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第13回 地域に「多様な支援・サービス」は本当にないのか?

第13回 地域に「多様な支援・サービス」は本当にないのか?

 日常生活支援総合事業(以下、総合事業)では、「多様な主体によるサービス」の構築が重視され、従来の保険給付サービスだけでなく、ボランティアなど住民主体による支援体制が期待されてきました。
 
 ところが総合事業の実施状況をみると、介護保険事業所が担う「従前相当」が大半で、住民主体が中心となる「サービスB」は、伸び悩んでいると言われています。
 
 私も自治体職員から「有償ボランティアはやはり難しい」、「うちの地域にはそういう団体はない」という声もよく聞きます。今回は、「地域に多様な支援・サービスは本当にないのか?」という点を少し考えてみたいと思います。
 
■地域の宝物を見落としていないか?
 
 住民主体の活動や有償ボランティアは、住民の自発性や篤志で成り立っているという意味で貴重なものです。したがって自治体職員が「そうした資源の育成は時間がかかるし、難しい」というのは正しいと思います。
 
 しかし、一方で、自治体側がこうした貴重な資源を十分に把握できているのかという点では、まだまだ努力の余地があると感じています。最近、私自身、素晴らしい助け合い活動を展開する団体に相次いで出会いました。
 
 ところが、一つの団体は自治体から補助金が得られず苦しい財政状況の中で運営していることがわかりました。もう一つの団体は、活動領域を拡大したいけど、マッチングを担うコーディネーターの人件費が確保できないと苦心していました。
 
 自治体側でも有償ボランティア活動があることは知っていたけど、支援の対象になるのかよくわからないままだったという事例にも遭遇しています。いずれも総合事業を活用すればしっかり支援できるケースでした。
 
 問題なのは、活動に取り組む団体側も、総合事業の複雑怪奇な補助の仕組みを熟知しているわけではないため、受けられるはずの支援を十分に認識できていないこと、また行政側も団体運営の厳しさを十分に把握していない場合があるということです。
 
 総合事業が開始された2015年前後には、ほとんどの自治体が…

第14回 制度の外の活動って、素敵です

第14回 制度の外の活動って、素敵です

 2017年の事業開始と同時に「オレンジサロン長坂・白州」を実施してきました。一般的にいわれている「認知症カフェ」です。
■認知症カフェとは
 認知症カフェは、認知症の当事者の方が集まるカフェです。当事者の方だけではなく、家族や地域の住民や医療の専門職など、誰でも立ち寄ることができ、交流を深める場となっています。
 日本では2015年、「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」によって認知症カフェが始まりました。この新オレンジプランは、認知症の当事者の方が、住み慣れた住みやすい場所で引き続き生活できることをうたっています。
 認知症カフェが開かれて地域の人に認知症を理解してもらうことは、地域全体で住みよい街づくりができることにも繋がります。
■オレンジサロンをはじめよう
 「だんだん会」を一緒になって立ち上げ、パートナーとしてずっと事業展開してきた理事の中嶋登美子さんは、地元出身の保健師です。長く北杜市の保健行政に関わって仕事をしてこられました。中嶋さんと一緒にできたから、だんだん会の事業が順調に進んできたといえます。
 法人としてだんだん会を立ち上げて間もない2016年、その中嶋さんが「オレンジサロン(認知症カフェ)をやろう!」と言うのです。しかし、当時の法人はほぼ無一文で始まったばかりで収入もゼロ、職員もほぼゼロの時期でした。その上、オレンジサロンは収益事業ではないので、どのように開始し、そして続けていくか、課題だらけ。
■助成金にチャレンジ
 そんな時、「認知症カフェ」立ち上げの助成金があることを知りました。朝日新聞厚生事業団が1カ所に100万円(3年間分)の助成金を支給するというものです。
 そこで中嶋さんが中心となって企画計画書を作成し、応募しました。市民中心のオレンジサロンを同時に2カ所で実施するという内容です。審査の結果…

