疾病の社会的要因重視には大賛成。 しかし、日本での「社会的処方」制度化は 困難で「多職種連携」推進が現実的だ(上)

2020年 11月 4日

二木 立(日本福祉大学名誉教授)
■はじめに-疾病の社会的要因の重視には大賛成
 私は、「社会的処方」導入・制度化論者が強調している疾病・健康の社会的要因(以下、疾病の社会的要因)の重視には大賛成です。なぜなら、私は元リハビリテーション専門医で、「障害者の全人間的復権」(上田敏氏)を目標とするリハビリテーション医学では、伝統的に、障害の医学的側面だけでなく社会的側面も重視してきたからです。
 2001年のWHO(世界保健機関)総会で採択された「ICF(国際生活機能分類)」の大きな特徴は、生活機能の評価に「環境因子」という観点を加えたことです。環境因子は「人々が生活し、人生を送っている物理的な環境や社会的環境、人々の社会的な態度による環境を構成する因子」と定義され……
この記事は有料会員のみ閲覧できます。

このカテゴリーの最新の記事

このカテゴリはメンバーだけが閲覧できます。このカテゴリを表示するには、年会費(年間購読料) もしくは 月会費(月間購読料)を購入してサインアップしてください。

社会的処方の制度化は 医師のソーシャルワーク的活動を むしろ妨げる危険をはらむ(下)

インタビュー 中野智紀さん(東埼玉総合病院地域糖尿病センター長)
■伴走すること自体が支援に
――支援の方向性が健康を目的として縛られるとは、どういうことでしょう。
 社会的処方が制度化されると、社会保障制度というものが功利主義の立場をとっているため、健康を目的とせざるを得ません。しかし、健康は広い概念ですから、何らかの代理目標かパラメーターを放棄しなければなりません。これが支援の方向を限定してしまいます。
 生活問題、すなわち生きる苦しみには、健康だけでなく複雑な要素が複合的に関わります。ほつれた糸を解いたらまた別の所がほつれ、そこを解く…といった繊細な作業の繰り返しです。もし生活問題を解決したと思っているなら、それは……

この記事は有料会員のみ閲覧できます。

社会的処方の制度化は 医師のソーシャルワーク的活動を むしろ妨げる危険をはらむ(上)

インタビュー 中野智紀さん(東埼玉総合病院地域糖尿病センター長)
■医師が患者の生活問題に目を向けることは重要
――中野先生は埼玉・幸手市で2012年、福祉(生活モデル)を基盤とした全国でも珍しい地域包括ケアのモデル構築に着手し、その拠点となる「在宅医療連携拠点 菜のはな」室長を現在も務めておられます。これらは今では「幸手モデル」と呼ばれ、高く評価されています。内科医として糖尿病の治療に携わってきたご経験もあって、そういう場を整備されました。社会的処方の先駆者と言っても過言ではありませんね。
 ありがとうございます。しかし、少し複雑です。確かに私たちの地域では、生活モデル(福祉やソーシャルワークが用いる支援作法)を基盤にケアシステムの構築を進めています。医療専門職らによるソーシャルワークは別に目新しいものではなく……

この記事は有料会員のみ閲覧できます。

「社会的処方」にこれだけの問題点 むしろ多職種連携への認識を深めよう(下)

藤井博之(日本福祉大学教授)
4.「社会的処方」というとらえ方への懸念
●処方という用語でいいか
 第1に、医療における社会的要因への関わりを社会的処方という用語で表現することは、処方権を巡る職種間の利害対立を引き起こす可能性がある。実際には社会福祉職側の反発は政治力の違いで表に出ないかも知れないが、それ自体も問題である。
 第2に、社会的つながりははたして「処方」できるのか? という根本的疑問がある。医師や医療専門職が社会的要因と病気の関係を認識することは大事だが、社会とのつながりを……

この記事は有料会員のみ閲覧できます。

「社会的処方」にこれだけの問題点 むしろ多職種連携への認識を深めよう(上)

藤井博之(日本福祉大学教授)
■はじめに
「社会的処方Social Prescribing」をめぐる経過を紹介し、この用語と考え方の問題点を多職種連携の視点から指摘したい。
「社会的処方」は英国で行われている、健康や病気の社会的要因に取り組む治療・予防方法である。社会的要因はSocial Determinants of Health (SDH)と表現され、公衆衛生学と臨床医学に跨がり健康・疾病と社会環境の関連を捉える政策と個別臨床の重要な概念である。私自身は、医療社会化運動に源流をもつ戦前からの「社会医学」の実践を志向し、診療や病院管理、地域活動で社会的要因にどう取り組むか関心を払ってきた。
 一方で「社会的処方」という用語には違和感がある。ここでは、①英国での取り組みの経緯と……

この記事は有料会員のみ閲覧できます。

買い物が介護予防になるショッピングリハビリ(下)

光プロジェクト・ショッピングリハビリカンパニー「ひかりサロン」
■自治体の総合事業として
 ショッピングリハビリはこうして、介護予防が必要なのに閉じこもりがちで外に出たがらなかった層をつかんでいった。ひかりサロンはフランチャイズ方式で各地に出店し、2020年10月現在、発祥の雲南市に加え北海道恵庭市、埼玉県蓮田市、兵庫県宝塚市などに7店舗を展開する。11月には、8店舗目が長野県岡谷市にオープン予定だ。これらのなかには、全国の自治体に義務付けられている介護予防・日常生活支援総合事業(以下、総合事業)として展開する事業もある。
 雲南市を含む雲南広域連合は2017年度から……

この記事は有料会員のみ閲覧できます。

1週間無料でお試し購読ができます  詳しくはここをクリック

新着記事は1カ月無料で公開

有料記事は990円(税込)で1カ月読み放題

*1年間は1万1000円(同)

〈新着情報〉〈政策・審議会・統計〉〈業界の動き〉は無料

【アーカイブ】テーマ特集/対談・インタビュー

コラム一覧

【アーカイブ】現場ルポ/医療介護ビジネス新時代

アクセスランキング(9月30-10月6日)

  • 1位
  • 2位
  • 3位 90% 90%
メディカ出版 医療と介護Next バックナンバーのご案内

公式SNS