介護職員のさらなる処遇改善を 給付費分科会🆕

2023年 9月 11日

 介護報酬改定に向けた議論を行っている社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)介護給付費分科会は9月8日、国が示した介護人材の確保と介護現場の生産性向上に関する論点をめぐり、委員が意見を述べた。

 介護人材確保には介護職員の処遇改善が不可欠だが、改善が進んでいるものの、昨年度の調査では、全産業平均に比べまだ6万8000円の差がある。このため、中堅職員を中心に他産業に転職してしまうことが別の調査で明らかとなっている。

 委員からは処遇改善加算の仕組みの簡素化や基本報酬の引き上げ、インフレへの対応として介護報酬改定の中間年に物価スライドを導入することを求めるなど、多様な要望が提案された。

 ただ、処遇改善を図ることは介護保険料の引き上げにつながる可能性がある。これについては、介護サービスは使った分だけ保険料が上がる仕組みであることを、国民にしっかり理解してもらう必要があるという意見もあった。

 介護現場の生産性向上に関しては、介護テクノロジーや介護助手の活用が論点として示された。

 介護ロボットやICTなどテクノロジーの導入自体には賛成の声が多かったものの、これにより夜間の人員配置基準を緩和することに反対する考えや、小規模の施設では導入が難しいため導入支援策を求める意見があった。

 「生産性向上」という文言に抵抗があるとの声がある一方、この言葉は誤解を招きやすいとして「業務改善」という文言を付加する提案をし、今回の資料でそれが反映されていることを指摘する発言もあった。

 さらに、生産性向上のアウトカム評価に当たっては「業務の改善や効率化により生み出した時間を直接的な介護ケア業務に当て、介護サービスの質の向上にもつなげていく」という介護サービスにおける生産性向上の考え方により見直すことの必要性を求める意見もあった。

 外国人介護人材の人員配置基準の取り扱いでは、EPA介護区福祉士・候補者と技能実習生は就労開始から6カ月を経過した時点で人員配置基準に参入されるが、これを就労開始直後から参入することが論点として示された。

 賛成の考えが表明さえる一方、EPAなどを特別扱いすることに慎重な声もあった。

 また、受け入れを支援する監理団体のあり方や、介護人材の確保が国際的な課題になっている中で、日本は技能習得後の外国人介護人材のキャリアや永住資格に対する視点が欠けており、これでは国際的な人材確保競争に負けるおそれがあるといった課題が指摘された。

 このほか、人員配置基準に関して自治体が設けているローカルルールの取り扱い、介護人材の確保や効率化のため経営の協働化・大規模化をいかに進めていくか、などの論点をめぐり議論が交わされた。

このカテゴリーの最新の記事

このカテゴリはメンバーだけが閲覧できます。このカテゴリを表示するには、年会費(年間購読料) もしくは 月会費(月間購読料)を購入してサインアップしてください。

今年上半期の介護事業者の倒産件数が過去最多に

 東京商工リサーチの調査によると、今年上半期(1-6月)の介護事業者の倒産件数は81件(前年同期比50.0%増)で、介護保険法が施行された2000年以降、最多件数を更新した。これまでの最多はコロナ禍の2020年の58件だった。
 
 業種別では、訪問介護が40件(同42.8%増)で最も多く、デイサービスなどの通所・短期入所が25件(同38.8%増)、有料老人ホームが9件(同125.0%増)で、主要3業種そろって上半期での最多を更新した。
 
 倒産の理由としては、売上不振が64件(構成比79.0%)と約8割を占めた。利用者の獲得が進まず…

ユニット型特養の建設費が過去最高 福祉医療機構

福祉・医療機関に融資を行っている福祉医療機構の調べによると、2023年度のユニット型特別養護老人ホームの建設費は平米単価34万2000円で、調査を開始した2008年度以降で最高額を記録した。 定員1人当たり建設費は1508万円となり前年度に比べ下がったが、高止まりの状態が続いている。 病院の平米単価は 41万1000円、定員1人当たり建設費は 2387万2000円で、いずれも前年度から上昇した。 保育所と認定こども園の平米単価は 42万8000円、定員1人当たり建設費は 367万9000...

2040年度に介護職員数が約57万人不足 厚労省推計

 厚生労働省の推計によると、65歳以上の高齢者数がピークを迎える2040年度に必要な職員数は約272万人で、現状のままでは約57万人不足することが分かった。26年度に必要な職員数は約240万人で同約25万人不足する。
 
22年度の介護職員数は約215万人。40年度に必要な職員数を確保するには…

訪問看護ステーション数が過去最多に 全訪看

 全国訪問看護事業協会がまとめた4月1日現在の全国の訪問看護ステーションの稼働数は1万7329カ所で、前年に比べ1632カ所(12.3%)増加して過去最高となった。
 
 2023年度中に新規に開設された事業所数は2437カ所で、同469カ所(23.8%)増えた。訪問看護ステーション数は10年度以降、右肩上がりで増加しており…

新たな介護予防サービスを3区で開始 横浜市

 横浜市はフレイルを予防・改善し、多くの高齢者が自立した生活を続けられることを目的に6月から新たな介護予防サービスを南・栄・泉の3区で開始した。
 
 健診データ・診療データ・要介護認定情報またはフレイルチェックシートを活用し、フレイルなどの高齢者を把握する。身体機能や栄養状態、口腔機能の低下が懸念される人に介護予防サービス利用の案内を送付。個人の状態に合わせて…

1週間無料でお試し購読ができます  詳しくはここをクリック

新着記事は1カ月無料で公開

有料記事は990円(税込)で1カ月読み放題

*1年間は1万1000円(同)

〈新着情報〉〈政策・審議会・統計〉〈業界の動き〉は無料

【アーカイブ】テーマ特集/対談・インタビュー

コラム一覧

【アーカイブ】現場ルポ/医療介護ビジネス新時代

アクセスランキング(8月26-9月1日)

  • 1位
  • 2位
  • 3位 90% 90%
メディカ出版 医療と介護Next バックナンバーのご案内

公式SNS