「社会的処方」にこれだけの問題点 むしろ多職種連携への認識を深めよう(上)

2020年 12月 3日

藤井博之(日本福祉大学教授)
■はじめに
「社会的処方Social Prescribing」をめぐる経過を紹介し、この用語と考え方の問題点を多職種連携の視点から指摘したい。
「社会的処方」は英国で行われている、健康や病気の社会的要因に取り組む治療・予防方法である。社会的要因はSocial Determinants of Health (SDH)と表現され、公衆衛生学と臨床医学に跨がり健康・疾病と社会環境の関連を捉える政策と個別臨床の重要な概念である。私自身は、医療社会化運動に源流をもつ戦前からの「社会医学」の実践を志向し、診療や病院管理、地域活動で社会的要因にどう取り組むか関心を払ってきた。
 一方で「社会的処方」という用語には違和感がある。ここでは、①英国での取り組みの経緯と……
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疾病の社会的要因重視には大賛成。 しかし、日本での「社会的処方」制度化は 困難で「多職種連携」推進が現実的だ(下)

二木 立(日本福祉大学名誉教授)
■日本の地域包括ケアと地域共生社会
 日本では、疾病の社会的要因にストレートに取り組む動きは、まだ、ごく一部の医師・医療機関に限られています。しかし、私は、2000年前後から全国で草の根的に行われるようになり、厚生労働省も積極的に後押している「地域包括ケア(システム)」の先進事例で、患者・障害者が抱える社会的問題の解決に積極的に取り組んでいることに注目すべきと思います。その鍵が多職種連携であり、ソーシャルワーカーが「医療と社会(福祉)」をつなぐ上で大きな役割を果たしています。
 地域包括ケア(システム)の構成要素は法的には……

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疾病の社会的要因重視には大賛成。 しかし、日本での「社会的処方」制度化は 困難で「多職種連携」推進が現実的だ(上)

二木 立(日本福祉大学名誉教授)
■はじめに-疾病の社会的要因の重視には大賛成
 私は、「社会的処方」導入・制度化論者が強調している疾病・健康の社会的要因(以下、疾病の社会的要因)の重視には大賛成です。なぜなら、私は元リハビリテーション専門医で、「障害者の全人間的復権」(上田敏氏)を目標とするリハビリテーション医学では、伝統的に、障害の医学的側面だけでなく社会的側面も重視してきたからです。
 2001年のWHO(世界保健機関)総会で採択された「ICF(国際生活機能分類)」の大きな特徴は、生活機能の評価に「環境因子」という観点を加えたことです。環境因子は「人々が生活し、人生を送っている物理的な環境や社会的環境、人々の社会的な態度による環境を構成する因子」と定義され……

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薬では治せない孤立という現代病

西智弘 川崎市立井田病院かわさき総合ケアセンター
■「私なんていつ死んでもいい」
 58歳のタカダさんは、胃がんの手術を受けた後、腫瘍内科外来に紹介されてきた。手術後の再発を予防すべく、抗がん剤による術後補助療法を受けるためだ。
 医師が抗がん剤治療の内容について一通り説明したあと、タカダさんに
「何か、説明の中でわからなかった点はありますか?」
と尋ねるが、タカダさんは浮かない顔で、
「いえ、別に…」
と答えるだけだった。
「抗がん剤治療について不安がありますか? それとも本当は治療をあまり受けたくないとか…」
あまりにもタカダさんが心ここにあらずという感じだったため……

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