〈【新田國夫】治し、支える〉の記事一覧
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第8回 かかりつけ診療所機能の多機能化

第8回 かかりつけ診療所機能の多機能化

■“川下の医療”から水平統合へ
 在宅医療が普及した理由はいくつもあるが、第1には高齢患者が増えたことである。第2の理由――本質的な理由ともいえる――は、臓器の治療を中心とする医療からQOLを重視する医療へと、医療のあり方が大きく変化したことである。
 すなわち医療モデルから生活モデルへの変化であり、こうした変化に伴って、ごく自然に在宅医療が普及した。
 一方、介護保険制度が始まったばかりの20年ほど前、在宅医療は川下の医療と称された。川上は急性期病院で……

第8回 かかりつけ診療所機能の多機能化

第7回 かかりつけ医機能の多機能化が必要になってきた

■訪問診療も訪問看護も断る患者
 84歳のAさんは83歳の妻と暮らしている。Aさんは足が不自由で車いすを使い、妻は軽度認知症だ。息子と娘はそれぞれに家庭があり、親とは同居していない。Aさんに訪問診療することになったが、2回訪問した後、家族から連絡が入った。もう訪問診療は必要ありません、何かあったら外来で診ていただきます、と言う。それで訪問は中止した。
 しばらくして、Aさんが娘に付き添われて外来を受診した。「お名前は」と尋ねてもAさんは答えず、一言も発しない。発熱したと娘が言うので検査すると、右肺の肺炎であった。さらに口腔内を見せてもらうと、かなり汚れている。唾液が詰まって、なるほど、これでは……

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第8回 かかりつけ診療所機能の多機能化

第6回 在宅医療診断を確立する必要がある

■クリニックの外来患者さんたち
 Aさんは91歳女性。息子と同居している。息子はAさんをよく介護しているけれど、一方で支配的に振る舞う。Aさんは足腰が弱り、立つのがやっとの状態で、歩けなくなってきた。息子はそんなAさんに対して、大声で「立ちなさい!」「だめ!」などと命令口調で指示する。でもAさんは息子を信頼し、息子の将来を案じている。
 Bさんは90歳女性で、認知症が始まっている。現役時代は大学教授で、学長も務めた。息子の妻が外来に付き添ってくるが、この人が気の強い人で、私がBさんと話していると、ほとんど必ず横から口をはさむ。本人が何か訴えても、それは違うでしょう、と否定してかかる。すると……

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第8回 かかりつけ診療所機能の多機能化

第5回 高齢者をめぐる制度の矛盾が見えてきた

 コロナ禍はいろいろな問題を浮き彫りにしている。これまでは気づいていなかった、制度の矛盾に気づくきっかけにもなったような印象がある。
■特養の嘱託医の役割は
 その1つが、特養入所者への医療提供である。特養の人員基準は、介護または看護職員については「入所者3に対して1以上」で、医師については「必要な数」となっている。したがって、常勤の医療職は看護師だけで、医師は非常勤の嘱託医、という特養が少なくない。とりわけ、社会福祉法人が運営する特養はこの傾向が強い。聞いた話だが、社福系のある特養でコロナの集団感染が起こった。所属する看護師が1人で何十人もの検体を採取し、やがてこの看護師も感染して隔離を余儀なくされ、医療職不在の事態となってしまったという。この話が事実なら、この特養の嘱託医は何をしていたのだろうか。
 かつて特養入所者への医療提供は……

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第8回 かかりつけ診療所機能の多機能化

第4回 本当の意味でのかかりつけ医を地域に増やせ

■なぜ診療所でなく保健所なのか
 新型コロナ感染が拡大し始めたとき、症状がある人は保健所に設置された帰国者・接触者相談センターに連絡する、と定められた(現在は、かかりつけ医に電話相談という選択肢も加えられている)。どうして保健所に連絡しなければならないのか、普通に診療所を受診できないのか、戸惑った人が多かったのではないかと思う。
 この連載の第1回で、ドイツの取り組みを紹介した。感染を疑う患者は、原則として緊急サービスコールセンターに電話して助言を受けることが推奨されている。コールセンターの職員が患者の状況を体系的に尋ね、必要と判断すれば検査センター、あるいは近くの対応可能な家庭医、場合によっては専門医を紹介する。多くは家庭医が患者の窓口となった、というものだ。
 日本の医療制度はフリーアクセスを旨としており……

