給付と負担の7論点を議論 介護保険部会

2022年 11月 1日

 社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)介護保険部会は10月31日、介護保険の給付と負担についての議論を本格的に始めた。

 2022年度の介護費用総額は13.3兆円(予算ベース)と制度創設時のおよそ3.7倍であり、第1号被保険者保険料の全国平均も、月額6000円を超えて2.07倍に膨らんでいる(第8期)。

 2040年に向けて高齢者が増え、また、85歳以上の長寿者の急増も予想されるため、介護費用も保険料もこのまま上がり続ければ制度の持続可能性が懸念される。

 このことをめぐっては、社保審だけでなく、全世代型社会保障構築会議や経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2022、新経済・財政再生計画改革工程表2021などにも取り上げられ、重要な課題となっている。

 今回の議論にあたり、事務局は①被保険者・受給者範囲、②補足給付に関する給付の在り方、③多床室の室料負担、④ケアマネジメントに関する給付の在り方、⑤軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方、⑥「現役並み所得」、「一定以上所得」の判断基準、⑦高所得者の1号保険料負担の在り方、の7つの論点を提示した。①~⑦についての主な意見を以下にまとめる(これまでの意見も含む)。

 ①被保険者・受給者範囲
 被保険者・受給者とも拡大して、18歳未満を除くすべての医療保険加入者に広げるべき。第2号被保険者を40歳未満も対象とする(=40歳未満からも保険料を徴収する)ことについては、この日の議論でも、委員の賛否が明確に分かれた。

 ②補足給付(低所得者に対する特養・老健などの食費・居住費の負担軽減策)に関する給付の在り方
 資産があるのに給付を受けている人もいて不公平。資産の保有状況を適切に評価することが不可欠。マイナンバーを活用してストックについても把握すべき。

 ③多床室の室料負担
 老健は在宅復帰のための施設であり、生活の場というより療養の場である。よって負担を課すべきではない。負担増により利用控えとならないよう、慎重に検討すべき。

 ④ケアマネジメントに関する給付の在り方
 有料化・利用者負担導入については、利用控えの誘因となりうることから慎重に検討すべき。ケアマネジメントは専門業務であるが、他のサービスと比べてどう位置付けるか。

 ⑤軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方
 要介護1・2に対する生活援助を総合事業に移行することは断固反対。“軽度”であっても認知症がある場合も多く、専門職の介入が必要だ。現役世代の保険料負担は限界に達しており、市町村の事業を強化して総合事業に移行すべき。

 ⑥「現役並み所得」、「一定以上所得」の判断基準
 医療保険は応能負担を打ち出しており、介護保険も応能負担はやむを得ない。応能負担を強化するのであれば、実効性のある制度が必要。

 ⑦高所得者の1号保険料負担の在り方
 全世代型社会保障構築会議「中間整理」にも、能力に応じて支え合う観点が強調されている。資産や所得を正確に捕捉して負担に結び付けるべき。

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特例介護の新類型を提案 介護保険部会🆕

 第128回社会保障審議会介護保険部会が11月10日に開かれ、「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築等」「地域包括ケアシステムの深化(介護予防・日常生活支援総合事業等)」「地域包括ケアシステムの深化(高齢者向け住まい)」などが議論された。
 
 「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築等」は、10月に開催された第126回部会で提案された、「特例介護サービス」の新たな類型案について、具体的に提案された。
 
 現行の特例介護サービスは、全国を対象地域とする「基準該当サービス」と厚労大臣が定める地域を対象とする「離島等相当サービス」である。事業者は指定でなく登録、人員配置基準は指定サービスより緩和されている(離島等相当サービスでは人員配置基準の規定はない)。報酬も、介護報酬を基準に市町村が設定する。これらは居宅サービスに適用される。

有料は届出から登録へ 望ましいあり方検討会🆕

 第7回有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会が10月31日に開催され、とりまとめ案について議論した。
 
 とりまとめ案は有料老人ホーム(以下、有料)における安全性やサービスの質の確保、入居契約の透明性確保、紹介事業の透明性や質の確保、指導監督や「囲い込み」対策の在り方など多岐にわたる。主な内容を以下に挙げる。
 
