社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)介護保険部会は12月19日、介護保険制度の見直しに関する意見のとりまとめに向けた議論を行った。
とりまとめ案は、「Ⅰ.地域包括ケアシステムの深化・推進」「Ⅱ.介護現場の生産性向上の推進、制度の持続可能性の確保」「おわりに」の3部構成。委員からはおおむね「了承」との意見が大勢を占め、ほぼとりまとめ案が最終報告となる見通しだ。
これまでの部会で時間をかけて議論された「介護保険の給付と負担」は、Ⅱの「2.給付と負担」にまとめられている。その論点は以下7項目であったが、とりまとめ案ではそれぞれどうなったか、整理した。
(1)被保険者範囲・受給権者範囲
…介護保険を取り巻く状況の変化も踏まえつつ、引き続き検討を行うことが適当
(2)補足給付に関する給付の在り方
…補足給付の実態やマイナンバー制度の状況も踏まえつつ、引き続き検討を行うことが適当
(3)多床室の室料負担
…介護給付費分科会で報酬の設定も含め検討し、次期計画に向けて結論を得る必要がある
(4)ケアマネジメントに関する給付の在り方
…利用者やケアマネジメントに与える影響、他のサービスとの均衡も踏まえながら、第10期計画の開始までの間に結論を出すことが適当
(5)軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方
…現行の総合事業の評価・分析を行いつつ、第10期計画の開始までの間に、市町村の意向や利用者への影響も踏まえながら包括的に検討し、結論を出すことが適当
(6)「現役並み所得」「一定以上所得」の判断基準
…「現役並み」(3割負担)の判断基準については、引き続き検討を行うことが適当。「一定以上」(2割負担)については、次期計画に向けて結論を得ることが適当
(7)高所得者の1号保険料の負担の在り方
…高齢者の生活実態や生活への影響も把握しながら検討を行い、次期計画に向けて早急に結論を得ることが適当
「次期計画に向けて結論を得ることが適当」とされた(3)多床室の室料負担、(6)のうち「一定以上所得」の判断基準、(7)高所得者の1号保険料の負担の在り方、については遅くとも来年夏までに結論を得るべく、介護保険部会で議論を続ける。すなわち、これら3論点を先に議論し、結論を出す見込み。
表現をそのまま解釈すれば、「第10期(2027~29年度)開始までの間に」とされた(4)ケアマネジメントに関する給付の在り方、(5)軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方、がその次の課題となろう。
「引き続き検討を行う」の(1)被保険者範囲・受給権者範囲、(2)補足給付に関する給付の在り方、(6)のうち「現役並み所得」の判断基準、は事実上の先送りとなった。
「おわりに」では、今回の制度見直しを以下のように総括した。
・全世代対応型の持続可能な社会保障制度の構築に向けて、医療提供体制に係る議論と軌を一にして、質の高い医療・介護を効率的に提供するための基盤整備を図る
・次期計画期間内に迎える2025年に向け、地域包括ケアシステムの構築および地域共生社会の実現を目指す取り組みを加速させる
・85歳以上高齢者の急増、現役世代の急減という非常に厳しいフェーズに対応し、介護保険制度の財政的な持続可能性や足下の介護人材確保と介護現場の生産性向上により、サービスの質の確保や職員の負担軽減を図り、サービス提供の持続可能性を高める