社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)介護保険部会は10月31日、介護保険の給付と負担についての議論を本格的に始めた。
2022年度の介護費用総額は13.3兆円(予算ベース)と制度創設時のおよそ3.7倍であり、第1号被保険者保険料の全国平均も、月額6000円を超えて2.07倍に膨らんでいる(第8期)。
2040年に向けて高齢者が増え、また、85歳以上の長寿者の急増も予想されるため、介護費用も保険料もこのまま上がり続ければ制度の持続可能性が懸念される。
このことをめぐっては、社保審だけでなく、全世代型社会保障構築会議や経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2022、新経済・財政再生計画改革工程表2021などにも取り上げられ、重要な課題となっている。
今回の議論にあたり、事務局は①被保険者・受給者範囲、②補足給付に関する給付の在り方、③多床室の室料負担、④ケアマネジメントに関する給付の在り方、⑤軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方、⑥「現役並み所得」、「一定以上所得」の判断基準、⑦高所得者の1号保険料負担の在り方、の7つの論点を提示した。①~⑦についての主な意見を以下にまとめる(これまでの意見も含む)。
①被保険者・受給者範囲
被保険者・受給者とも拡大して、18歳未満を除くすべての医療保険加入者に広げるべき。第2号被保険者を40歳未満も対象とする(=40歳未満からも保険料を徴収する)ことについては、この日の議論でも、委員の賛否が明確に分かれた。
②補足給付(低所得者に対する特養・老健などの食費・居住費の負担軽減策)に関する給付の在り方
資産があるのに給付を受けている人もいて不公平。資産の保有状況を適切に評価することが不可欠。マイナンバーを活用してストックについても把握すべき。
③多床室の室料負担
老健は在宅復帰のための施設であり、生活の場というより療養の場である。よって負担を課すべきではない。負担増により利用控えとならないよう、慎重に検討すべき。
④ケアマネジメントに関する給付の在り方
有料化・利用者負担導入については、利用控えの誘因となりうることから慎重に検討すべき。ケアマネジメントは専門業務であるが、他のサービスと比べてどう位置付けるか。
⑤軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方
要介護1・2に対する生活援助を総合事業に移行することは断固反対。“軽度”であっても認知症がある場合も多く、専門職の介入が必要だ。現役世代の保険料負担は限界に達しており、市町村の事業を強化して総合事業に移行すべき。
⑥「現役並み所得」、「一定以上所得」の判断基準
医療保険は応能負担を打ち出しており、介護保険も応能負担はやむを得ない。応能負担を強化するのであれば、実効性のある制度が必要。
⑦高所得者の1号保険料負担の在り方
全世代型社会保障構築会議「中間整理」にも、能力に応じて支え合う観点が強調されている。資産や所得を正確に捕捉して負担に結び付けるべき。