 ●中重度の要介護者(要介護3以上)や医療ケアを必要とする要介護者、認知症の人などを入居対象とする有料については、行政の関与により入居者保護を強化するため、登録制を導入。
 
 ●登録制は、公平性の観点から、要件に該当する既存の有料にも適用される。既存の有料が新制度に移行する際は一定の経過措置を設ける。
 
 ●参入後も事業運営の質の維持が求められるため、更新制や更新拒否の仕組みもつくる。行政処分を受けた運営事業者は一定期間、有料の開設が制限される。
 
 ●こうした有料については、高齢者の尊厳の保障やサービスの質の確保の観点から、職員体制や運営体制に関する一定の基準を法令で儲ける。

ケアマネ資格要件など議論 介護保険部会🆕

 第127回社会保障審議会介護保険部会が10月27日に開かれ、「介護人材確保と職場環境改善・生産性向上、経営改善支援等」「地域包括ケアシステムの深化(相談支援の在り方)」「持続可能性の確保」などが議論された。
 
 「地域包括ケアシステムの深化(相談支援の在り方)」では、ケアマネジャーの資格取得要件や業務の在り方について事務局から提案された。
 
 資格要件については、参入促進のため「受験対象である国家資格の範囲拡充」を提案。具体的には診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、救急救命士、公認心理師が挙げられる。これら5資格の業務などは以下の通り。

中山間地域の訪問介護への定額導入など提案

 10月9日、第126回社会保障審議会介護保険部会が開かれ、「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築等」「地域包括ケアシステムの深化(相談支援の在り方)」などが議論された。
 
 「人口減少…に応じたサービス提供体制の構築等」の論点は①地域の類型の考え方、②地域の実情に応じたサービス提供体制の維持のための仕組み、③地域の実情に応じた包括的な評価の仕組み、④介護サービスを事業として実施する仕組み、⑤介護事業者の連携強化、⑥地域の実情に応じた既存施設の有効活用、⑦調整交付金の在り方、と多岐にわたる。
 
 以下、①~⑤について事務局からの提案をまとめる。
 
 ①については、サービス需要が減少する「中山間・人口減少地域」ではサービス提供の維持・確保を前提に新たな柔軟化のための枠組みを設ける必要がある。その対象は「特別地域加算」の対象地域が基本となるが、拡充も考えられる。また、市町村の中でもエリアによって人口減少の進み方は異なるため、市町村内の一部エリアも対象とできないか。
 
 「中山間・人口減少地域」は、介護保険(支援)計画の策定時に、都道府県が市町村の意向を確認して決定する。「大都市部」「一般市等」では、現行制度の枠組みを活用したサービス基盤の維持・確保が求められる。
 
 委員からは、地域類型を定める根拠となる高齢者人口について、「その場合の高齢者とは何歳以上か、定義を定める必要がある」との指摘が相次いだ。
 
 ②は「中山間・人口減少地域」のサービス提供体制の維持・確保のために、特例介護サービスの枠組みを拡張する。新たな類型は下図の赤い部分だ。

介護保険見直しの議論始まる 介護保険部会

 第125回社会保障審議会介護保険部会が9月29日に開かれ、「地域包括ケアシステムの深化、持続可能性の確保」などが議論された。
 
 具体的な論点は①地域包括ケアシステムの実現・深化に向けた支援体制の整備、②医療介護連携の推進、③持続可能性の確保、の3点。
 
 事務局は①について、地域の状況に応じたサービス提供体制や支援体制の構築が重要、との前提で、地域の性格によって課題を以下のように位置づけた。
 
 中山間・人口減少地域…サービス基盤の維持・確保
 都市部…新たな事業者や人材の持続的な確保
 一般市等…前2者それぞれへの対応
 
 そのうえで中山間・人口減少地域では、前回の部会で議論されたサービス提供体制の確保のための方策について、介護保険事業計画に反映することが重要、との方向性を提示する。
 
 さらに、者向け住まいについては、「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会」の議論もふまえ、介護保険部会で議論して整理する。介護予防や人材確保、生産性向上に関する事項も含めて…

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