑制の方針の下、介護施設の開設規制が継続されてきたことが要因と考えられる。

 こうしたことから、首都圏や関西圏では既存の住宅型有料・サ高住の特定施設への転換や介護付有料などの増設が急務になっていると結論付けている。

このカテゴリーの最新の記事

このカテゴリはメンバーだけが閲覧できます。このカテゴリを表示するには、年会費(年間購読料) もしくは 月会費(月間購読料)を購入してサインアップしてください。

情報二次利用など議論 第115回介護保険部会

 12月10日、第115回社会保障審議会介護保険部会が開かれ、「医療等情報の二次利用に係る現状と今後の対応方針について」「要介護認定の認定審査期間について」「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会の中間整理について」などが議論された。
 
 現在、医療DXが推進され、「全国医療情報プラットフォーム」の構築や電子カルテ導入、電子カルテ情報の標準化などが掲げられている。得られた情報については「医療介護の公的データベースの利活用を促進するとともに、研究者、企業等が質の高いデータを安全かつ効率的に利活用できる基盤を構築する」(骨太の方針2024)など、実用化に向けた議論が各所で行われている。
 
 医療・介護関係のデータベース、現行ではNDB・介護DB・DPCDB・障害福祉DB・予防接種DB…ジャンル別にと独立している。これらをクラウド上の…

介護などの賃上げに1892億円 厚労省補正予算案

 総額8454億円(うち一般会計8414億円)となる厚生労働省の今年度の補正予算案が11月29日に閣議決定された。  医療・介護・障害福祉分野の賃上げの支援や医師偏在是正などに向けた対策の推進として2861億円を計上。このうち医療・介護・障害福祉分野の生産性向上・職場環境改善などによる賃上げなどの支援として1892億円を盛り込んだ。  持続的・構造的賃上げに向けた支援には313億円を振り分け、このうち最低賃金の引き上げに対応する中小企業・小規模事業者向け生産性向上支援に297億円を計上した。...

訪問介護事業者の倒産が10月で年間最多上回る

 東京商工リサーチによると、介護事業者(老人福祉・介護事業)の倒産が1-10月で145件発生し、これまで年間最多だった2022年の143件を上回り、2カ月残して過去最多を記録した。  業種別では、訪問介護72件で23年の67件を抜いて過去最多となった。ヘルパー不足や燃料代などの運営コスト上昇に加え、24年の介護報酬マイナス改定の影響が出ている可能性がある。  訪問介護以外では、通所・短期入所が48件、有料老人ホームが11件、その他が14件だった。...

23年度の介護保険費用の総額は11兆5139億円

 厚生労働省によると、介護給付費と自己負担額を合わせた2023年度の介護保険費用の総額は11兆5139億円で、前年度に比べ約3227(2.9%)増え過去最多となった。  介護サービス費は11兆2146億円で、同3066億円(2.8%)増、介護予防サービス費は2993億円で同161億円(5.7%)増えた。  受給者数は介護サービスが566万6500人で同7万4900人(1.3%)の増加、介護予防サービスは124万4600人で同5万9900人(5.4%)増えている。...

高齢者数が過去最多、高齢化率は200カ国中最高に

 総務省がまとめた65歳以上の高齢者人口推計によると、「敬老の日」の9月15日時点の高齢者数は3625万人で過去最多となった。総人口に占める割合は29.3%で過去最高となっている。  総人口が前年に比べ59万人減少しているのに対し、65歳以上人口は2万人増加した。この結果、総人口に占める割合は前年に比べ0.2ポイント増加した。  総人口に占める65歳以上人口の割合の推移をみると、1950年(4.9%)以降、一貫して上昇しており、1985年に10%、2005年に20%を超えていた。...

1週間無料でお試し購読ができます  詳しくはここをクリック

新着記事は1カ月無料で公開

有料記事は990円(税込)で1カ月読み放題

*1年間は1万1000円(同)

〈新着情報〉〈政策・審議会・統計〉〈業界の動き〉は無料

【アーカイブ】テーマ特集/対談・インタビュー

コラム一覧

【アーカイブ】現場ルポ/医療介護ビジネス新時代

アクセスランキング(12月9-15日)

  • 1位
  • 2位
  • 3位 90% 90%
メディカ出版 医療と介護Next バックナンバーのご案内

公式SNS