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第19回 厚生労働省図書館にて

第19回 厚生労働省図書館にて

 2023年最初の原稿なのでまずは、ご挨拶から。年末年始、どのようにお過ごしでしたか。よい年明けを迎えられたでしょうか。
 私は、年末年始を京都で過ごしました。私たち夫婦には3人の子(長女、長男、次女)がおり、次女夫婦が京都に住んでいます。長男夫婦は現在大阪におり、昨年、両夫婦に第一子が誕生しました。
 そこで、東京にいる私たち夫婦と長女夫婦(小学1年生の息子がいる)が京都に行き、お正月に京都で「一族集合」となりました。初めて京都で迎えるお正月でしたが、いつもは混雑する観光スポットも年末は空いており、なかなか良いものでした。

 1月4日、岸田首相は「異次元の少子化対策」を打ち出しました。年末に政府がまとめた来年度予算案では防衛費が大幅に伸びました。その財源をどうするか、増税するか否かが焦点となりましたが、一応増税ということで決着しました。
 首相が増税にこだわった結果ですが、今国会には増税法案を提出しないという妥協の上です。自民党内の政争の火種になるという見方も強いようです。
 首相は昨年4月に「将来的な子ども予算倍増」を約束していました。しかし、昨年10月の国会答弁で、子ども・子育てについては今年の骨太方針で取りまとめると、早々に先送りをしました。
 年明け早々の「異次元の少子化対策」発言は、「防衛費だけ突出」という批判をかわす狙いがあるのだと思います。
 首相の指示で、少子化政策担当大臣の下に設置された関係府省会議で3月中に少子化対策の内容を固めるとしています。肝心の財源問題は、統一地方選挙前の議論を避け、例年6月に決定する骨太方針までは明らかにしないのではないでしょうか。
 1月19日の関係府省会議の初会合では、①児童手当などの経済支援…

第3回 法案に批判的だった武蔵野市

第3回 法案に批判的だった武蔵野市

 笹井さんが「3つの衝撃をもたらした」と指摘する介護保険制度は1990年代後半にその骨格が固まっていく。制度設計の過程で、武蔵野市は積極的に発言した。
■介護保険制度開始まで
 介護保険制度がもたらす衝撃を当時、私自身はプラスに受け止めていました。自分たちが主体的に地域の仕事を創りだすことにやりがいを感じていたし、武蔵野市の多くの職員も同じでした。このころ武蔵野市が発行した「介護保険ブックレット」は、そのひとつの象徴といえます。
 「介護保険ブックレット」は97年9月、98年12月、99年9月の3回、制作され、武蔵野市内全戸に配布されるとともに、政府や国会議員、全国の都道府県知事や市町村長に送付された。
■福祉先進都市ゆえの命題
 当時の担当者によると、ブックレット制作にあたっては、当時の土屋正忠市長も参加して、何回もブレーンストーミングを開催しました。掲載する内容のエビデンスとなるデータを集めるのに苦労しました。レイアウトに関してデザイナーとの打ち合わせも頻繁に行い、見せ方に苦心しました。市民だけでなく国会議員や全国の都道府県知事、市町村長などにも送ったので…

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第15回 薬剤師の課題は2023年も多い

第15回 薬剤師の課題は2023年も多い

 2023年が始まりました。今年は医療・介護業界に大きな変革が起こることが予想され、実際に始まってきています。
 コロナ感染者はこのところ減少傾向ですが、今後はどうなるでしょうか。5月に5類に引き下げられますが、その扱いはどうなるでしょう。問題は山積みです。国の朝令暮改は県・市町村まで影響していますね。
  検査の無料化事業も、3カ月おきくらいに対象者確認フローの変更や日程延長があり、そのたびに社員への周知と利用者様への案内など対応してきました。その通知も変更前日にくるというバタバタしたものです。
 このような対策も、5月には大方なくなってしまうように感じています。取り扱いはほぼインフルエンザと同様になるでしょう。
 薬局運営では、メーカーの不祥事に端を発した後発品不足問題、漢方薬の原料不足からの供給不安定、さらには国が進めるデジタル化の波、DX化による機械設備の負担、そしてインボイスに対応するためのレジ等の入れ替えなど、経費負担も含め問題は山積みです。
 コロナ感染症は発生から丸3年がたち、久々に行動制限のない正月でした。久しぶりの里帰りができて、ふだんの生活に戻った感はありますが、正月明けのコロナ感染者の数はこれまでより多くなっています。
 1月は死亡者の人数も最多となり、まだコロナが収まったとは言えません。私の薬局では通常、31日から3日までの4日間お休みをいただきます。この年末年始、31日は当番医で開局し、休みの間に緊急在宅訪問が5件ありました。全く業務がなかったのは1月1日だけです。
 在宅訪問にかかわる限り、当然のことと思っています。そのような中で正月明けまではコロナ感染をあまり意識しなくてもよかったように感じています。
 年末年始を過ぎ、コロナ関連の処方が徐々に増えてきました。人の移動と共にやはり増えてきたかと思っていましたが、私どもの薬局でも、1月10日過ぎから濃厚接触者2名、陽性者が3名と相次ぎました。
 薬局運営の人繰りがたたず、休み返上や長時間勤務をしていただかねばならない状況になってしまいました。
 感染した者に聞き取りますと、「どこで感染したかわからない…

