障害者虐待への自治体の対応にばらつきがあることに対し、厚生労働省は障害者虐待を担当する自治体職員向けに、虐待の判断に迷った場合などにとるべき対応や留意点をまとめて周知する考えを示した。4月18日に開催した社会保障審議会(厚労相の諮問機関)障害者部会で提案した。
2020年度に実施した障害者虐待に関する対応状況調査で、自治体によって「事実確認調査を行った件数」の割合と、「虐待と判断した件数」の割合に大きくばらつきがあることが明らかとなった。
そこで、21年度調査ではばらつきの原因を探るため、相談・通報に対して事実確認不要と判断した理由や、事実確認後に虐待ではないと判断した理由などの質問を追加した。
その結果、事実確認不要や虐待ではないと判断した理由として「相談・通報者の心配や、届出者の不平・不満」、虐待の判断に至らなかった理由として「被虐待者等の聞き取りから、虐待と判断するに足る情報を得られなかった」とする回答が多く見られた。
また、市町村の初動対応や虐待の有無を判断する際、担当部署の管理職が参加していないケースも多かった。
さらに、事実確認不要とした理由では「擁護者が逆上して本人に危害がおよぶ恐れがある」「警察から市への通報までに日数が経っている」「調査に入ることでその後の事業所と利用者の関係性が損なわれる可能性があった」など、適切とは言えない理由により判断している事例もあった。
これらを踏まえ、障害者虐待の相談・通報の受け付けや事実確認を行う自治体職員に向け、虐待の判断に迷ったり、事実確認不要と判断したりしやすい具体的な場面などについて、厚労省が対応や留意点をまとめて周知することを障害者部会に提案した。