厚生労働省「がんの緩和ケアに係る部会」は1月14日、治療期の専門的な緩和ケアについて議論した。
がんの痛みの治療には放射線治療や神経ブロックなど有効な方法があるにも関わらず、日本では薬剤による治療が中心になっている。
患者だけでなくがん、治療医にも放射線治療や神経ブロックなどの治療法が十分認識されていないことに加え、これらの専門医が少ないことが原因であることから、情報提供や専門医の育成の重要性が指摘された。
この日の会合では、埼玉医科大学総合医療センター放射線腫瘍科の髙橋健夫教授と沖縄中部徳洲会病院疼痛治療科の服部政治統括部長(大分大学医学部麻酔科臨床教授)が参考人としてプレゼンテーションを行った。
髙橋教授は、緩和的放射線治療は症状緩和とQOLの向上を目的に、痛みの原因病巣を治療するものだと説明。有痛性骨転移に対する放射線治療の効果として、疼痛緩和率は60~90%程度で、QOLが改善することを示した。
一方、課題として地域での骨転移などの診断・治療に関する医療機関間の連携、院内での診断・治療に関する多職種連携の仕組み、がん治療に携わる一般医師の緩和照射についての知識、一般市民が緩和照射について正しい情報を得られる機会が乏しいことを挙げた。
服部部長はがん患者遺族調査で、亡くなるまでの1カ月間、身体の苦痛が少なく過ごせなかった患者が4割あったとのデータを示し、その要因の1つとして臨床現場で専門的技術の導入が不十分であることを指摘した。
その上で、さまざまな神経ブロック療法を紹介し、内蔵神経ブロックによりNRSが6から2に低減したことを紹介。これに伴い薬剤の使用料が減ったことで、それまでの疼痛管理費1万8000円/日が1400円/日に減り、コスト面でも大きなメリットがあることを示した。
また、髙橋教授同様、問題点としてがん治療医・緩和ケア医が専門的治療に対する認識や技術を提供できるアクセスと協力体制、啓発が不十分であることを指摘した。
さらに、1人の医師が自分のできる範囲で最大限までがんばるのではなく、オピオイド開始と同時かそれより前に専門家にコンサルトし、「自分に何ができるか?」ではなく、「患者になにが必要か?」を考える教育が必要ではないかと述べた。
構成員の専門家からは、現在、学会で専門医を育成する取り組みを行っており、5年ほどである程度までの人材養成が可能になる見通しが示された。
また、地域がん診療連携拠点病院の指定要件では精神症状の緩和に携わる医師について専門資格に関する規定がないこと、主治医と緩和ケアチームの関係性など、多様な課題が指摘された。