1996年以来点数がついている
かかりつけ医機能を評価する診療報酬には、現在、「地域包括診療料」「地域包括診療加算」「認知症地域包括診療料」「認知症地域包括診療加算」「機能強化加算」などがある。地域包括診療料1の診療報酬点数は1660点、同2は1600点で、どちらも月1回算定できる。
低くない点数である。低くない点数ということは、裏返せば患者負担も安くはない。そのためか、算定している医療機関はそれほど多くないらしい。
医師が患者を継続的総合的に診療することが初めて診療報酬で評価されたのは、1996年に新設された「老人慢性疾患外来総合診療料」だろう。これが2002年に廃止され、08年に「後期高齢者診療料」が新設される。これは10年に廃止された。現行の地域包括診療料が新設されたのは2014年である。
「医師が患者を継続的総合的に診療すること」は、かかりつけ医機能の中核にほかならない。ということは、老人慢性疾患外来総合診療料→後期高齢者診療料→地域包括診療料と名称を変えながら、30年近くの間(途中に数年のブランクはあったものの)、かかりつけ医機能は診療報酬で点数化されていたことになる。曲がりなりにも、というべきだろうか。
後期高齢者診療料には問題点があった。適用が糖尿病、脂質異常症、高血圧性疾患、不整脈、心不全、 脳血管疾患、喘息、認知症など13疾患に限定されていて、肺炎や骨折などそれ以外の疾患にかかったら算定できず、出来高払いとなったのだ。後期高齢者が13疾患以外に罹患することは珍しい、とでも考えていたのだろうか。
2025年4月から始まっている「かかりつけ医機能報告制度」には、1次診療を行える疾患として40疾患が盛り込まれている。後期高齢者診療料の対象疾患より大幅に増えているとはいえ、「これら以外は診なくてよい」と線引きしていることに変わりはない。
そういう疑問を抱きながらも、「2号機能」に「時間外の診療」「在宅医療対応」「介護連携」などが明記されたことは前進だと思う。少しずつ整備されていくのだろう。
在宅医療の領域も経営調査が必要
先日、「これからのかかりつけ医の在り方を考える会」で、全日本病院協会の猪口会長が病院の経営状況について講演され、
・2024年度、医業利益・経常利益とも前年度より赤字病院の割合が増加している
・23年度は急性期(一般病院)・慢性期(療養型病院)・精神科(精神科病院)のすべてで医業利益率が過去最大のマイナスであった
・コロナの前後を比較すると、一般病院では「その他経費」の上昇が著しい
などのデータを提示された。全日本病院協会のほか、日本病院会など4団体の合同調査という。
病院は業界団体も複数あって、こうした有益な調査を行っている。かかりつけ医(機能)は整備の途上にあるが、まずは在宅医療の領域でこうしたデータを集め、報告書をつくる必要がある。講演を聞いて、痛切にそう思った。在宅医でつくる全国在宅療養支援医協会の今後のテーマとしたい。

新田國夫(にった・くにお) 新田クリニック院長、日本在宅ケアアライアンス理事長
1990年に東京・国立に新田クリニックを開業以来、在宅医療と在宅看取りに携わる。