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第30回 かかりつけ医は誰に必要なのか

第30回 かかりつけ医は誰に必要なのか

■広辞苑の変化に注目
 広辞苑の「医療」の項目をご覧になったことはあるだろうか。広辞苑で「医療」がどう定義されているか、現在発売されている第七版(2018年)と、その1つ前の第六版(2008年)を比べてみた。その変化はとても興味深い。
 第六版では、医療とは「医術で病気をなおすこと。療治。治療。」とあるのみで、この次には「医療過誤」「医療技術短期大学」が出てくる。それが、第七版では「①医術で病気をなおすこと。療治。治療。②医学的知識をもとに、福祉分野とも関係しつつ、病気の治療・予防あるいは健康増進をめざす社会的活動の総体。」と、②が加えられている。そのあとに「医療過誤」「医療技術短期大学」だ。
 医療とは何か。広辞苑の解釈はこのように変わった。第七版の記述は、高齢者向け医療が念頭にあるのだろう。「福祉分野とも関係しつつ」「社会的活動の総体」を加えたこの筆者は見事だと思う。現代の医療、超高齢社会の医療をきちんと理解し、新しい概念を反映している。
■かかりつけ医を法制度に明文化する動き
 厚生労働省の社会保障審議会医療部会が、「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」について議論している。医療法を改正して明文化する方針という。
 この制度の骨格案が昨年12月の部会に示された。肝は…

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第19回 厚生労働省図書館にて

第18回 回復しない所得と貧困・格差問題―日本の課題―(下)

3 貧困・格差の問題
 以上のような状況の下で、日本は不平等社会になっているのだろうか。1990年代以降、経済の低迷が続く中で貧困・格差の問題が取り上げられるようになり、2006年1月には「月例経済報告等に関する関係閣僚会議」でも「経済的格差の動向」が議論されるようになった。
 厚生労働省では、3年に1度、所得再分配調査を実施し、ジニ係数…

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第30回 かかりつけ医は誰に必要なのか

第29回 かかりつけ「医」よりかかりつけ「医療機関」

 新田クリニックを初めて受診した外来患者さんに、「私のかかりつけ医になっていただけますか」と言われ、喜んで、と答えた。これまで都心の企業に勤め、会社近くのクリニックにかかっていたんだけど、定年退職したから、という。大都市のサラリーマンには…

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第3回 法案に批判的だった武蔵野市

第2回 市町村が保険者となって地方分権の主役を担う

 3つの衝撃の(2)は「市町村が保険者となって地方分権の主役を担う」。これも大きな変化でした。
■市長会や町村会は「市町村保険者」に反発したが
 介護保険制度が始まった2000年4月、地方分権一括法が施行されました。その1つである改正地方自治法によって政策の権限移譲や財源の移譲が行われ、地方自治体は分権の主体として確立し、これからは…

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第19回 厚生労働省図書館にて

第18回 回復しない所得と貧困・格差問題―日本の課題―(上)

 前回に続き、社会保障をめぐる論点について取り上げる。今回のテーマは「回復しない所得と貧困・格差問題」である。
1 所得等の動向
 1990年以降の日本の経済的な低迷は著しい。1990年から2020年までの30年間、日本の国内総生産(GDP)は…

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