【髙橋】 ゆきさんの重要なお仕事の1つは、外国での取材を通じて、日本であたりまえと思われていたケアのあり方に疑問をなげかける記事を精力的にお書きになり、ケアのあり方の転換と関係者の意識改革に大きな貢献をされたことです。
【大熊】 高福祉国といわれる北欧やオランダなどヨーロッパを取材して記事を書きました。論説委員だった1985年、「寝たきり老人」という概念のない国としてデンマークなどを紹介したら、反論の嵐。「遠くの国からわざわざ取材に来た客には隠しているのだろう」「医療の手を抜いて寝たきりになる前に死なせているに違いない」などと非難されたものです。
【髙橋】 当時は、影響力のある半可通の評論家たちによって「北欧は高福祉だが税金が高すぎて国民はかえって不幸」とか、「高負担の北欧には自殺が多い」「北欧では一人暮らしがあたりまえなので孤独に陥りがち」などの言説が流布していましたから。
【大熊】 すべて、事実に反していました。
「いいところだけ見せられたんだろう」と疑う医師に……