内閣官房の全世代型社会保障構築会議は5月17日、第5回会合を開催し、中間整理を公表した。
中間整理は①全世代型社会保障の構築に向けて、②男女が希望どおり働ける社会づくり・子育て支援、③勤労者皆保険の実現・女性就労の制約となっている制度の見直し、④家庭における介護の負担軽減、⑤「地域共生社会」づくり、⑥医療・介護・福祉サービス、の6項目を掲げている。
①は全世代型社会保障の構築を訴え、特に「子育て・若者世代への支援が喫緊の課題」と位置づけた。子育て支援を重視しながら、②では、前首相が設置した「全世代型社会保障検討会議」が柱に掲げた「待機児童解消」が姿を消している。
また、①で〈社会保険をはじめとする共助〉、⑤では〈住民同士が助け合う「互助」〉と記述する。
これは近年、社会保障(とりわけ地域包括ケアシステム)の分野で健康保険や介護保険・年金といった社会保険による制度を「共助」、住民同士の助け合いやボランティア活動を「互助」と呼んでいることに合致している。前首相が「住民同士の助け合い」を「共助」と称したことと対照的だ。
②では待機児童解消に触れていないが、もっと本質的な問題に踏み込む。「仕事と子育ての両立」を図るため、「仕事か子育てか」の二者択一を迫られる状況の是正が必要とし、育児休業などの両立支援策を誰もが利用できる環境整備、男性の育休取得促進、非正規労働者の育休取得、短時間労働者の保育利用、男性の家事・育児参加の推進を謳った。
③は働き方の多様化に対応し、働き方に中立な社会保障制度の構築が必要と指摘する。被用者保険の適用拡大を着実に実施し、フリーランスなどへの適用も含めて総合的に検討、と述べる。
女性就労の制約となっている制度にも目を向け、「労使において改廃・縮小に向けた議論が進められるべき」と指摘している。
④では家族の介護力低下を前提に、サービスの基盤整備が必要と指摘する。在宅高齢者への地域全体の支援を強調し、認知症の人の増加をふまえて伴走型支援や成年後見などの議論も重視している。ヤングケアラーへの支援も盛り込んだ。
⑤では孤独・孤立や生活困窮を今後の大きな課題ととらえる。地域とつながり安心して生活できる「地域共生社会」づくりのため、ソーシャルワーカーによる相談支援や多機関連携による総合的な支援体制の整備が重要とする。
地域の支援体制を構築する際には分野横断的な視点が重要とし、地域課題解決のため住民同士が助け合う「互助」の機能強化が望まれるとした。
④で介護の「各論」に焦点を当て、さらに⑥で「医療・介護・福祉」を論じる。これからの医療・介護提供体制は「地域完結型」と言い切り、関連する政策を着実に進めていくべきと述べる。
コロナ禍では〈地域医療の機能が十分作動せず(略)課題に直面〉したと指摘し、機能分化と連携をいっそう重視した医療・介護提供体制の改革を進めるべきとした。データ・ICTの活用を含めた社会保障全体のDXにも言及している。