感染症法の改正など議論 医療保険部会

2022年 8月 22日

 社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)医療保険部会は8月19日、感染症法の改正などについて議論した。

 新型コロナウイルス感染症では、医療提供にさまざまな問題が生じた。これまで指摘された課題は、

 〇指定医療機関だけでは入院患者を受け入れきれず、一般病院が通常医療を制限してでも病床を確保する必要が生じた。ところがこうした事態は想定されておらず、体制の立ち上げに時間がかかった
 〇ウイルスの特性が明らかになった後でも、医療機関の役割調整が困難だったり、医療体制が十分に確保されなかったりした
 〇感染の疑いのある患者が普段かかっている医療機関で診療を受けられず、総合病院を受診したり、地方自治体に相談するケースがあった
 〇発熱患者を診療する医療機関が一部しか公表されず、公表している医療機関に患者が殺到して外来がひっ迫した

 である(第63回厚生科学審議会感染症部会)。これに対して、以下の方向性が示された(同部会)。

 〇新興感染症に対応する病床提供について、平時において都道府県と医療機関の間で協定を結ぶ「全体像」の仕組みを法定化し、危機発生時にはこの協定に従って医療を提供する。医療機関に対しては協定に沿って病床確保を促す措置を設けるなど、都道府県・国が医療資源確保についてより強い権限を持つことができるよう、法律上の手当を行う

 具体的には、以下の策が提案された(同部会)。

 〇都道府県は感染症まん延時における医療提供体制の確保に関し、計画的な取り組みを推進する。たとえば病床や発熱外来、後方支援、人材派遣などについて数値目標を盛り込んだ計画を平時から策定するなど
 〇都道府県が医療機関と協定を締結する仕組みを創設する
 〇これらの協定に沿った措置の公表、流行初期における減収補償の仕組みの創設など

 減収補償の仕組みについては事務局からイメージ案が示された。

 〇初動対応を含む特別な協定を締結した医療機関について、一般医療の提供を制限して大きな経営上のリスクのある流行初期の感染症医療を提供することに対し、減収補償を行う
 〇感染症医療を実施した月の診療報酬収入が、流行前の同月の診療報酬収入を下回った場合、差額を支払う
 〇事業実施主体は都道府県、費用負担者は国、都道府県、保険者(被用者保険、国保、後期高齢広域連合)

 これに対し委員から、費用負担者に保険者は入れず、全額公費負担とすべき、などの意見が示された。

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2割負担は先送り 介護保険部会が「意見」🆕

 第133回社会保障審議会介護保険部会が12月25日に開かれ、「介護保険制度の見直しに関する意見」が確定した。
 
 議論が続いた「一定以上所得」の判断基準については、第10期介護保険事業計画(2027~29年度)の開始前までに結論を得ることとなった。
 
 これは利用者負担が2割となる基準で、現行制度では年金収入+その他の合計所得が年280万円以上340万円未満である(単身世帯の場合)。340万円以上は「現役並み所得」とされ、3割負担だ。
 
 介護保険制度の持続可能性確保のためにその基準を拡大し、2割・3割負担となる層を広げるかどうか。
 
 具体的には、「一定以上所得(2割負担)」の下限を260万円~230万円の範囲で引き下げる案が示され、長く議論されてきたが、決着には至らなかった。「現役並み所得」の判断基準は「引き続き検討を行う」と、期限も示されなかった。
 
 そのほか、軽度者への生活援助サービスを給付から切り離して総合事業に移行する案も結論は出ず、「引き続き包括的に検討する」となった。

制度見直しの議論続く 介護保険部会🆕

 第132回社会保障審議会介護保険部会が12月22日に開かれ、前回に続き「介護保険制度の見直しに関する意見(案)」などが議論された。
 
 今回提示された案では、「一定以上所得の判断基準」について、これまで同様、年金収入+その他の合計所得を「年260万円~230万円の範囲」とした。まだ具体的な方向は見えない。委員の中には「2割負担の対象を拡大すべきでない」との意見も根強い。
 
 「拡大すべきでない」論者の意見は、
 
 ・医療ではOTC類似薬への新たな負担など、高齢者の負担増が確実。介護でも負担増は避けるべき
 
 ・負担増から利用控えが起こると、子世代にしわ寄せがくる。介護離職が増えるのでは
 
 ・現役世代の負担軽減は重要だが、サービスを使えなくなった親を子が援助すれば結局子の負担は増える
 
 などがある。持続可能性を高めるには被保険者の範囲や公費負担も見直すべき、との意見もあった。

2割負担、ケアマネジメントの在り方は 部会

 第131回社会保障審議会介護保険部会が12月15日に開かれ、「介護保険制度の見直しに関する意見(案)」などが議論された。
 
 「介護保険制度の見直しに関する意見」は2022年12月に“第1弾”が公表されている。このとき結論が出されなかった、〈「一定以上所得」「現役並み所得」の判断基準〉〈補足給付の在り方〉〈ケアマネジメントに関する給付の在り方〉〈軽度者への生活援助サービスに関する給付の在り方〉などについて、これまで部会で議論が続けられた。
 
 これらは「次期計画に向けて得ることが適当」「第10期計画の開始までに出すのが適当」「引き続き検討」とされた。次期計画とは現在の第9期(2024-26年度)、第10期は27-29年度である。
 
 「一定以上所得の判断基準」は「次期計画に向けて」だったが、まだ決着していない。2割負担の拡大、すなわち適用される所得の引き下げにつながることから、反対意見が根強かった。現行制度では、2割負担となる所得基準は年280万円以上だ。これをどこまで引き下げるか。年260万円~230万円の範囲が提案されている。
 
 引き下げ幅が大きいほど、2割負担となる人は増える。ただ引き下げと同時に「配慮措置」も提案されている。①新たに負担増となる場合、増加の上限を月額7000円とする、②預貯金等が一定額以下の人は申請により1割負担に戻す、の2つだ。

訪問介護の倒産止まらず 報酬引き下げなど響く

 東京商工リサーチの調査によると、訪問介護事業者の2025年の倒産(負債1000万円以上)が11月末までに85件に達し、これまで最多だった23年67件、24年81件をすでに超え、3年連続で最多を更新した。  人手不足や24年度の介護報酬改定で訪問介護の基本報酬が引き下げられたことに加え、人件費やガソリン代、運営コストの上昇が要因と見込まれる。  25年の訪問介護事業者の倒産は11月末までに85件(前年81件)で、3年連続で年間最多を更新した。...

2割負担対象も預貯金に応じ1割の案 部会

 第130回社会保障審議会介護保険部会が12月1日に開かれ、「持続可能性の確保」「論点ごとの議論の状況」などが議論された。
 
 今回、「持続可能性の確保」は
 
 ●「一定以上所得」「現役並み所得」の判断基準
 ●補足給付に関する給付の在り方
 ●ケアマネジメントに関する給付の在り方
 
 の3つの論点に絞って議論された。
 
 「一定以上所得」「現役並み所得」の「一定以上」とは、介護保険サービス利用時の自己負担を2割とする所得層で、「現役並み」とは自己負担3割の所得層だ。簡単にいえば所得の多い人は自己負担も多く、という応能負担の考え方に基づく施策である。現行の「一定以上所得」「現役並み所得」の基準は以下の通り。

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