介護報酬改定に向けた議論を行っている社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)介護給付費分科会は9月8日、国が示した介護人材の確保と介護現場の生産性向上に関する論点をめぐり、委員が意見を述べた。
介護人材確保には介護職員の処遇改善が不可欠だが、改善が進んでいるものの、昨年度の調査では、全産業平均に比べまだ6万8000円の差がある。このため、中堅職員を中心に他産業に転職してしまうことが別の調査で明らかとなっている。
委員からは処遇改善加算の仕組みの簡素化や基本報酬の引き上げ、インフレへの対応として介護報酬改定の中間年に物価スライドを導入することを求めるなど、多様な要望が提案された。
ただ、処遇改善を図ることは介護保険料の引き上げにつながる可能性がある。これについては、介護サービスは使った分だけ保険料が上がる仕組みであることを、国民にしっかり理解してもらう必要があるという意見もあった。
介護現場の生産性向上に関しては、介護テクノロジーや介護助手の活用が論点として示された。
介護ロボットやICTなどテクノロジーの導入自体には賛成の声が多かったものの、これにより夜間の人員配置基準を緩和することに反対する考えや、小規模の施設では導入が難しいため導入支援策を求める意見があった。
「生産性向上」という文言に抵抗があるとの声がある一方、この言葉は誤解を招きやすいとして「業務改善」という文言を付加する提案をし、今回の資料でそれが反映されていることを指摘する発言もあった。
さらに、生産性向上のアウトカム評価に当たっては「業務の改善や効率化により生み出した時間を直接的な介護ケア業務に当て、介護サービスの質の向上にもつなげていく」という介護サービスにおける生産性向上の考え方により見直すことの必要性を求める意見もあった。
外国人介護人材の人員配置基準の取り扱いでは、EPA介護区福祉士・候補者と技能実習生は就労開始から6カ月を経過した時点で人員配置基準に参入されるが、これを就労開始直後から参入することが論点として示された。
賛成の考えが表明さえる一方、EPAなどを特別扱いすることに慎重な声もあった。
また、受け入れを支援する監理団体のあり方や、介護人材の確保が国際的な課題になっている中で、日本は技能習得後の外国人介護人材のキャリアや永住資格に対する視点が欠けており、これでは国際的な人材確保競争に負けるおそれがあるといった課題が指摘された。
このほか、人員配置基準に関して自治体が設けているローカルルールの取り扱い、介護人材の確保や効率化のため経営の協働化・大規模化をいかに進めていくか、などの論点をめぐり議論が交わされた。