■在宅医療への評価が二極化
コロナ禍は多くのことを私たちにもたらしている。「家で治す」ことへの理解が深まるのではないか。そして、私たちが携わっている高齢者の在宅医療や……【筆者紹介】新田國夫(にった・くにお) 新田クリニック院長、日本在宅ケアアライアンス理事長
1990年に東京・国立に新田クリニックを開業以来、在宅医療と在宅看取りに携わる。
■在宅医療への評価が二極化
コロナ禍は多くのことを私たちにもたらしている。「家で治す」ことへの理解が深まるのではないか。そして、私たちが携わっている高齢者の在宅医療や……【筆者紹介】新田國夫(にった・くにお) 新田クリニック院長、日本在宅ケアアライアンス理事長
1990年に東京・国立に新田クリニックを開業以来、在宅医療と在宅看取りに携わる。
日本在宅ケアアライアンスは、5月、「新型コロナウイルス感染症の自宅療養者に対する医療提供プロトコール」を策定した。
第5波が懸念される状況だが……【筆者紹介】新田國夫(にった・くにお) 新田クリニック院長、日本在宅ケアアライアンス議長
1990年に東京・国立に新田クリニックを開業以来、在宅医療と在宅看取りに携わる。
少し前から、新型コロナワクチンの接種が日本でも始まって、高齢者への接種をめぐる混乱が報道されている。そんなときに、外国で注目すべき出来事が2つあった。
■国民の6割が接種を終える
1つは、ヒマラヤのふもとに位置する山岳国ブータンで、国民の約6割が1回目の接種を終えているという。ブータンの人口はおよそ77万2000人(2020年)だから……
【筆者紹介】新田國夫(にった・くにお) 新田クリニック院長、日本在宅ケアアライアンス理事長
1990年に東京・国立に新田クリニックを開業以来、在宅医療と在宅看取りに携わる。
■外来で検査し在宅で治療
今回も新田クリニックの研修医のレポートから、在宅医療を考察したい。前回のK医師同様、総合医療センターに在籍するA医師は、新田クリニックで初めて訪問診療を体験した。
A医師が担当したのは70代後半のOさん(男性)である。Oさんは直腸がんの手術後に人工肛門を造設し……
【筆者紹介】新田國夫(にった・くにお) 新田クリニック院長、日本在宅ケアアライアンス理事長
1990年に東京・国立に新田クリニックを開業以来、在宅医療と在宅看取りに携わる。
■独居の認知症女性への訪問
新田クリニックは研修医を受け入れている。同じ2次医療圏に属する総合医療センターに在籍するK医師がおよそ1カ月、研修医として地域の訪問診療を経験した。急性期医療に携わるK医師にとって、訪問診療は初めての体験であった。
K医師は、訪問した在宅患者のなかでとりわけ印象的だったのは、90代女性のTさんだという。Tさんは独居で、軽度認知症がある。転倒して外来受診ができなくなったため……
【筆者紹介】新田國夫(にった・くにお) 新田クリニック院長、日本在宅ケアアライアンス理事長
1990年に東京・国立に新田クリニックを開業以来、在宅医療と在宅看取りに携わる。
■無症状・軽症高齢者は入院の必要なし
日本在宅ケアアライアンスは昨年、新型コロナウイルス感染症の拡大に際し、「行動方針」を4月に、「対処方針」を6月に発表した。当時、陽性者は入院することとされていたので、陽性者を在宅で実際に診ることは想定していなかった。
夏が過ぎて秋になり、11月以降、新規感染者の増加傾向が強まり始めた。厚労省は11月22日の「事務連絡」で、「病床確保や都道府県全体の入院調整に最大限努力したうえで、なお、病床がひっ迫する場合」と条件をつけ、以下のように通知した。
「入院勧告等ができるとしている者のうち、医師が入院の必要がないと判断し、かつ、宿泊療養施設(適切な場合は自宅療養)において丁寧な健康観察を行うことができる場合には……
■“川下の医療”から水平統合へ
在宅医療が普及した理由はいくつもあるが、第1には高齢患者が増えたことである。第2の理由――本質的な理由ともいえる――は、臓器の治療を中心とする医療からQOLを重視する医療へと、医療のあり方が大きく変化したことである。
すなわち医療モデルから生活モデルへの変化であり、こうした変化に伴って、ごく自然に在宅医療が普及した。
一方、介護保険制度が始まったばかりの20年ほど前、在宅医療は川下の医療と称された。川上は急性期病院で……
■訪問診療も訪問看護も断る患者
84歳のAさんは83歳の妻と暮らしている。Aさんは足が不自由で車いすを使い、妻は軽度認知症だ。息子と娘はそれぞれに家庭があり、親とは同居していない。Aさんに訪問診療することになったが、2回訪問した後、家族から連絡が入った。もう訪問診療は必要ありません、何かあったら外来で診ていただきます、と言う。それで訪問は中止した。
しばらくして、Aさんが娘に付き添われて外来を受診した。「お名前は」と尋ねてもAさんは答えず、一言も発しない。発熱したと娘が言うので検査すると、右肺の肺炎であった。さらに口腔内を見せてもらうと、かなり汚れている。唾液が詰まって、なるほど、これでは……
■クリニックの外来患者さんたち
Aさんは91歳女性。息子と同居している。息子はAさんをよく介護しているけれど、一方で支配的に振る舞う。Aさんは足腰が弱り、立つのがやっとの状態で、歩けなくなってきた。息子はそんなAさんに対して、大声で「立ちなさい!」「だめ!」などと命令口調で指示する。でもAさんは息子を信頼し、息子の将来を案じている。
Bさんは90歳女性で、認知症が始まっている。現役時代は大学教授で、学長も務めた。息子の妻が外来に付き添ってくるが、この人が気の強い人で、私がBさんと話していると、ほとんど必ず横から口をはさむ。本人が何か訴えても、それは違うでしょう、と否定してかかる。すると……
コロナ禍はいろいろな問題を浮き彫りにしている。これまでは気づいていなかった、制度の矛盾に気づくきっかけにもなったような印象がある。
■特養の嘱託医の役割は
その1つが、特養入所者への医療提供である。特養の人員基準は、介護または看護職員については「入所者3に対して1以上」で、医師については「必要な数」となっている。したがって、常勤の医療職は看護師だけで、医師は非常勤の嘱託医、という特養が少なくない。とりわけ、社会福祉法人が運営する特養はこの傾向が強い。聞いた話だが、社福系のある特養でコロナの集団感染が起こった。所属する看護師が1人で何十人もの検体を採取し、やがてこの看護師も感染して隔離を余儀なくされ、医療職不在の事態となってしまったという。この話が事実なら、この特養の嘱託医は何をしていたのだろうか。
かつて特養入所者への医療提供は……
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