エーザイはブレインパフォーマンス(脳の健康度)を定期的にセルフチェックするためのデジタルツール「のうKNOW(ノウノウ)」を、3月1日に発売した。オーストラリアのコグステイトが開発した認知機能テスト「コグステイト・ブリーフ・バッテリー(CBB)を、日本でブレインパフォーマンスをセルフチェックするためのデジタルツール(非医療機器)として開発したもの。自治体や企業など法人向けから販売を開始している。
パソコンやタブレット端末を使った簡便なトランプテストにより、脳の反応速度・注意力・視覚学習・記憶力を評価する4つのテストを行い、ブレインパフォーマンスを定量的に測定する。利用者は単独・短時間(約15分)で測定でき、日常生活や健診などで定期的なセルフチェックが可能だ。
結果画面には「記憶する」「考える」「判断する」などのブレインパフォーマンスを定量化した指標(ブレインパフォーマンスインデックス(BPI))と、生活習慣でブレインパフォーマンスを維持するためのアドバイスが表示される。
さまざまな研究で、定期的な運動やバランスの良い食事、社会とのつながりといった生活習慣を見直すことにより、ブレインパフォーマンス低下のリスクを減らすことができる可能性が示されている。
一方で、40歳から79歳の男女を対象としたエーザイの調査では、早期チェック・予防の意義や内容を理解している人は全体の55.7%、食事や運動、睡眠などの正しい予防行動が習慣化しているのは19.7%、認知機能チェックを習慣的に実施している人は2.1%に過ぎないことが分かった。
同社では、疾患理解の促進や認知機能チェックの習慣化のためには、これらの越えなければならない溝(キャズム)を解消することが求められるとして、働き盛りの世代から、このツールを使ってブレインパフォーマンスを定期的にセルフチェックすることにより、脳にかかわる健康や疾患を正しく理解し、生活習慣の見直しや予防行動、医師などへの相談などを行うきっかけとなることを期待している。
法人向けから販売を開始し、個人向けについても、現在開発中のエーザイ認知症エコシステムプラットフォームの会員向けスマートフォンアプリとのデータ連携が可能になる予定。なお、このツールは医師などの医療関係者による診察・診断に代わるものではない。
また、医療領域でも簡便な診断ツールの浸透に向けたキャズムが存在しており、米国・欧州・オーストラリア・ニュージーランドでは、CBBを医療従事者向けの専門的なフィードバック機能を持つ医療用として開発した「コグニグラム」が医療機器として承認され、医師などの医療関係者によるMCIや認知症の診察・診断の際に使われている。エーザイは日本で、CBBを医療用の診断ツールとして開発することも検討している。