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第8回 かかりつけ診療所機能の多機能化

第3回 コロナ禍で保健所と市町村の連携が問われている

■保健所はどんな機関か
 新型コロナウイルス感染症の流行で、保健所がにわかに注目を集めている。2月、保健所に帰国者・接触者相談センターが設置され、「37.5度以上の発熱が4日以上続く」などの場合はまずここに相談することとされた。後に、その電話がつながらないことが問題となる。そのほかPCR検査の検体採取、検体の検査機関への輸送、陽性者への疫学調査など、保健所には膨大な業務が突然降りかかった。
 保健所がどんな機関で何をするところか、あまりピンとこない人が少なくないと思う。臨床医の中にも、コロナ禍以前は保健所とあまり接点がなかったケースがあるのではないだろうか。
 現在の保健行政は、1994年の地域保健法に依拠している。このとき、都道府県と市町村の保健行政が線引きされ……

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第8回 かかりつけ診療所機能の多機能化

第2回 認知症のある患者の透析に家族が付き添えない

■せん妄が出て1日で退院させられる
 ある患者さんは、86歳で元看護師の女性。難聴でレビー小体型認知症もある。新田クリニックの外来に通院していたが、最近は訪問診療となった。この方が腎不全となって投薬で治療していたが、クレアチニンが次第に高くなってきた。透析を検討する段階になっても、元看護師で医療知識のある本人は「透析は絶対に嫌です」と拒否していた。
 腎不全は進み、クレアチニンは透析の適用を大幅に超えるような数値となった。全身がむくみ、胸水も溜まり始め、息苦しさも現れている。これは透析しないと命にかかわる段階だ。そこで本人に改めて筆談で尋ねると、ついに「透析を受けてもよい」という答えで、透析病院を紹介した。透析は通常週3回、1回に4時間程度かかり、日帰りで行うが……

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第8回 かかりつけ診療所機能の多機能化

第1回 在宅ケア従事者への「新型コロナ対処方針」(下)

■医療・介護従事者はチームの一員として行動を
 議論を重ね、アライアンスの「対処方針」では、諸外国の好事例も参考に、日本の事情を汲み、以下のように独自の方針を掲げている(要約)。
 ・在宅医は地域の医師会や行政などと連携し、保健所に相談の上、必要に応じPCR検査を行う。
 ・在宅医・訪問看護師は、関係する在宅ケアの介護職員に対して感染防護の知識・技術を積極的に指導・助言する。
 ・在宅ケアに携わるすべての医療・介護従事者は、新型コロナの最新情報を常にフォローして感染予防に生かし、在宅療養者と家族に伝える。
 ・在宅ケアに携わるすべての医療・介護従事者は……

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第8回 かかりつけ診療所機能の多機能化

第1回 在宅ケア従事者への「新型コロナ対処方針」(上)

■在宅で感染者が出ることを想定
 日本在宅ケアアライアンスは、6月22日、「新型コロナウイルス感染症の中で在宅ケアを守るために《対処方針》(第1版)」を公表した(https://www.jhhca.jp/covid19/200622policy/)。アライアンス内の災害対策委員会「コロナ感染症対策班」が原案をまとめ、加盟団体などの意見も取り入れながら策定した。
 これに先立つ4月22日には、「在宅ケアにおける新型コロナウイルス感染対策について(行動方針)」を公表している(https://www.jhhca.jp/covid19/200422action-policy/)。「行動方針」は主に濃厚接触など感染の疑いがある場合を想定して、在宅ケアに携わるサービス提供者が守るべき基本的事項をとりまとめた。6月の「対処方針」はこれより踏み込んで、在宅で感染者が出ることも想定し、「行動方針」を実践するために取り組むべき事項を、より詳細に提示している。
■封じ込めが評価されるドイツの手法とは
 「対処方針」の策定に際して、東京都の状況を考慮した。東京では在宅療養者について、PCR検査のルールも感染防御資材の配布も感染した場合の対処も、十分に整理・検討されているとは言い難い。そこで、新型コロナウイルス感染症の封じ込めに欧州で最も成功したとされるドイツの……

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