厚生労働省は12月15日、中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)に不妊治療を保険適用とする提案を行い、支払側・診療側委員ともに異論を示さなかった。
対象となるのは不妊症と診断された、事実婚を含めた男女で、治療開始時点で女性が43歳未満であることが条件となる。
治療回数は女性が40歳未満の場合は1子につき6回まで、40歳以上43歳未満では1子につき3回までとする。
不妊治療を行う医療機関の施設基準については、現行の特定治療支援事業での取り扱いと生殖医療ガイドラインを踏まえて今後要件を定める。情報開示についても、開示する情報や手法などを検討していく。
第三者の卵子または精子を用いた生殖補助医療に関しては、国会で検討されていることから、現時点では保険適用外とする。患者のメンタルケアの支援についても今後、検討する。
来年度からの保険適用の実施に向け、移行期の治療計画に支障が生じないよう、年度をまたぐ1回の治療を、経過措置として助成の対象とする。
保険適用となる医療技術は、日本生殖医学会のガイドラインで推奨度AとBとされている採卵や採精、体外受精、顕微授精、胚培養、胚凍結保存、肺移植など。
推奨度CとなっているIMSIや子宮内膜受容能検査、SEET法などは原則適用外となるものの、医療機関から申請があったものは、先進医療として実施することについて審議する。
推奨度B となっているPGT(着床前診断)の保険適用については、もともと遺伝子変異を持つ人などに実施していたが、流産率を低下させる効果があるとして現在、学会で議論が行われていることから、それを踏まえて別途検討することになった。
一般不妊治療に関する医療技術や薬事承認された医薬品も保険適用となる。
これらの提案のうち、医療機関の情報開示については、城守国斗・ 日本医師会常任理事が「患者の背景などがあるので慎重に検討を」と述べた一方で、安藤伸樹・全国健康保険協会理事長は「患者の選択に資するよう、比較可能な形での情報開示を検討すべき」との考えを示した。
また、飯塚敏晃・東京大学大学院経済学研究科教授は、米国では1995年から不妊治療を行う医療機関の情報開示が義務化され、97年からCDCが公開していることを紹介。それによる好影響が実証されているとして、「これらを参考に情報のあり方を早期急に詰めてほしい」と要望を述べた。
なお、池端幸彦・日本慢性期医療協会副会長は「就労との両立、治療が長期にわたることを考えると、企業の支援が必要になる」と述べ、有給などが取りやすくなるような広報活動の重要性を指摘した。