財政制度審議会はこのほど財政制度の基本的考え方に関する建議を取りまとめた。子ども・高齢化については、少子化対策で新たな財政需要が生じる中で、診療報酬や介護報酬の引き上げに慎重な議論を求める考え方が示された。
少子化対策のための財源は、将来世代へ負担を先送りするのではなく、社会全体で安定的にさせていく必要があると指摘。企業を含め社会・経済の参加者全員が負担能力に応じて全世代型で負担することで、子育て世帯が子育て期間全体として手取り増になるようにすることが重要とした。
医療に関しては、この3年間、国費により病床確保料、ワクチン接種支援など主なものだけで21兆円程度の支援が行われてきたことに対し、確実に正常化するとともに、新たな危機に備える観点からも効果などについて十分な検証を行うべきと指摘した。
また、病院の財政状況を見ると、2020年度から21年度にかけて、純資産が事業費用の5%相当の規模で増加していることから、賃金・物価高への対応は、こうした資産の活用を求めた。
ちなみに、日本医師会・日本歯科医師会・日本薬剤師会は、物価高騰対策や医療・介護従事者の賃上げのため、さらなる政府の財政措置を要望する合同声明を取りまとめて公表している。
後期高齢者医療制度では、一定所得以上の後期高齢者に2割負担が導入されたが、原則2割負担とすることを前向きに検討することが必要とした。
地域医療構想に関して、「急性期」について、看護配置に依存した診療報酬体系から、実績を反映した体系に転換していくべきとし、その中で、10対1を要件とする急性期入院料は廃止を検討すべきと提言した。
さらに、リフィル処方箋の普及促進に向け、薬剤師がリフィル処方箋への切り替えを処方医に提案することを評価する仕組みや、薬剤師の判断でリフィルに切り替えることを認めることの検討を求めた。
介護については、ICT機器の活用を通じた業務負担の軽減やデータに基づいた介護サービスの質の向上を図るとともに、介護施設・デイサービスなどの「3対1」の人員配置の効率化が不可避とした。
また、介護医療院と介護老人保健施設の多床室の室料相当額を利用者本人の負担とすること、要介護1・2への訪問介護・デイサービスの地域支援事業への移行、ケアマネジメントに利用者負担を導入すること、介護老人保健施設の特養への移行や特養に近い形の人員配置・報酬体系を検討すべきと提言した。
さらに、介護事業者の5割が人材紹介会社を活用しているが、一部の事業者が高額の経費を支払っており、必ずしも安定的な職員の確保につながっていないと指摘。ハローワークや都道府県などを介した公的人材紹介を強化すべきとした。
障害福祉サービスについては、サービス量が急増している中で、報酬設定が適切か不断の見直しが必要として、放課後等デイサービスなどのサービス報酬を利用時間の実態に基づいた報酬体系に見直す必要性を指摘した。