精神科医療機関の通報制度で異論 障害者部会

2022年 6月 6日

 

 社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)障害者部会は6月3日、障害者総合支援法改正法施行後3年の見直しに関する報告書案を議論し、精神科医療機関の通報制度をめぐって委員の意見が分かれた。

 報告書案では、「虐待の疑いを発見した精神科医療機関の職員等が、行政機関への通報を躊躇し、悪質な虐待行為が潜在化することのないよう、通報義務及び通報者保護の仕組みを設けることについて、制度上の対応を検討するべきである」となっている。

 この文言をめぐり、竹下義樹・日本視覚障害者団体連合会長が「精神科病院以外の病院における人権擁護あるいは虐待防止のための通報制度については、議論が見えてこない。医療機関全体に対する虐待防止あるいは通報制度づくりを踏まえた議論を」と述べるなど、通報制度の議論を医療機関全体に広げることを求める意見が出された。

 この点に関して、野澤和弘・植草学園大学副学長/スローコミュニケーション代表は「一般病院を含めて虐待防止の網をかけるのは正論だが、障害者虐待防止法が施行された時もすべてに網をかけようとしていたものの、政治的・行政的な手続きのハードルが高くてできなかった」として、今回は精神科医療機関に限定する方がいいとの見方を示した。

 また、「通報」という言葉が刑事処罰やペナルティーを想起させるため、「連絡」「相談」のような言葉に置き換えて、精神保健福祉法の中で検討することを提案した。

 これに対し、櫻木章司・日本精神科病院協会常務理事は上記報告書案に続く文言として「通報を契機に精神科医療機関が再発防止策を講じることが可能となり、より良質な精神科医療の提供に向けて、虐待を起こさない組織風土の構築・徹底に資する効果も期待される」とあることに対し、「全くそう考えていない。現行の枠組みの中で、きちんと間接的防止措置を取ることのほうが実効的」と述べ、通報義務に反対の考えを示した。

 一方、丹羽彩文・全国地域生活支援ネットワーク事務局長は「虐待防止法が始まった時、福祉のわれわれも通報が防止につながるとは思えなかった。しかし、虐待防止委員会の中や市町村の担当者とやり取りする中で、虐待を起こさないという風土づくりが進んだ」との参考意見を紹介した。

このカテゴリーの最新の記事

このカテゴリはメンバーだけが閲覧できます。このカテゴリを表示するには、年会費(年間購読料) もしくは 月会費(月間購読料)を購入してサインアップしてください。

介護保険見直しの議論始まる 介護保険部会🆕

 第125回社会保障審議会介護保険部会が9月29日に開かれ、「地域包括ケアシステムの深化、持続可能性の確保」などが議論された。
 
 具体的な論点は①地域包括ケアシステムの実現・深化に向けた支援体制の整備、②医療介護連携の推進、③持続可能性の確保、の3点。
 
 事務局は①について、地域の状況に応じたサービス提供体制や支援体制の構築が重要、との前提で、地域の性格によって課題を以下のように位置づけた。
 
 中山間・人口減少地域…サービス基盤の維持・確保
 都市部…新たな事業者や人材の持続的な確保
 一般市等…前2者それぞれへの対応
 
 そのうえで中山間・人口減少地域では、前回の部会で議論されたサービス提供体制の確保のための方策について、介護保険事業計画に反映することが重要、との方向性を提示する。
 
 さらに、者向け住まいについては、「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会」の議論もふまえ、介護保険部会で議論して整理する。介護予防や人材確保、生産性向上に関する事項も含めて…

中山間地域のサービス提供柔軟に 介護保険部会🆕

 第124回社会保障審議会介護保険部会が9月8日に開かれ、「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築」などが議論された。
 
 具体的な内容は、これまでの同部会での議論を踏まえた以下の6項目で、②~⑥は中山間・減少人口地域でのサービス提供体制の維持・確保についての提案である。
 
 ①地域の類型の考え方
 ②地域の実情に応じたサービス提供体制の維持のための仕組み
 ③地域の実情に応じた包括的な評価の仕組み
 ④介護サービスを事業として実施する仕組み
 ⑤介護事業者の連携強化
 ⑥地域の実情に応じた既存施設の有効活用
 
 ①地域の類型の考え方は、全国を「中山間・人口減少地域」「大都市部」「一般市等」の3つに分類し、状況に応じたサービス提供体制を構築していくことが重要、とする。「中山間・人口減少地域」についてはサービス提供の維持・確保を前提として新たな柔軟化のための枠組みを設けることを提案する。

人材確保に向け処遇改善を議論 給付費分科会🆕

 第247回社会保障審議会介護給付費分科会が9月5日に開催され、「令和6年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査 (令和7年度調査)の調査票等について」「介護人材確保に向けた処遇改善等の課題」などが議論された。  「調査票等」は、「高齢者施設と医療機関の連携体制などの調査研究事業」「令和6年度介護報酬改定におけるLIFEの見直し項目及びLIFEを活用した質の高い介護の推進に資する調査研究事業」など4つの研究事業の調査票案を事務局が提示。...

日本の人口55万人減少 日本人減も外国人は増加

 総務省の人口動態調査によると、今年1月1日現在の日本の人口は1億2433万690人で、前年に比べ55万4485人(0.44%)減少した。  日本人が1億2065万3227人で同90万8574人(0.75%)減少したのに対し、外国人は367万7463人で同35万4089人(10.65%)増加した。減少する日本人の数を外国人の数が補う形となっている。  日本人は2009年をピークに16年連続で減少、外国人は13年の調査開始以降、最多となった。都道府県別では、日本人は東京都のみ増加した一方、外国人は全都道府県で増加した。...

1-6月の訪問介護の倒産件数が過去最多を更新

 東京商工リサーチによると、2025年上半期(1-6月)の訪問介護の倒産が45件(前年同期比12.5%増)となり、2年連続で過去最多を更新した。  これまで倒産は小・零細事業者が大半だったが、従業員10人以上が9件(同125.0%増)、負債1億円以上が6件(同100.0%増)、資本金1000万円以上が6件(同100.0%増)と中小・中堅規模に倒産が広がっていることが分かった。...

1週間無料でお試し購読ができます  詳しくはここをクリック

新着記事は1カ月無料で公開

有料記事は990円(税込)で1カ月読み放題

*1年間は1万1000円(同)

〈新着情報〉〈政策・審議会・統計〉〈業界の動き〉は無料

【アーカイブ】テーマ特集/対談・インタビュー

コラム一覧

【アーカイブ】現場ルポ/医療介護ビジネス新時代

アクセスランキング(9月22-28日)

  • 1位
  • 2位
  • 3位 90% 90%
メディカ出版 医療と介護Next バックナンバーのご案内

公式SNS