認知症施策や総合事業を議論 介護保険部会

2022年 9月 14日

 社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)介護保険部会は9月12日、前回に続き、地域包括ケアシステムの更なる深化・推進について議論した。

 具体的な内容は①認知症施策の推進、②家族を含めた相談支援体制の推進、③総合事業の多様なサービスの在り方、④通いの場、一般介護予防事業、⑤地域包括支援センターの体制整備、⑥介護予防ケアマネジメント業務、⑦給付適正化・地域差分析、⑧保険者事務の広域化・効率化、⑨行政のデジタル化の推進、⑩地域包括ケアシステムの構築、⑪保険者機能強化推進交付金等、の11項目。

 部会では、①の認知症について発言した委員が多かった。印象的な発言を紹介する。

▷認知症の予防、すなわち認知症にならないことを強調すると、認知症になると人生終わり、のように誤解される。しかしそんなことはない。独居の認知症高齢者でも、居宅サービスを使い通いの場に通って自立した生活を送っている人は少なくない。

 ところが、通いの場で「認知症にならないようにがんばっている」と、認知症の人の前でそんな発言をして、認知症の人を傷つけてしまうようなことがあるという。

 最近はかなり早期の段階で認知症と診断されることが多くなった。その後に大事なのは、進行を遅らせることより、診断後も社会生活を送れること。そのためにはともに活動して、偏見の解消に努める必要がある。

▷世間には「認知症を予防する」といった考えが根強くあるが、予防ができるかのような誤解を増長してはならない。それよりも「なっても大丈夫」という視点が重要だ。また、介護保険制度そのものが認知症モデルになっていない。

▷何をもって認知症の予防といえるのか。尊厳と自立の観点をふまえて適切に評価する指標が必要。残っている機能を評価できているのか。

 以下は、③総合事業、④通いの場、一般介護予防事業、について。

▷総合事業が始まって7年、その目的は高齢者が支援の担い手になることや、地域づくり、住民主体のサービス創出であった。どんな成果が出ているのか。地域づくりはできているか。7年でこれでは、問題があるのでは。

▷住民主体サービスが伸び悩んでいる。その原因は?(事務局より「今後分析される」と回答)

▷通いの場にはさまざまな形態が登場している。相談機能、アウトリーチ、認知症ケアなど、それぞれに発展している。地域包括支援センターとのパイプを強化しては。

▷通いの場ができたプロセスが多様で面白い。高齢者の問題を自分ごととして地域が発展してきた。地域のプラットフォームとなって、インフォーマルサービスなどいろいろな情報を提供してほしい。住民主体サービスにはバックアップの仕組みが必要。

 そのほか、成年後見制度の利用促進、アウトカム指標などへの意見が出された。今回は、前回までと進行スタイルを変え、議論の活性化が図られた。

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 今回、「持続可能性の確保」は
 
 ●「一定以上所得」「現役並み所得」の判断基準
 ●補足給付に関する給付の在り方
 ●ケアマネジメントに関する給付の在り方
 
 の3つの論点に絞って議論された。
 
 「一定以上所得」「現役並み所得」の「一定以上」とは、介護保険サービス利用時の自己負担を2割とする所得層で、「現役並み」とは自己負担3割の所得層だ。簡単にいえば所得の多い人は自己負担も多く、という応能負担の考え方に基づく施策である。現行の「一定以上所得」「現役並み所得」の基準は以下の通り。

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 「持続可能性の確保」の内容は
 
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 ●軽度者への生活援助サービスに関する給付の在り方
 ●被保険者範囲・受給者範囲
 ●金融所得・金融資産の反映の在り方
 
 など、注目度が高い項目が多く、これまでも議論が続いてきたが、今回は事務局から具体的にどうするか、施策の方向は示されていない。
 
 ケアマネジメントに関する給付の在り方については、他サービスと同様に幅広い利用者に負担を求めること(ケアマネジメント有料化)や、その判断にあたって利用者の所得状況を考慮することをどう考えるか、住宅型有料老人ホームの入居者に係るケアマネジメントについて利用者負担を求めるか、などの論点が示された。

特例介護の新類型を提案 介護保険部会

 第128回社会保障審議会介護保険部会が11月10日に開かれ、「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築等」「地域包括ケアシステムの深化(介護予防・日常生活支援総合事業等)」「地域包括ケアシステムの深化(高齢者向け住まい)」などが議論された。
 
 「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築等」は、10月に開催された第126回部会で提案された、「特例介護サービス」の新たな類型案について、具体的に提案された。
 
 現行の特例介護サービスは、全国を対象地域とする「基準該当サービス」と厚労大臣が定める地域を対象とする「離島等相当サービス」である。事業者は指定でなく登録、人員配置基準は指定サービスより緩和されている(離島等相当サービスでは人員配置基準の規定はない)。報酬も、介護報酬を基準に市町村が設定する。これらは居宅サービスに適用される。

有料は届出から登録へ 望ましいあり方検討会

 第7回有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会が10月31日に開催され、とりまとめ案について議論した。
 
 とりまとめ案は有料老人ホーム(以下、有料)における安全性やサービスの質の確保、入居契約の透明性確保、紹介事業の透明性や質の確保、指導監督や「囲い込み」対策の在り方など多岐にわたる。主な内容を以下に挙げる。
 
 ●中重度の要介護者(要介護3以上)や医療ケアを必要とする要介護者、認知症の人などを入居対象とする有料については、行政の関与により入居者保護を強化するため、登録制を導入。
 
 ●登録制は、公平性の観点から、要件に該当する既存の有料にも適用される。既存の有料が新制度に移行する際は一定の経過措置を設ける。
 
 ●参入後も事業運営の質の維持が求められるため、更新制や更新拒否の仕組みもつくる。行政処分を受けた運営事業者は一定期間、有料の開設が制限される。
 
 ●こうした有料については、高齢者の尊厳の保障やサービスの質の確保の観点から、職員体制や運営体制に関する一定の基準を法令で儲ける。

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