第7回 かかりつけ医機能の多機能化が必要になってきた

2021年 1月 29日

■訪問診療も訪問看護も断る患者
 84歳のAさんは83歳の妻と暮らしている。Aさんは足が不自由で車いすを使い、妻は軽度認知症だ。息子と娘はそれぞれに家庭があり、親とは同居していない。Aさんに訪問診療することになったが、2回訪問した後、家族から連絡が入った。もう訪問診療は必要ありません、何かあったら外来で診ていただきます、と言う。それで訪問は中止した。
 しばらくして、Aさんが娘に付き添われて外来を受診した。「お名前は」と尋ねてもAさんは答えず、一言も発しない。発熱したと娘が言うので検査すると、右肺の肺炎であった。さらに口腔内を見せてもらうと、かなり汚れている。唾液が詰まって、なるほど、これでは……
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第45回 「日本在宅医療コングレス」で各地の実践を知る

■15の都道県から発表
 3月上旬、全国在宅療養支援医協会が主催する「第1回 日本在宅医療コングレス」が開かれた。
 
 コングレスは、2019年まで開催された「全国在宅医療医歯薬連合会全国大会」の後継イベントで、今回のテーマは「地域包括ケア時代の在宅医療~その質を問う~」である。会場とオンライン合わせて200人以上が参加した。
 
 第2部「2023年度ブロックフォーラム報告会」では、北海道から沖縄まで15カ所の医師が発表した。発表を聞いて、それぞれの地域課題について独自に活動するということが、都道府県レベルでできるようになってきたことを実感した。こういう場で各地の実践を直接聞くことは、とても意味があると改めて思う。
 
 これまでは全国を8ブロックに分けた単位でのブロック大会であった。ブロック単位だと、県単位の課題には焦点が当たらない。今回は、都道府県の課題がよく見えた。次は市町村単位と…

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第44回 沖縄と函館の在宅医療推進フォーラム

 2月3日に開催された「沖縄県在宅医療推進フォーラム2023」と10日の「第12回北海道在宅医療推進フォーラムIN函館」に参加した。両者を通じて、在宅医療はもうすっかり当たり前の存在になったとつくづく思う。
 
■波照間島の小多機に感動する
 
 沖縄のテーマは「未来へ紡ぐ物語~全てのひとが共存できる社会へ~」。波照間島の小多機の発表に感銘を受けた。波照間島はいわゆる沖縄の離島である。日本最南端の有人島で、天体観測や白い砂浜が有名だ。
 
 この波照間島に小多機「すむづれの家」がある。石垣島を中心とする八重山諸島は石垣市・竹富町・与那国町で構成され、竹富町には西表島や武富島、波照間島など10の有人島が属する。「すむづれの家」は、竹富町唯一の小多機だそうだ。
 
 石垣市や那覇市の病院を退院し、波照間に戻って「すむづれの家」を利用する場合は、病院と連携し…

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第43回 多職種の災害支援チーム、LSATをつくりたい

■地域を守りながら復興を
 能登半島地震からもう1カ月半、高齢化が進む地域の人びとを思う。在宅ケアアライアンスの参加団体も、それぞれが動いている。アライアンスとしても災害対策委員会が発災翌日から動き、連絡網をつくり、活動している。
 
 能登半島という地形の特性が被害を大きくし、東日本大震災や熊本地震とは異なる被害の様相である。まだ水道が復旧しない地域もある。ようやく仮設住宅ができ始めたが、もとの暮らしを取り戻すには時間がかかるだろう。ご苦労はいかばかりか。
 
 2011年の東日本大震災では、仮設住宅に入居する際、もともと暮らしていた地域が考慮されなかったので、隣人もお向かいも知らない人ばかり、という状況になった。地域はバラバラになってしまった。2016年の熊本地震では…

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第42回 愚直かかりつけ医保存会も必要だ

■かかりつけ医機能報告制度が始まる
 前回の「愚直在宅医療保存会」に加えて「愚直かかりつけ医保存会」も必要なんだろうなと思うようになっている。
 
 かかりつけ医機能についての議論は、徐々に形になりつつある。まず、2024(令和6)年4月に「医療機能情報提供制度」が刷新される。これにより、
 
〈かかりつけ医機能(「身近な地域における日常的な診療、疾病の予防のための措置その他の医療の提供を行う機能」と定義)を十分に理解した上で、自ら適切に医療機関を選択できるよう、医療機能情報提供制度による国民・患者への情報提供の充実・強化を図る。〉
 
こととなる。
 
 2025年4月には「かかりつけ医機能報告」が施行され…

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第41回 愚直在宅医療保存会を結成した

■在宅医療に第3世代が登場
 「愚直在宅医療保存会」を結成した。会員はまだ2、3人だし、団体としての体裁が整っているわけでもない、冗談半分の集まりだ。半分は冗談でも、残り半分はいたって真剣である。どうしてこんな保存会を結成したか…。
 
 在宅医療は長らく往診として提供されてきた。往診とは患者の求めに応じて随時、医師が患家を訪問するもので、もちろん現在もある。在宅医療の制度が生まれる以前の1950~80年代にかけて家庭医療を提唱し実践した先駆者が、レジェンドと称される佐藤智医師らである。彼らは、いうなれば“プレ在宅医療世代”であろう。
 
 1992年、「寝たきり老人在宅総合診療料」が創設され、現在の訪問診療の原型ができた。このころから在宅医療を提供してきた我々を「在宅医療第1世代」とすれば、2006年の「在宅時医学総合管理料(在医総管)」や在宅療養支援診療所の創設後に在宅医療に参入した医師たちが第2世代だ。彼らの多くは外来をやらず、訪問診療専業である。
 
 そして今、在宅医療の世界には第3世代の医師たちが登場し、活躍している。第3世代に特徴的なのは…

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